米国 EPA (環境保護庁)によるVessel General Permit(VGP)要求
2008/11/28 第08-011号
- 外航
2008年12月19日以降、米国領海3マイル以内(内水を含む)に入域する全長79フィート(24.08メートル)以上の全ての商船は、バラスト水排出に限らず、通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出に関して、米国EPA(US Environmental Protection Agency:環境保護庁)が制定するVessel GeneralPermit(VGP)の要件を満たすよう求められ、最終的には船舶毎にVGPの適用を受けるための通知が必要になります。
2008年12月19日以降に米国へ寄港予定の船舶を運航される組合員各位には、EPAが現在公表中のVGP案に盛り込まれた要求事項への対応計画の策定につき、前もって準備を進められることをお勧め申し上げます。ただし、現在公表中のVGPは飽くまでも草案であり、EPAが今後発表する最終的なVGPの内容によっては、対応計画の修正が必要となる可能性がありますので、ご承知おき願います。
今回発表されたEPAによるVGP要求の背景とその概要について、下記のとおりご案内申し上げます。なお、VGP要求に関する情報(VGP案を含む)は、EPAの下記ウェブサイトから入手できます。
https://www.epa.gov/npdes/vessels-vgp
1. 背景
EPA規則では1973年5月以来、バラスト水をはじめとする通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出は、CWA(Clean Water Act:水質浄化法)の下でのNational Pollutant Discharge Elimination System(NPDES)プログラムの対象から除外されてきました。
2008年7月23日、米国連邦第9巡回控訴裁判所は「EPAが船舶からの排出をNPDESプログラムから除外してきたのはCWAの下での権限を超えるものである」との地方裁判所の判決を支持し、EPAに対し「CWAが規定するNPDESプログラムの下、通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出を規制する」よう求めました。
2. VGP(Vessel General Permit)
CWA上の規定に従うべくEPAは、すべての商船を対象に、通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出に対しNPDESプログラムの下で許可を与えるためのVGPの草案を公表しました。文言を確定した後、最終的なVGPが2008年12月19日に施行される見込みです。船舶毎にそれぞれ許可を得る必要はなく、それに代わり、本船の船主もしくは運航者がVGPの適用を受ける意向を通知するNotice of Intent(NOI)を提出すれば、その船舶にVGPが適用されることになります。当然ながら、被適用船舶はVGPの要件を満たさなければなりません。
VGPの対象となる排出物質については、添付別紙リストをご参照願います。現在公表中のVGP案は、米国沿岸警備隊(US Coast Guard)のバラスト水の管理と交換に関する基準(33 C.F.R Part 151)及びその追加要求を取り込んでいます。さらにVGP案は、全ての被適用船舶に対して、デッキ流出水、ビルジ水、生活雑排水を含む27種類の排出物質に関する要求も定めています。それぞれの排出に関し、起こりうる様々な状況に応じて採るべき措置を定め、また場合によっては、排出物質の成分に対応した排出制限を設けたうえで、排出が許可されることになります。
これらの一般的な基準や要求に加え、クルーズ客船、調査船、油/石油タンカー、大型フェリー等の8つの特定の船種に対する更なる要求も定められています。VGP案には、是正措置、検査、監視、記録保持及び報告義務に関する規定も盛り込まれています。
当初は、今回EPAが施行するVGPが全米の内水及び領海をカバーすることになります。
最終的なVGPが現在のVGP案から大きくかけ離れることはないと思われますが、EPAが2008年12月初旬までに最終決定する見込みもありません。このことは、組合員各位に与えられたVGP要求への対応・準備期間が非常に短いことを意味します。本件が複雑であることは明らかです。よって、組合員各位におかれましては、EPAが現在公表しているVGP案に盛り込まれた要求事項に基づき、対応計画の策定に着手されることをご提言申し上げます。
3. NOI(Notice of Intent)
VGPの下で排出の承認を得るためには、登録トン数が300トン以上、若しくは8立方メートル(2,113ガロン)以上のバラスト水を保持・排出することのできる船舶の船主または運航者は、VGPの施行日より6ヶ月以降9ヶ月以前の間にNOIを提出しなければなりません(注1参照)。大量のNOI提出が予想されるため、VGP施行日からNOI提出日までの間は、暫定措置として全ての船舶にNOIの提出なしにVGPが適用されます。しかしながら、VGPの施行日が2008年12月19日のままであると仮定すると遅くとも2009年9月19日までには、必ずNOIを提出しなければならないことになります。これにより、各船へのVGP適用は、EPAがNOIを受領した日から5年間有効となります。
EPAは現在、NOIを電子的に提出できるようにするため、電子NOI(eNOI)システムを構築中です。このシステムが利用可能になれば、申請者はまず登録を行い、そのうえでEPAのウェブサイト上のCentral Data Exchange(https://cdx.epa.gov)を通じ、必要な情報を電子的に提出するようになります。申請費用は必要ありません。
4. 罰則等
VGPが施行されれば、EPAがVGPの規定の違反に関し調査・判断の任に当たることになりますが、検査や実施方法に関しEPAとUSCGとの間でどのように調整していくのか、現在のところ明らかではありません。
EPAによるCWAの下でのNPDES排出許可制度では、許可なく、または排出限度を超えて汚染物質を排出したことによる違反行為に対して、民事・刑事上の罰金を課し、さらには違反者に対する民事訴訟も認めています。CWA上、排出許可違反、または米国水域への無許可排出に対する罰金は、1つの違反につき一日当たり最高$27,500になると思われます。また、罰金には2つの行政上の区分があり(注2参照)、過失若しくは故意による違反行為に対しては重い刑事罰が適用されます。
大きさを問わず、全ての商業漁船はVGP要求から除外されており、本CWAの下での排出許可は米国3マイル領海外を航行する船舶には要求されません。また、全長79フィート未満の船舶には2年間の猶予期間が与えられています。
EPAが最終的なVGPを確定次第、続報をお届けする予定にしております。
注1: 登録トン数が300トン未満で8立方メートルを超えるバラスト水を保持・排出しない船舶は、NOIを提出する必要はない。斯かる船舶にはVGPが自動的に適用され、VGPに規定された条件に従い排出することが認められる。
注2: 第1種の罰金は、1つの違反につき最高$10,000までとし、1件当たり$25,000を超えないものとする。第2種の罰金は、1つの違反につき一日当たり最高$10,000までとし、1件当たり$125,000を超えないものとする。
2008年12月19日以降に米国へ寄港予定の船舶を運航される組合員各位には、EPAが現在公表中のVGP案に盛り込まれた要求事項への対応計画の策定につき、前もって準備を進められることをお勧め申し上げます。ただし、現在公表中のVGPは飽くまでも草案であり、EPAが今後発表する最終的なVGPの内容によっては、対応計画の修正が必要となる可能性がありますので、ご承知おき願います。
今回発表されたEPAによるVGP要求の背景とその概要について、下記のとおりご案内申し上げます。なお、VGP要求に関する情報(VGP案を含む)は、EPAの下記ウェブサイトから入手できます。
https://www.epa.gov/npdes/vessels-vgp
1. 背景
EPA規則では1973年5月以来、バラスト水をはじめとする通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出は、CWA(Clean Water Act:水質浄化法)の下でのNational Pollutant Discharge Elimination System(NPDES)プログラムの対象から除外されてきました。
2008年7月23日、米国連邦第9巡回控訴裁判所は「EPAが船舶からの排出をNPDESプログラムから除外してきたのはCWAの下での権限を超えるものである」との地方裁判所の判決を支持し、EPAに対し「CWAが規定するNPDESプログラムの下、通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出を規制する」よう求めました。
2. VGP(Vessel General Permit)
CWA上の規定に従うべくEPAは、すべての商船を対象に、通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出に対しNPDESプログラムの下で許可を与えるためのVGPの草案を公表しました。文言を確定した後、最終的なVGPが2008年12月19日に施行される見込みです。船舶毎にそれぞれ許可を得る必要はなく、それに代わり、本船の船主もしくは運航者がVGPの適用を受ける意向を通知するNotice of Intent(NOI)を提出すれば、その船舶にVGPが適用されることになります。当然ながら、被適用船舶はVGPの要件を満たさなければなりません。
VGPの対象となる排出物質については、添付別紙リストをご参照願います。現在公表中のVGP案は、米国沿岸警備隊(US Coast Guard)のバラスト水の管理と交換に関する基準(33 C.F.R Part 151)及びその追加要求を取り込んでいます。さらにVGP案は、全ての被適用船舶に対して、デッキ流出水、ビルジ水、生活雑排水を含む27種類の排出物質に関する要求も定めています。それぞれの排出に関し、起こりうる様々な状況に応じて採るべき措置を定め、また場合によっては、排出物質の成分に対応した排出制限を設けたうえで、排出が許可されることになります。
これらの一般的な基準や要求に加え、クルーズ客船、調査船、油/石油タンカー、大型フェリー等の8つの特定の船種に対する更なる要求も定められています。VGP案には、是正措置、検査、監視、記録保持及び報告義務に関する規定も盛り込まれています。
当初は、今回EPAが施行するVGPが全米の内水及び領海をカバーすることになります。
最終的なVGPが現在のVGP案から大きくかけ離れることはないと思われますが、EPAが2008年12月初旬までに最終決定する見込みもありません。このことは、組合員各位に与えられたVGP要求への対応・準備期間が非常に短いことを意味します。本件が複雑であることは明らかです。よって、組合員各位におかれましては、EPAが現在公表しているVGP案に盛り込まれた要求事項に基づき、対応計画の策定に着手されることをご提言申し上げます。
3. NOI(Notice of Intent)
VGPの下で排出の承認を得るためには、登録トン数が300トン以上、若しくは8立方メートル(2,113ガロン)以上のバラスト水を保持・排出することのできる船舶の船主または運航者は、VGPの施行日より6ヶ月以降9ヶ月以前の間にNOIを提出しなければなりません(注1参照)。大量のNOI提出が予想されるため、VGP施行日からNOI提出日までの間は、暫定措置として全ての船舶にNOIの提出なしにVGPが適用されます。しかしながら、VGPの施行日が2008年12月19日のままであると仮定すると遅くとも2009年9月19日までには、必ずNOIを提出しなければならないことになります。これにより、各船へのVGP適用は、EPAがNOIを受領した日から5年間有効となります。
EPAは現在、NOIを電子的に提出できるようにするため、電子NOI(eNOI)システムを構築中です。このシステムが利用可能になれば、申請者はまず登録を行い、そのうえでEPAのウェブサイト上のCentral Data Exchange(https://cdx.epa.gov)を通じ、必要な情報を電子的に提出するようになります。申請費用は必要ありません。
4. 罰則等
VGPが施行されれば、EPAがVGPの規定の違反に関し調査・判断の任に当たることになりますが、検査や実施方法に関しEPAとUSCGとの間でどのように調整していくのか、現在のところ明らかではありません。
EPAによるCWAの下でのNPDES排出許可制度では、許可なく、または排出限度を超えて汚染物質を排出したことによる違反行為に対して、民事・刑事上の罰金を課し、さらには違反者に対する民事訴訟も認めています。CWA上、排出許可違反、または米国水域への無許可排出に対する罰金は、1つの違反につき一日当たり最高$27,500になると思われます。また、罰金には2つの行政上の区分があり(注2参照)、過失若しくは故意による違反行為に対しては重い刑事罰が適用されます。
大きさを問わず、全ての商業漁船はVGP要求から除外されており、本CWAの下での排出許可は米国3マイル領海外を航行する船舶には要求されません。また、全長79フィート未満の船舶には2年間の猶予期間が与えられています。
EPAが最終的なVGPを確定次第、続報をお届けする予定にしております。
注1: 登録トン数が300トン未満で8立方メートルを超えるバラスト水を保持・排出しない船舶は、NOIを提出する必要はない。斯かる船舶にはVGPが自動的に適用され、VGPに規定された条件に従い排出することが認められる。
注2: 第1種の罰金は、1つの違反につき最高$10,000までとし、1件当たり$25,000を超えないものとする。第2種の罰金は、1つの違反につき一日当たり最高$10,000までとし、1件当たり$125,000を超えないものとする。