バンカー条約−条約証書要求、Blue Card発行、条約証書取得について
2008/04/25 第08-001号
- 外航
首題に関し、2001年7月23日付P&I特別回報第01−003号「バンカー条約について」及び2007年12月4日付Japan P&I News第549号「バンカー条約発効の件」をご参照願います。
前記Japan P&I News第549号でご案内のとおり、「2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(以下、バンカー条約という)」は、所定の発効要件を満たし、2008年11月21日に発効します。
本特別回報では、締約国発給のバンカー条約証書、P&Iクラブ発行のBlue Card、及び条約証書の取得について、以下のとおりご案内申し上げます。
1. バンカー条約証書
バンカー条約は、燃料油の流出による汚染損害の被害者に対する責任・補償体制を確立することを目的とし、強制保険制度を導入しています。本条約の下で、締約国の領海を含む領域及び排他的経済水域で生じた汚染損害(損害防止措置費用を含む)に関し、船主(注)は無過失の賠償責任を負うこととなります。
注:船主には、登録船主(船舶所有者)、裸傭船者、船舶管理人、及び運航者を含む。
締約国籍を有する、若しくは締約国に入出港する、総トン数1,000トン超の船舶(船種の如何を問わず)の登録船主(船舶所有者)は、本条約の要求を満たすべく、保険契約を維持し、当該保険契約の有効性を証する締約国発給の保障契約証明書(以下、条約証書という、添付別紙ひな型ご参照)を取得しなければなりません。また、条約証書は常に本船上に備え置くよう義務付けられています。
本条約での上記諸制度は、基本的にCLC条約の下で既に確立されているタンカーに適用される責任・強制保険制度に倣ったものです。
2. Blue Card発行
国際P&Iグループ(IG)加盟全クラブの理事会での承認を受けて、IG各クラブは2008年8月より、バンカー条約の下で締約国が発給する条約証書を担保する付保証明書(以下、Blue Cardという)を提供することに致しました。IG各クラブは、現在組合員に対して本体部分のP&I戦争危険カバーを提供していませんが、Blue Cardを発行することにより生じる条約証書上の責任は、通常てん補から除外されるリスクを含め、その責任限度額までIGプール協定にて処理することを併せて決定致しました。この条約証書上クラブが負う責任以外については、除外規定条項が従来どおり適用されます。条約証書上の責任は、1976年海事債権条約(将来の改正、即ち1996年議定書を含む)で定める責任制限額を限度とし、戦争行為(ただし、条約規定上テロリズム行為は含まず)及び第三者の意図的行為から生じた汚染損害については免責されます。
IG各クラブはBlue Cardを発行するにあたり、「条約証書上クラブが負う責任が戦争危険によるものであった場合、組合員が付保しているP&I戦争危険カバーから回収される金額、或いは組合員が標準的なP&I戦争危険カバーを付保していれば回収されたであろう金額については、組合員のご負担とし、かつ組合員が当該P&I戦争危険カバー上有する権利及び第三者に対する求償権をクラブへ譲渡すること」につき、組合員から同意していただくことを条件と致します。即ち、組合員からのBlueCard発行のご依頼を以って、前述の同意がなされたものとして取り扱わせていただきます。
よって、Blue Cardを必要とする全ての組合員は、別途担保限度額を設けたうえでP&I戦争危険カバーを付保 (注)していることを確約していただくことが必要になります。
注:本邦保険実務では、船舶戦争保険特別約款に、船主責任(P&I部分)について、追加担保特別条項を付帯するのが一般的である。
3. 条約証書の取得
本年2月、IGは、膨大な数の条約証書の発給に備え、締約国は行政手続きを整備する必要性があることを指摘するため、IOPC Fund委員会に対して意見書を提出しました。
保険契約の有効性を証する締約国発給の条約証書は、締約国に船籍を有する船舶は、当該締約国から条約証書を取得する必要があります。本条約証書は、締約国の港やターミナルに寄航した際、保険付保の証しとして扱われます。
一方、非締約国に船籍を有する船舶は、何れかの締約国から条約証書を取得しなければなりません。理想的には、本船が寄港する締約国の当局から条約証書の発給を受けることです。しかし、それが不可能な場合は、代案として、他の締約国から条約証書を取得することになります。IG事務局は、締約国の関係当局と接触し、自国籍以外の船舶に対する条約証書発給の用意について現在確認中であり、情報が入り次第追ってご案内申し上げます。
IGクラブの間では電子式Blue Cardの発行が普及しつつあり、締約国によっては組合員が電子式BlueCardを関係当局へ電磁的に提出することが可能になることが予想されますが、当組合においては、当面は従来どおり、印刷書式でのBlue Card発行にて対応する予定にしております。
また、バンカー条約証書の締約国への申請にあたっては、CLC条約証書と異なり、申請数が膨大な数になることから、組合員各位が関係当局に申請書及び必要書類にBlue Cardを添えて手続きしていただくことになりますので、予めお含み置き願います。
バンカー条約の締約国(2008年4月現在)
バハマ、ブルガリア、クロアチア、キプロス、エストニア、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、ジャマイカ、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ポーランド、サモア、シエラレオネ、シンガポール、スロベニア、スペイン、トンガ、イギリス (全20カ国)
添付別紙: バンカー条約証書「ひな型」
前記Japan P&I News第549号でご案内のとおり、「2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(以下、バンカー条約という)」は、所定の発効要件を満たし、2008年11月21日に発効します。
本特別回報では、締約国発給のバンカー条約証書、P&Iクラブ発行のBlue Card、及び条約証書の取得について、以下のとおりご案内申し上げます。
1. バンカー条約証書
バンカー条約は、燃料油の流出による汚染損害の被害者に対する責任・補償体制を確立することを目的とし、強制保険制度を導入しています。本条約の下で、締約国の領海を含む領域及び排他的経済水域で生じた汚染損害(損害防止措置費用を含む)に関し、船主(注)は無過失の賠償責任を負うこととなります。
注:船主には、登録船主(船舶所有者)、裸傭船者、船舶管理人、及び運航者を含む。
締約国籍を有する、若しくは締約国に入出港する、総トン数1,000トン超の船舶(船種の如何を問わず)の登録船主(船舶所有者)は、本条約の要求を満たすべく、保険契約を維持し、当該保険契約の有効性を証する締約国発給の保障契約証明書(以下、条約証書という、添付別紙ひな型ご参照)を取得しなければなりません。また、条約証書は常に本船上に備え置くよう義務付けられています。
本条約での上記諸制度は、基本的にCLC条約の下で既に確立されているタンカーに適用される責任・強制保険制度に倣ったものです。
2. Blue Card発行
国際P&Iグループ(IG)加盟全クラブの理事会での承認を受けて、IG各クラブは2008年8月より、バンカー条約の下で締約国が発給する条約証書を担保する付保証明書(以下、Blue Cardという)を提供することに致しました。IG各クラブは、現在組合員に対して本体部分のP&I戦争危険カバーを提供していませんが、Blue Cardを発行することにより生じる条約証書上の責任は、通常てん補から除外されるリスクを含め、その責任限度額までIGプール協定にて処理することを併せて決定致しました。この条約証書上クラブが負う責任以外については、除外規定条項が従来どおり適用されます。条約証書上の責任は、1976年海事債権条約(将来の改正、即ち1996年議定書を含む)で定める責任制限額を限度とし、戦争行為(ただし、条約規定上テロリズム行為は含まず)及び第三者の意図的行為から生じた汚染損害については免責されます。
IG各クラブはBlue Cardを発行するにあたり、「条約証書上クラブが負う責任が戦争危険によるものであった場合、組合員が付保しているP&I戦争危険カバーから回収される金額、或いは組合員が標準的なP&I戦争危険カバーを付保していれば回収されたであろう金額については、組合員のご負担とし、かつ組合員が当該P&I戦争危険カバー上有する権利及び第三者に対する求償権をクラブへ譲渡すること」につき、組合員から同意していただくことを条件と致します。即ち、組合員からのBlueCard発行のご依頼を以って、前述の同意がなされたものとして取り扱わせていただきます。
よって、Blue Cardを必要とする全ての組合員は、別途担保限度額を設けたうえでP&I戦争危険カバーを付保 (注)していることを確約していただくことが必要になります。
注:本邦保険実務では、船舶戦争保険特別約款に、船主責任(P&I部分)について、追加担保特別条項を付帯するのが一般的である。
3. 条約証書の取得
本年2月、IGは、膨大な数の条約証書の発給に備え、締約国は行政手続きを整備する必要性があることを指摘するため、IOPC Fund委員会に対して意見書を提出しました。
保険契約の有効性を証する締約国発給の条約証書は、締約国に船籍を有する船舶は、当該締約国から条約証書を取得する必要があります。本条約証書は、締約国の港やターミナルに寄航した際、保険付保の証しとして扱われます。
一方、非締約国に船籍を有する船舶は、何れかの締約国から条約証書を取得しなければなりません。理想的には、本船が寄港する締約国の当局から条約証書の発給を受けることです。しかし、それが不可能な場合は、代案として、他の締約国から条約証書を取得することになります。IG事務局は、締約国の関係当局と接触し、自国籍以外の船舶に対する条約証書発給の用意について現在確認中であり、情報が入り次第追ってご案内申し上げます。
IGクラブの間では電子式Blue Cardの発行が普及しつつあり、締約国によっては組合員が電子式BlueCardを関係当局へ電磁的に提出することが可能になることが予想されますが、当組合においては、当面は従来どおり、印刷書式でのBlue Card発行にて対応する予定にしております。
また、バンカー条約証書の締約国への申請にあたっては、CLC条約証書と異なり、申請数が膨大な数になることから、組合員各位が関係当局に申請書及び必要書類にBlue Cardを添えて手続きしていただくことになりますので、予めお含み置き願います。
バンカー条約の締約国(2008年4月現在)
バハマ、ブルガリア、クロアチア、キプロス、エストニア、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、ジャマイカ、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ポーランド、サモア、シエラレオネ、シンガポール、スロベニア、スペイン、トンガ、イギリス (全20カ国)
添付別紙: バンカー条約証書「ひな型」