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改正小型タンカー油濁補償協定(STOPIA2006)およびタンカー油濁補償協定(TOPIA)について

2006/02/07 第05-013号
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2004年11月29日付P&I特別回報第04-012号「小型タンカー油濁補償協定(STOPIA)について」および2005年2月25日付P&I特別回報第04-016号「小型タンカー油濁補償協定(STOPIA)について(その2)」をご参照下さい。同特別回報でご報告致しました通り、STOPIAは2005年3月3日から発効しておりますが、その後の国際油濁補償基金(IOPC Fund)を舞台とした1992CLCにおける法的船主責任制限額の再引き上げの動きに対し、国際P&Iグループ(IG)はSTOPIA型の自主協定の枠組みを拡大することで対処すべきであり、現行条約の機能を弱めるような条約改定を行わぬよう主張して参りました。今般、概ねIG主張に沿った形で改正STOPIAおよびTOPIAの2つの自主協定をもって今後の油濁補償に対応していくこととなり、IGよりその旨の共通回章が発行されましたので以下の通りご報告申し上げます。



1.国際P&Iグループ共通回章 <STOPIA2006およびTOPIA導入の件>

既に上記当組合発行04-012号特別回報にて報告の通り、当理事会は小型タンカーの92CLC上の最低責任制限額を20百万SDRに引き上げる効果を持つSTOPIAを発効させることに同意した。STOPIAは対象小型タンカーの92CLC上の責任制限額と20百万SDRとの差額を1992年基金(92Fund)に補償するように運営することにより、92CLC/Fund条約によって確立され成功裏に機能している現行の補償制度を海運界が支持していることを表すものであり、2003年追加基金の発効による油受取人(油社)の補償負担の増加の可能性を踏まえ、2003年追加基金の発効と同じ2005年3月3日に発効した。

2005年10月開催のIOPC Fund総会で92CLC/Fundの改正問題が検討され、以下の通りの結論となった。

  1. 改正に向けての検討を継続することについては十分な支持が得られず、改正論議は総会議案から外されることとなった。これに伴い、改正問題の作業部会は解散となった。
  2. 各Club理事会の承認の下にIGから総会直前に提出された、改正作業の取り止めを条件としてクレーム総額を油社折半するための自主協定方式の導入案を認め、Fund事務局長に対しに船主の代理としてIGおよび油社の代理としてのOCIMFと共同で2006年2月ないし3月に開催される総会で検討できるように自主協定案を取りまとめるように指示がなされた。

多くの参加国においては船主が油社とクレーム総額を折半するとする提案が行われたことを受けて、改正作業の取り止めを支持する決断が下された。

10月の総会以降、船主(IG)の提案内容が効果的に機能し関係者が許容できる方式を策定すべくFund事務局およびOCIMFと幾度かの会議は執り行われた。更に、その間、IGは、新協定の内容が出来る限り海運業界全般にとって受け入れられるものとするべく、常にICSおよびIntertankoと協議を持ち続けた。

これらの論議を経て添付の2つの協定書案、すなわちTOPIA(Tanker Oil Pollution IndemnificationAgreement)(添付資料1)およびSTOPIA 2006(Small Tanker Oil Pollution IndemnificationAgreement 2006)(添付資料2)の完成を見た。

それぞれの協定書の概要は、各協定書案に添付されているExplanatory Notesに述べられている。

STOPIA2006およびTOPIAは、92CLC/Fundおよび2003年追加基金の対象となる油濁クレームの総額を、長きに亘って船社および油社で折半して92Fundに拠出する効果を確保することを意図している。


STOPIA 2006
この協定書は大部分が、2005年3月に発効した29,548GT以下のタンカーを対象として船主が92CLC下での船主責任制限額とSDR20mとの差額を92Fundに賠償することに同意することを定めた現行のSTOPIA協定書の内容を写したものとなっている。これは小型タンカーの賠償責任限度額を、92CLCで定める最低限度額SDR4.5mからSDR20mに引き上げる効果を持っている。

STOPIA 2006は現行のSTOPIAと異なり、見直し規定を含んでおり、発効後10年後に(そしてその後5年毎に)船主あるいは油社が92CLC/Fundおよび2003追加基金に拠出した2006年2月20日以降のクレーム累積総額の比率が55%を上回った場合には、将来的に補償をすべく協定書を修正することが出来る余地を与えている。更に、比率が60%を上回った場合には協定書は強制的に修正されなければならないとも規定されている。
もうひとつの違いは、現行のSTOPIAが2003追加基金加盟国を対象にしているのに対し、STOPIA 2006が全92Fund加盟国を対象とするものとなっている点である。

更に、このような船主側の修正案を用いることでCLC改正の検討を取り止める方針を支持した主要国の要求により、新STOPIAの対象を全92CLC加盟国にまで拡げる提案も行っている。しかしながら、STOPIA 2006は求償者に直接支払いをするのでは無く92Fundに賠償する方式で機能するものなので、92CLCに加盟しかつ92Fundに加盟していない少数の国々にSTOPIA同様の扱いを拡げるには別の協定を作り出すなりの手立てを講ずる必要がある。この点については現在の検討を行っているところで、進展があれば改めて報告をする予定である。

また、STOPIA 2006ではIOPC Fundの会議の中で各国から呈された異論に応える形で協定終了規定および償還請求規定について現行のSTOPIAの規定に修正が加えられている。修正後の規定は次に述べるTOPIAにも盛り込まれている。

STOPIA 2006は2006年2月20日から発効となる。その場合、現行のSTOPIAについては協定終了の3ヶ月前通告をIOPC Fundに提出する予定である。


TOPIA
TOPIAは大きく2つの点を除けばSTOPIA 2006と類似している。相違点の第一は、TOPIAではタンカー船主は2003追加基金が支払を行うあらゆるクレームの50%を追加基金に賠償することとなっている点である。

第二はTOPIAは船舶の大きさに拘わらず該当する全てのタンカーが対象となるという点である。TOPIAにはSTOPIA 2006に規定されているのと同一の見直し・協定修正規定が含まれている。従って、船主および油社間で生じたクレーム金額負担比率の不均衡は、TOPIAあるいはSTOPIAもしくは両方を改定によって将来的に調整することが出来るようになっている。

STOPIA 2006およびTOPIAはともに、IOPC Fund総会の同意を条件として、2006年2月20日から発効する。


その他
IOPC FundはCLCおよびFundの対象となる油濁クレーム費用に関して1978年から2003年の期間を対象に統計的な分析を実施した。その分析では各年毎の船社・油社間の費用の分担比率については大きな振幅がある一方、長期の累計で見れば費用は概ね等分に負担されてきたとの結果が示されている。

IOPC Fund事務局は最近同じデータを使って更なる分析を行った。その結果、もし1978年から2003年のクレームに現行のCLC/FC条約の限度額と上記のSTOPIA/TOPIAが適用されたとし、かつクレーム金額にインフレを加味して2002年時点の価値に焼きなおした場合には、船主の負担が51%、油社の負担が49%になるとの試算を報告している。また、この負担比率は、仮に予想されるインフレを加味した2012年時点の予想価値でクレーム金額を再計算してみると船社・油社で逆転するとも報告している。このような過去におけるほぼ等分の負担をしめす分析結果は、必ずしも将来において、特にどちらかというと短期間の内には、繰り返されるとは限らないかもしれないが、間違いなく今回提案している通りSTOPIA 2006およびTOPIAを実施していく妥当性の示していると考える。特に巨額の事故が発生したりすれば、年々毎の費用の分担比率については結果としてかなりの変動があるであろうが、協定の見直し・修正機能が顕著な不均衡を徐々に正していく手段を提供することとなる。

STOPIA2006およびTOPIAの導入に伴い、IG内での合意形成後、現行のIGクラブ/IOPC Fund間の覚書(MoU)につきSTOPIA2006およびTOPIAの対象船の自動的加入並びに当該リスクへの保険提供の保証を盛り込んだ修正を行うことを予定している。更に、修正MoUには92Fundおよび2003年追加基金に当該リスクを引き受けているクラブに対する直接求償権が付与される点も盛り込まれることとなる。

STOPIA2006およびTOPIAの発効に伴い、用船者がタンカー船主に対しこれら協定への加入を求める条項を用船契約書に加えるよう要請してくることが予想される。その場合IGとしては添付の条項を用船契約書に盛り込むことを推薦する。



2.STOPIA2006・TOPIA対象船の取り扱い

STOPIA2006およびTOPIAは2006年2月末開催予定のIOPC Fund総会での承認を条件に2006年2月20日に発効する予定ですが、これに伴い関連する当組合の特別条項の新設・改定を行います。新設・改定の詳細につきましては追って特別回報にてご連絡申し上げます。


1)外航タンカー

STOPIA2006およびTOPIA対象外航タンカーを所有する組合員はそれぞれSTOPIA2006およびTOPIAに参加することとなります。両協定のもとで負う組合員の新たな責任は、保険契約規定第25条および各船の保険契約承諾証記載の条件に従っててん補されます。


2)内航タンカー

当組合内航船はIGプール協定と再保険手配の対象ではありませんのでSTOPIA2006およびTOPIAの対象船となっておりません。このため、現行STOPIAでは同協定の趣旨にご賛同の意思を表示頂いた組合員の該当船につき任意加入の形でSTOPIA加入手続きを行っております。すでに現行STOPIAには多くの内航タンカーにご加入いただいておりますが、上記STOPIA 2006の趣旨に鑑み、STOPIA 2006にも現行STOPIAにもまして奮ってご加入下さいますようお願い申し上げます。STOPIA 2006ご加入に際しましては、現行STOPIAと同様、特段の割増保険料の必要はございませんが、保険金額の見直しが必要となる場合がございますので、必要に応じ最寄の当組合事務所までお問い合わせ下さい。今回のSTOPIA2006への改正に当たりましては、現行STOPIAにご加入いただいております船舶につきましては別段のお申し出が無い限り、引き続きSTOPIA2006への加入手続きを取らせていただきます。なお、TOPIAにつきましては、現行の内航保険契約の下では参加していただくことが困難なため内航保険契約下での任意加入のお申し込みの受付は行いませんのでご了解願います。

添付資料:1.タンカー油濁補償協定書(TOPIA)試訳
2.改正小型タンカー油濁補償協定書(STOPIA 2006)試訳
3.IG推奨「STOPIA 2006 用船契約条項」および「TOPIA用船契約条項」試訳
4.表「92CLC/92FC/追加基金/STOPIA2006/TOPIAの補償額」
※ 1~3の各資料の原文はP&I特別回報(英文版)の添付資料をご利用下さい。