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米国テロリズム保険法 最終施行規則について

2003/10/27 第03-010号
  • 外航
P&I戦争危険特別カバーと米国テロリズム保険法(TRIA)に関する2003年2月17日付P&I特別回報(第02-018号)をご参照下さい。TRIAの最終施行規則が去る7月8日に発表され、TRIAの対象となるP&I保険契約は米国運輸省海事局(MARAD)助成金受給船ないし融資被保証船のものに限定されることが確定いたしましたので、以下のとおり顛末をご報告します。

米国財務省は本年2月25日に暫定最終規則(IFR)を発表しました。それによれば、連邦機関が承認した保険者(P&Iクラブはこの範疇に属します。)が取り扱う保険契約のうち、承認の対象となった保険契約のみがTRIAの適用対象になるとされていました。これは、TRIAが適用されるP&I保険は米国籍船のうちMARADの助成金受給船ないし融資被保証船に関するものに限定されるということを意味します。


これに対し国際P&Iグループ(グループ)は、直ちに「米国水域でテロに遭遇した全船舶が連邦政府の補償を受けられるようにすることがTRIAの目的に適うものであり、施行規則で適用範囲を法文以上に狭めるのは財務省の権限を逸脱している。」という趣旨の意見書を提出しました。


7月8日に発表された最終施行規則で、米国財務省はグループの意見に一定の理解を示し、将来施行規則改定の可能性が皆無でないことに言及したものの、対象保険者の範囲の明確性確保という法の運用上の必要性から、IFRのP&I保険に関する部分の規定に変更を加えませんでした。したがってTRIAが適用されるP&I保険は、米国就航船のうちわずか0.5%程度にしかならないMARAD助成金受給船ないし融資被保証船に限定されることが確定しました。残念な結果ではありますが、グループとしては成算がないためこれ以上の行動は見合わせることとしました。


なお、当組合の加入船舶が万一米国水域でテロに遭遇しP&I損害が発生したとしても、他のグループクラブ加入船舶と同様、グループを通じて共同で再保険手配しているP&I戦争危険特別カバーを享受できますので、組合員各位には特段のご不便をおかけすることはありません。


(注)

    1. 当組合のTRIA上の地位
    2. 当組合は、MARAD船のP&I保険引受けに必要なMARADの承認を取得していないため、現状ではTRIAの対象保険者に該当しないことになりました。

    3. P&I戦争危険特別カバーとTRIA 2003保険年度のP&I戦争危険特別カバーに関しては、本年2月開催の当組合理事会において、TRIAに基づく連邦政府の補償を享受する可能性と再保険市場の状況を勘案し、同カバーのてん補限度額を一船一事故あたり米貨4億ドルに引き上げ、かつTRIAで定義されるテロ損害に対応する保険料率を1総トン当り米貨0.25セントとすることが決議されました。全グループ・クラブが同様の決議を行い、それに基づき今保険年度のP&I戦争危険特別カバー再保険が手当てされています。この再保険は、TRIAの規定にかかわりなく働きます。他方TRIAの規定により、再保険がある場合の政府補償は再保険者に帰属することになっていますので、グループ・クラブ加入船に関してはTRIA対象船か否かによる得失はすべて再保険者の勘定に帰し、加入船主・引受クラブの勘定には影響しません。