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米国のテロリズム保険法制度

2002/11/22 第02-013号
  • 外航
唐突ではございますが、米国のテロリズム保険法が成立に向けて急進展している状況を受けて、以下のとおりご通知申し上げます。

表題の法律は2002年11月28日にも施行される見通しが強まっており、船主とその加入P&Iクラブに深刻な影響が及ぶ懸念が出ております。

そのような影響を回避するため、同法が規定する追加カバーの享受を希望される場合には多額の割増保険料をご請求申し上げる旨のご通知を、同法の発効の際にさせていただきます。割増保険料の支払いに応じられない場合、貴ご加入船のテロリズムに関するカバーは現在のままとなります。

上記の措置が執られるに至った背景の詳細については添付別紙をご参照ください。

第02-013号(添付) 
 2002年11月22日 

米国のテロリズム保険法

米国は、保険会社が提供する米国におけるテロ行為に対するカバーを2001年9月11日以前の状況と同基準にすることを意図した法律を導入する予定です。同法の下では、連邦政府は発生した損害の90%までの補償を提供します。

不幸にも、この法案起草の元になった考え方は、保険者はテロ以外のリスクについて提供しているものと同範囲かつ同限度のテロカバーを提供しなければならないと規定することにより、保険者に対してテロカバーを2001年9月11日以前のレベルに回復することを要求するものです。P&Iクラブの場合、現在当該カバーは戦争危険(テロを含む)として、船舶の適正船価相当額を超える2億ドルを限度として提供されています。戦争危険以外のカバーの限度額は非常に高く、油濁に関しては10億ドル、その他のP&Iリスクに関しては約42億5千万ドルとなっています。したがって、組合は米国政府から相当程度の補償が得られるとはいえ、同法がP&Iクラブに対しこれら高限度額までテロに関するカバーの提供を要求するという状況に直面しています。このリスクはプールの対象とならず、再保険でもカバーされません。

同法は既に米国議会の下院・上院の双方で承認され、恐らく2002年11月28日に合衆国大統領の署名を得て直ちに発効する見込みです。同法は事実上強行法規であり、各クラブは発効日からテロリスクに関して一般のP&Iカバーと同限度額までのカバーを提供しなければならなくなります。

同法は、米国の財産保険への助成を主目的としており、戦争危険と非戦争危険に関するカバーが並存する海上保険市場に対しこのような極端な影響を与えることを目的としたものではありません。したがって、同法の施行細則が整った暁には、クラブの特別な状況が顧慮される可能性もあると考えられます。しかしながら、一方で組合は米国の弁護士から、クラブとその組合員にとって最も過酷な影響を回避するためには、同法の規定を利用することが必要であろうと助言されています。

同法の規定によれば、以下の場合に免責条項の復活が可能です。
- 保険者が被保険者からそのような復活を明瞭に一任する書面による申告を受領した場合、又は、
- 被保険者が保険者から請求されたテロカバーの割増保険料の支払いを履行しなかった場合

同法の下におけるクラブの立場は、次年度の保険契約更改前には明確にされることが望まれます。しかしながら、それが不可能である場合には、保険契約更改手続きの一部として組合員各位からテロ免責条項の復活について確定的にご一任いただきたいと考えております。また、現保険年度の残存期間に対しては、組合員各位から免責条項の復活に関する一任について書面による承認がない限り、クラブはこの期間についての割増保険料を請求するほかありません。とはいえ、プールも保険市場での補償も得られない状況を勘案すれば、割増保険料は40億ドルに上る各クラブのテロリスクを反映しなければならないことから、非常に高額になることが明らかです。このような状況下で、大半の組合員は船舶の適正船価を超える現在の2億ドルの戦争危険カバーで足りるとされるものと思われます。組合員は、免責条項の復活に関する書面による承認か、請求された割増保険料を期限内に支払わないかのいずれかにより、現状継続を選択した旨の意思表示ができます。

同法案が署名され法律となり次第(おそらく11月28日に)、国際P&Iグループ加盟全クラブは全組合員に対し、米国テロリズム保険法による多額の追加保険料を請求する通知を発行することになりますので、予めご通知申し上げます。