P&I戦争危険特別カバー
- 外航
首題に関連した2003年2月17日付P&I特別回報第02-018号及び2003年2月20日付P&I特別回報第02-019号をご参照願います。
手配可能な再保険条件の変更により、2003保険年度のP&I戦争危険特別カバーの契約条件も変更されましたが、再保険者からの変更通知が更改期日の直前であったため、その後国際P&Iグループでは次の2点について明確にするよう試みて参りました。今般その結果がまとまりましたので以下のとおりご報告申し上げます。この再保険上の解釈は当組合のP&I戦争危険特別条項においても同様となりますので、その旨ご了承願います。
- 化学兵器、生化学兵器、電磁兵器及びコンピュータ・ウィルス除外条項
本条項は、2003保険年度から新たに付帯され、過度なリスクの集積を回避するため、殆どすべての再保険契約にも同様な条項が導入されています。その文言は次のとおりです。
「この条項は至上で、本保険契約に含まれるいかなる相反する条項にも優越する。
- 本保険契約では、いかなる場合でも、次の各号が直接又は間接を問わず起因し、又は寄与したことにより生じた損害、責任又は費用をてん補しない。
1.1 化学兵器・生化学兵器・電磁兵器によるもの
1.2 危害を加える手段としてのコンピュータ・ウィルスの使用、操作によるもの」
注: P&I特別回報第02-018号に添付された理事会決議書の中では、「化学兵器、生物兵器、生化学兵器、電磁兵器及びサイバー攻撃除外条項」として引用されております。
本条項は、解釈をめぐり、その意味するところがあまりに広く混乱が生じたため、国際P&Iグループ、保険ブローカー、再保険者の間で討議した結果、保険ブローカーが再保険者の承認を得て以下の声明を発表しました。
「化学兵器等除外条項(MM条項 第2249(a)号)は、2003年2月20日開始の本保険契約の引き受けに際し初めて付帯されたものである。
保険ブローカーの理解するところでは、“化学兵器・生化学兵器”という文言は、サリン、マスタードガス、炭疽菌、天然痘といった神経性あるいはウィルス性物質を除外することを意図しており、爆発物及びその起爆や装着といった方法を指すものではない。本船の積荷そのものが本条項にいう化学兵器・生化学兵器でない限り、本船やその積荷を、危害を加える手段として用いたとは捉えない。“電磁兵器”とは、コンピュータ・ソフトウエアの機能を無効にするよう設計された極めて精巧な装置を指すもので、爆発物の起爆や装着といった手段を意味するものではない。
“危害を加える手段としてのコンピュータ・ウィルスの使用、操作”による除外は、本保険契約においては、戦争又はテロ行為として用いられた場合に限る。」
国際P&Iグループは上記原則を盛り込んだ修正条項を提示しており、次年度から適用される除外条項の文言がより明確化されることを期待しています。
- 超過基準額 (エキセス・ポイント)
国際P&Iグループ再保険契約上の超過基準額(エキセス・ポイント)に関する規定が、2003保険年度より以下のとおり変更されました。
「本保険契約では、船舶もしくは乗組員に対するP&I戦争危険カバーの下で回収可能な金額を超過した部分を支払うものとする。ただし、加入船舶の適正船価又は米貨1億ドルのいずれか低い金額(船主による加入(Owners’ entries)に対してのみ適用し、用船者による加入(Charterers’ entries)には適用しない)を超過し、かつ1事故当り最低超過基準額米貨5万ドルを超えたものを対象とする。」
保険ブローカーと再保険者は、ここでも本条項の意図が明確に理解されているか懸念し、国際グループと討議した結果、下記の声明が再保険者の承認のもと保険ブローカーから発表されました。
「保険ブローカーの理解では、船主による加入(Owners’ entries)の場合、本保険契約は、本船の適正船価を限度とする基本契約を超えた部分につき発動する。
こうした保険が付保されていない場合は、本船の適正船価まで基本契約が付保されているものとみなして適用する。ただし、本船の適正船価が米貨1億ドルを超える場合は、米貨1億ドルとみなす。
本保険契約は、船主によって手配された船舶もしくは乗組員に対するその他すべてのP&I戦争危険カバーを超過する部分につき適用される。ただし、海運部門が一部門をなす企業体が手配する法人向け包括賠償責任保険は、たとえ戦争、テロ危険がてん補対象に含まれていた場合でも、ここでいう基本契約とはみなさない。
再保険者は、P&Iクラブが加入船舶の適正船価を認定するうえで裁量権を有していることは了解するが、本保険契約での保険金支払いは、上記の判断基準のもとクレーム協力条項によりなされることを条件とする。」
組合員各位は、P&I戦争危険特別条項のもとで提供される当組合の保険カバーに対応するよう少なくとも加入船舶の適正な保険価額にて船舶戦争保険(船主責任)を付保しているとみなされることにご留意願います。さらに申し上げれば、この特別条項によるカバーは、法人向け包括賠償責任保険を除いて、組合員各位が実際に付保している当該リスクをカバーする他の保険の超過部分に適用されることをお含み置き願います。法人向け包括賠償責任保険の定義は困難を極めますので、このような保険を手配している組合員各位は、本カバーとの関係を確認するため組合事務局までご照会願います。
また、現在手配なさっている戦争危険カバーの引受け保険者にも同様の確認を求められますことをお勧め申し上げます。