損害調査担当

組合員の利益を守ることを第一に

Message01

Message01

事故対応は一つとして同じものがない

P&Iに関する事故は多種多様で、その対応も、解決までに時間を要するものや、短期間で解決をしなければいけないものなど一つとして同じものがありません。ある貨物損傷のケースでは、解決までに6年近くの時間がかかりました。ブラジルで起きた荒天による荷崩れの事故で、船主責任限度額を超えそうな案件となり、英国弁護士を起用して事件解決にあたりました。事故当初は、本船がアレスト(差押え)される可能性があったため、アレストを回避することが事故対応の初動となりました。また、クレーマントが複数いて、それぞれがブラジルで訴訟を起こしたため、ブラジルでの応訴と並行して、船主はB/L(船荷証券)の仲裁条項に基づき、ロンドンで仲裁手続きを開始し、保険者としてブラジルでの訴訟とロンドンでの仲裁のサポートにあたりました。さらに、船主と用船者は事故原因についての主張が相反したことから、最終的な解決に至るまで 長い時間を要しましたが、組合員にとって満足できる解決となりました。

一方、短期間で解決しなければならないケースもあります。オーストラリアで積んだ貨物のショーテージクレーム(貨物不足損害)のケースでは、組合員から短期間で解決したいとの要望を受けました。揚地となったベトナムでクレームが提起されたのですが、東南アジア地域はクレームが発生すると容易に船がアレストされてしまうため、迅速な事故対応が必要になります。金曜日の夕方に事故の一報が入り、週末に対応し、週明け月曜日の朝に解決しました。このように、事故はいつ起こるか分からず、休日や夜間に対応することもありますが、組合員の利益を守る仕事はとてもやりがいがあります。

Message02

組合員へのフルサポート

FD&D保険に関するクレーム対応もおこなっています。FD&D保険は、損害賠償そのものではなく、用船契約などに関するクレームや 紛争、訴訟などの処理にかかった費用をてん補するものです。

FD&D保険でのクレームの事例として、スピードクレームがあります。例えば、用船者がある貨物船をダーバン港(南アフリカ)からシンガポール港へ運航するために船主から借りた場合には、用船契約が締結されます。その契約条件に「平均15ノット」という保証速度と保証燃費が規定されていたにもかかわらず、船底の汚損という船主が責任を負うべき原因により、実際の航海では10ノットしか出せず燃費が悪かった場合は、用船者は船主が約束した速度が守れなかったとして補償を求めるスピードクレームの訴訟を起こすことがあります。このような紛争の解決には、弁護士など専門家の助言が不可欠ですが、ケースによっては、紛争が長期化し、弁護士費用が予想外に大きくなることで、船主と用船者ともに企業経営に悪影響を与えるリスクもあります。このような場合にFD&D保険で私たちが紛争解決のためフルサポートしています。また、2020年1月1日からMARPOL条約付属書VIにおける燃料油の硫黄含有量の上限が3.5% m/mから0.5% m/mへ削減されます。船舶の運航においてこの規則に適応した燃料油(適合油)を使用する必要がありますが、燃料油市場での適合油の需要供給量が不確実な状況下では、紛争や損失を避けるためにもあらかじめ用船契約の条件をよく検討する必要があります。万一、燃料油に関するクレームが起きた場合にも、FD&D保険により組合員をサポートします。

Message03

グローバルな環境でクレーム対応

Japan P&I Clubに、私が入社したのは2008年4月のことです。もともと、P&I保険やJapan P&I Clubのことも少し知っていて、海事業界は国際的な仕事でもあるため、親近感が沸いたことが当組合で働くきっかけになりました。2013年9月に東京から転勤となり神戸支部の損害調査チームで、クレーム対応を担当しています。歴史的に国際文化を受け入れてきた神戸の街は、当組合の発祥の地でもあります。こうした歴史のある街で生活をし、国際的な仕事に携わることができて、毎日が充実しています。

主に組合員とは電話やメールでの応対になりますが、電話やメールだけでは、すべてをお伝えするには限界があります。またクレーム対応は、複雑でデリケートな局面も多く、電話だけで一度もお会いしたことのない組合員には、堅く難しい人という印象を与えてしまうこともあるようです。実際にお会いした時に「イメージと全然違う!」と言われることもあり、とても嬉しく、時間の許す限り組合員を訪問し、顔を合わせてご説明やご相談に応じるよう心掛けています。こうして直接会ってお話しすることにより、組合員のみなさまとより深く意思疎通が取れ、クレーム対応もよりスムースになるので、今後も訪問の機会を大切にしていきたいです。

Message04

英国研修で学んだこと

英国のサウサンプトン大学(University of Southampton)で、毎年行われている海事法研究所(Institute of Maritime Law)の社会人向け3週間の短期講座を、研修の一環として受講しました。欧州の弁護士、海運会社、P&Iクラブ等の世界で活躍する仲間たち26名と知り合い、互いの苦労や悩み、課題なども気軽に話すことができ、貴重な時間を共有しました。講座では、海事法全般の座学だけでなく、テーマを決め意見を出し合うワークショップなどもあり、特に船舶同士の衝突を想定したケーススタディーでは、参加者にP&I保険者、船舶保険者、船主、用船者、荷主などの立場を割り当て、各視点でリスクを認識し、目標設定した事故処理を行い、広い視野で考え、時には視点を変えて考えることの重要性を学びました。

3週間のショートコースもあっという間に過ぎ、修了後はロンドンで多くの法律事務所を訪問し、私が主に担当していたクレーム処理についての実務研修を行いました。仲裁機関The International Dispute Resolution Centre Ltd(IDRC)や、The London Court of International Arbitration(LCIA)を訪ね、ロンドン研修後は、ジェノバ、マルセイユ、カサブランカのコレスポンデンツにも案件の打ち合わせで訪問しました。

この研修を通じて、業務面だけではなく、知り合った人たちと親密になり視野を広げることができました。英国研修での経験は、現在の事故対応に非常に役立っています。研修を通じて得た知識や経験を今後に活かし、組合員のみなさまのお役に立てるよう努力していきたいです。