オーストラリアにおけるクサギカメムシの検疫管理
広報室 マネージャー 宮廣 好一
ここ数年で発生した日本やアジア各国からのクサギカメムシ(BMSB)によるトラブルを未然に防ぐため、オーストラリアに寄港する船舶はあらゆる船舶監視、検査に従う必要があります。次の2020/2021年の季節的管理措置に向けて、BMSBの特性とこの措置についてご案内します。
1.オーストラリアでBMSBの検疫管理を行う必要性
BMSBは、オーストラリアには棲息していませんが、海上貨物でヒッチハイクする傾向と機動性が高いことから、固有の生物の安全に対する脅威になります。人間の健康に対するリスクではありませんが、農産物へのリスクが懸念される害虫で、住居や車両で大量発生します。機動性が高いBMSBは、越冬のため北半球の寒冷期である9月から4月までにオーストラリア向けの貨物、車両や機械類に潜入します。オーストラリアは、世界で6番目に大きな陸地を持つ国で、北部は熱帯性気候、南部は涼しく時には寒い雨の多い冬もあり、日照時間も北と南で大きく異なります。このような風土ではBMSBが侵入すると、そのまま定着してオーストラリア全土の農産物に影響を及ぼす可能性があります。そのため、オーストラリアではBMSBの検疫を厳しく行っています。
2.2019/2020年の季節的管理措置
季節的管理措置は、船舶や貨物で侵入するBMSBリスクを管理するために実施されます。本措置は、毎年北半球の冬季にあたる9月から翌年4月の間に積載された貨物に適用されます。成虫のBMSBが越冬のため機械類、車両や他の侵入しやすい貨物に隠れる季節に実施します。
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季節的管理措置の対象
2019/2020年の季節的管理措置は2019年9月1日以降、下の33か国に寄港、貨物を積載または積み替えを行い、2020年5月31日までにオーストラリア領土に到着した全てのRORO船に適用されます。
アルバニア、アンドラ、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、コソボ、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、マケドニア、モンテネグロ、オランダ、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スイス、スペイン、トルコ、アメリカ、日本
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季節的管理措置の概要
RORO船はBMSBが隠れ家にできる場所が多く、RORO船でBMSBやその他の外来種が大量に発見されたことから導入されました。上述(1)の対象国および日本からのRORO船に対する監視が強化されます。具体的には以下の2点の措置が義務付けられています。
- 本船で自己検査を実施し、着岸前に求められる報告事項である特定質問に答えること。
- オーストラリア着岸時に季節性病害虫検査を受けること。
日本は2017/2018年のBMSB発見数が多かったことから措置の対象となっています。ただし、オーストラリア政府が設定した条件(Vessel Seasonal PestScheme、季節性病害虫検査)に適合し、運航中にBMSBが発見されなかったRORO船については、到着時の検査義務が免除されます。
貨物の種類については、必ず検査を受けなければならない対象であるハイリスク貨物と、アトランダムな検査に従えばよいリスク貨物があります。積載方法について、例えば、オープントップ・コンテナ、フラット・ラック・コンテナの貨物は洋上での検査が義務化されています。通常のドライコンテナで運送された貨物は、洋上でも陸上でも検査を受けられます。
BMSBの季節的管理措置についての詳細は、オーストラリア農業省のサイトをご参照ください。
www.agriculture.gov.au/import/before/brownmarmorated-stink-bugs