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ニュース

タンカーにおける救助艇落下事故の再発防止策

2026/07/31 No.1383

ドイツ連邦海難調査局(BSU)は2026年7月23日、タンカーでの救助艇降下訓練中に発生した落下事故に関する調査報告書、およびプレスリリースを同調査局ウェブサイトにて公表しました。

 

本事故は、救助艇の降下訓練中、ウインチ内部の腐食性の環境空気や湿気に起因するフリーホイールモジュール(ワンウェイクラッチ)の隠れた技術的欠陥により救助艇が急降下し、乗組員3名が負傷したものです。BSUは本件を受け、製造企業へ技術的知見を周知するようドイツ造船海洋産業協会(VSM)へ安全勧告を発出しています。
(出典:BSU Investigation Report 271/23およびPress Release 11/26

 

救助艇などの降下訓練は非常時の対応能力を維持するために不可欠な作業ですが、常に高所からの墜落・落下の重大なリスクが伴います。事前点検や自船の安全管理システム(SMS)に定められた安全手順を遵守せず、手順から逸脱した状態で訓練を実施することは極めて危険です。

 

再発防止策

  • 揚降装置(ウインチ内部機構)の開放点検と計画的保守管理の徹底(外観点検の限界の認識)
    本事故の根本原因となったウインチ内部(フリーホイールやブレーキ機構など)の腐食や固着は、日常的な外観の目視点検や外部からのグリスアップだけでは発見できません。外観点検の限界を認識し、メーカーの取扱説明書に基づく定期的な開放点検の実施や、内部の状態確認を確実に行う保守管理体制を整備・強化することが不可欠です。

  • 構造的リスクの把握と確実な部品交換
    年次点検を通過している機器であっても、内部構造に起因する隠れた技術的欠陥が存在し得る事実を強く認識する必要があります。耐用年数や過酷な使用環境に応じ、内部のシール材や軸受などの重要部品をメーカー推奨の時期に合わせて計画的に交換する予防保全を確実に実施することが重要です。

  • 機器不具合を前提とした人命保護(SMSに定める事前点検・作動確認手順の遵守)
    機器には目に見えない不具合が潜んでいるかもしれないという前提に立ち、各管理会社のSMSに定められた事前の作動確認や点検手順を現場の判断で省略することなく厳格に遵守し、機器の安全が確認される前に乗員を乗せて降下操作を行わないなど、人命リスクを排除することが求められます。

  • リスクアセスメントの実施と船内安全衛生委員会などでの技術情報の共有
    救助艇の降下訓練などの対象作業を開始する前には、リスクアセスメントを実施して機器内部の不具合という最悪のハザードを想定し、ツールボックスミーティングで共有する必要があります。また、本件のような隠れた技術的欠陥に関する事故事例を、船内安全衛生委員会などで周知し、本船全体の安全意識向上と潜在的リスクへの注意喚起を行ってください。

リスクアセスメントについて、より理解を深めていただくための参考資料として、P&Iロスプリベンションガイド(2021年6月発行:第51号リスクアセスメントの実践)を発行しております。併せてご活用ください。
また、リスクアセスメントについての解説は、当組合の「動画で知る」(リスクアセスメント)にてご覧いただけます。


当組合は引き続き、専門的知見を生かした最新情報を提供し、皆さまの事故防止をサポートしてまいります。