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【コラム】国際P&Iグループの活動紹介-IG Correspondents Seminar in Hong Kong

2024/08/27

はじめに

本年、国際P&Iグループ(IG)は125周年を迎えました。1899年の設立当初は、英国を中心とした6つのP&Iクラブにより「プール協定」と称する協定を締結したロンドンP&Iグループが形成されましたが、現在は、当組合を含む世界の主要な12のP&IクラブがIGを形成し、世界の外航船の船腹量の約9割の保険を引き受けています。この12のクラブは、それぞれ独立した相互保険組合であり、営業面では競合状態にありますが、船主の責任が加重化し、事故原因究明が複雑化する傾向にあるなか、IG一体となって協力しながら、各種問題に対応しています。例えば、IGの機能の一つとして、特定情報に関する守秘義務を守ったうえで、各クラブやメンバーに共通の懸案事項について情報交換の場の提供が挙げられます。この情報交換の場は主に委員会の形式を取りますが、当組合は組合員の皆さまの声が届けられるよう委員会への積極的な参加を心掛けています。損害調査部門では、クレームハンドリングに大きく関わる委員会であるCorrespondents Committee(コレスポンデンツ委員会)のほか、Claims Cooperation委員会、Personal Injury委員会、Salvage委員会、Large Casualty委員会などに参画しています。今回は、本年6月に開催されたコレスポンデンツ委員会主催のコレスポンデンツセミナーの模様をご紹介します。


IGとコレスポンデンツ

全世界のどこで・いつ事故が発生しても速やかにご対応できるよう、IG加盟クラブ(IGクラブ)は世界の主要港にクラブのグローバルネットワークメンバーとして、組合員の利益を守るため、現地の情報収集や調査手配、関係者との調整など、P&Iクレームに精通したコレスポンデンツを任命し、各クラブのウェブサイトで公開しています。当組合は、世界各地に約600ものコレスポンデンツを任命し、強固な関係性を築きながら組合員の皆さまを専門的な知見からサポートする体制を整えています。当組合のコレスポンデンツは、こちらからご覧いただけます。


また、IGでは、各国コレスポンデンツとの関係強化やガイドライン作成などを目的とし、IGクラブにより構成されるコレスポンデンツ委員会を設立し、さまざまな課題について話し合っています。コレスポンデンツ委員会は4年に1度、主にロンドンで世界中のコレスポンデンツを集めてコレスポンデンツの日頃の協力への感謝を伝えるとともに、コレスポンデンツの役割の再確認や情報共有などを行うコレスポンデンツ会議を開催しています。2019年からは各コレスポンデンツ会議開催期間の合間に地域型のコレスポンデンツセミナーを開催することになり、初回はシンガポールで開催され、2回目の今回の開催地は香港でした。


コレスポンデンツセミナー(於:香港)概要

今回のセミナーの特徴として、技術革新が大きなテーマの一つでした。国際的な専門家による代替燃料の特徴や安全性、最近多発している電気自動車のバッテリーから発生する火災事故の特徴、さらにITの進化による事故対応・事故処理技術、生成AIの活用等々が取り上げられました。また、制裁などの難しいテーマではクラブとコレスポンデンツと白熱した議論も見受けられる場面もありました。

 

登壇風景

当組合からは、田中靖子クレームエグゼクティブが“Cargo claims handling issues in Asia”と題し、近時のアジア地域における貨物クレームの傾向について講演しました。講演は、撒積貨物のクレーム発生数において相当部分を占めるアジアのクレーム傾向を把握する重要性と、その中でも特に異なる国ごとのクレーム傾向を中心とした内容だったこともあり、同地域からの参加者を中心に関心を持って聞いてもらえたようです。また、アジアを代表する海事都市の一つである香港でIGがセミナーを開催するに際して、当組合が地域に焦点を当てた講演を行うことで、アジアに本拠を置く唯一のIGクラブとしてアジア地域のIGネットワークにおいて、さらには全世界のIGネットワークの一員として、全世界のIGネットワークへ情報共有の観点から貢献できたのであれば幸いです。

開催日程:2024年6月26日(水)~28日(金)

開催地:ルネッサンス香港ハーバービュー

講演風景

 

おわりに

当組合は、日々のクレームハンドリングを通じ、世界中に任命したコレスポンデンツと強固なネットワークを有しています。また、IGのコレスポンデンツ委員会の活動の中でも広く情報共有を行っています。このような強固なグローバルネットワーク体制を基盤に、万一の事故がいつ・どこで起きても組合員の皆さまに安心していただける高品質なクレームハンドリングサービスをこれからも提供してまいります。