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EUの対ロシア制裁-第14次パッケージ

2024/07/08 第24-008号

2024年6月24日、欧州理事会は第14次対ロシア制裁パッケージを採択しました。このパッケージには、ロシアの液化天然ガス(LNG)部門を対象とする初めての措置、さらなる輸出関連の規制、船舶に対する制裁および新たな制裁逃れを防止する措置(EU企業に対し、第三国にあるEU域外の子会社もEU制裁を遵守するよう最善の努力を払うことを義務付けることなど)が含まれています。


これらの措置は、(i) EU規則833/2014を改正する理事会規則2024/1745および(ii) EU規則269/2014を改正する理事会規則2024/1746に記載されています。



LNG部門における規制


EUは、EU域内で消費されないロシア産LNGがEU域内に持ち込まれたり、EU域内の港を経由して第三国に輸送されたりすることを防ぐことを目的として、ロシア産LNG(ロシアを原産地とするもの、またはロシアから輸出されたもの)に対する規制を初めて導入しました。また、ロシア産LNGの「荷揚げ作業を行う」事業体に対し、2024年7月26日までと、それ以降は毎月、EU域内への輸入についてEU加盟国の所轄当局への報告を義務付ける規則が導入されます。今後は以下の規制が適用されます。


  • 船舶間での積み替え(STS)、船舶から陸上への荷揚げとその後の再積み込みを含む、第三国向けの積み替えを目的としたEU水域内でのロシア産LNGの再積み込みサービスは禁止されます。2024年6月25日以前に締結された契約については、事業縮小期間が認められており、2025年3月26日まで禁止措置は適用されません。

  • この禁止措置はロシア産LNGのEU域内への輸入には影響せず、EUを経由して第三国へ再輸出される場合にのみ適用されます。

  • LNG燃料船の補油に必要な再積み込みサービスは、適用対象外となります。EU加盟国の所轄当局は、加盟国へのロシア産LNGの輸送に必要な再積み込みサービスを許可することができます。これは、積み替えが加盟国のエネルギー供給を確保するために行われることを、加盟国が確認した場合に限られます。

  • 海上安全を理由とする緊急入港のため、海上での人命救助のため、または人の健康や安全、環境に深刻かつ重大な影響を及ぼす可能性のある事象の緊急的な予防・軽減のために船舶が避難場所を探している場合や自然災害への対応として、船舶が支援を必要としている場合、「融資または金融支援」(保険を含む)の提供に関する適用除外が認められています。

  • ロシアで建設中のLNGプロジェクト(Arctic LNG 2やMurmansk LNGなど)完成のための新規投資や物品・技術・サービスの提供は禁止されます。2024年6月25日以前に締結された契約については、2024年9月26日まで事業縮小期間が設けられています。この禁止措置は、ロシアのターミナルからのLNGの購入・輸入や、そのようなLNGプロジェクトに提供される金融サービスには影響しません。

  • 相互接続LNGシステムに接続されていないEU域内のLNGターミナルを通じてのロシア産LNGの購入、輸入、移動は禁止されます。2024年6月25日以前に締結された契約については事業縮小期間が認められており、2024年7月26日まで禁止措置の適用はありません。

  • これらの禁止行為に関連する、直接的または間接的な技術支援、仲介サービス、融資および金融支援(保険を含む)の提供も禁止されます。


制裁逃れに対抗するための新たな措置


今回のパッケージでは、以下のような制裁逃れ防止措置が導入されます。


  • EUの個人および事業体は、第三国にある子会社がEUの制裁を弱体化させる可能性のあるいかなる活動にも参加しないよう「最善の努力」を尽くすことが求められます。

    「最善の努力」とは、制限措置の弱体化を防ぐという結果を達成するために適切かつ必要なすべての行動を指します。「そのような行動には、例えば、(EU)事業者が所有または支配する法人・事業体または団体の設立されている第三国、事業分野または活動の種類などの要因を考慮したうえでの、リスクを効果的に軽減・管理するための適切な方針、管理および手続きの実施が含まれます。同時に、最善の努力とは、(EU)事業者の性質、規模、関連する事実状況、特に(EU)域外に設立された法人、事業体または団体に対する実効支配の程度を考慮して、(EU)事業者にとって実行可能な行動のみからなるものと理解されるべきです。このような状況には、(EU)事業者が、第三国の法規制など自らが原因ではない理由によって、所有する法人、事業体または団体に対し支配力を行使できない状況も含まれます」【EU規則2024/1745 第8a条および前文(30)】。


  • 第三国に軍事物資を販売するEU事業者は、ロシアへ再輸出されるリスクを特定・評価し、そのようなリスクを軽減することができるよう、デューディリジェンスの仕組みを導入する必要があります。

  • EU事業者は、軍事物資の製造のための工業的ノウハウを第三国の商業パートナーに移転する場合、そのノウハウがロシアへの輸送を意図した物品に使用されないことを保証する契約条項を盛り込む必要があります。


制裁逃れに対する制裁規則の文言が拡大されました。新しい文言は「本規則における禁止事項を回避することを目的または効果とする活動に、故意や意図的に参加すること(そのような目的または効果を意図的に求めている訳ではなくとも、参加することがそのような目的または効果をもたらす可能性があることを認識し、その可能性を受け入れることを含みます)は禁止されます。」と規定されています【EU規則2024/1745 第12条】。



金融部門における規制


EUは、ロシア中央銀行が開発した独自の金融メッセージ転送サービスであるSystem for Transfer of Financial Messages(SPFS)の使用を禁止しました。EUの事業者は、SPFSまたは同様の独自金融メッセージ転送サービスに接続することを許されず、またリストに掲げた特定の企業とロシア国外でSPFSを使用して取引を行うことも禁じられます。



輸送


EUは、輸送を対象とする以下のような措置を導入しました。


  • 以下のような船舶を(附属書XLIIにおいて)リストアップする枠組み。
    1. ロシアの防衛・安全保障分野で使用される物品や技術を輸送すること
    2. ロシア原産の原油または石油製品を、不規則でリスクの高い方法で輸送すること
    3. ロシアのエネルギー部門を支援すること
    4. ウクライナを弱体化させたり、脅かしたりする活動に従事すること
    5. EUの制裁措置において規制されている物品を輸送すること
    6. EU制裁の違反、回避もしくは履行の妨害を助長またはそれらに関与すること
    7. (EU規則269/2014に基づく)資産凍結対象者の名義で、またはその代理で、もしくはこれらの者の利益のために所有、用船、運航または使用されていること

EUは現在までに27隻の船舶を制裁対象として指定しています(附属書XLIIに列挙)。これらの船舶は、入港禁止、保険・用船・管理・仲介を含むサービス提供の禁止、STS禁止の対象となります。


  • 制裁対象となった船舶が避難場所を求めている場合、海上安全のため、海上での人命救助のため、人道的目的のため、もしくは人の健康・安全や環境に深刻かつ重大な影響を及ぼす可能性のある事象の緊急的な予防・軽減のため緊急入港する場合、または自然災害への対応として支援を必要としている場合については、規制の適用が免除されます。

  • EUはまた、EU域内における航空機の乗り入れ禁止と、陸路による物品輸送の禁止を拡大しました。

  • ウクライナとの戦争においてロシアの軍産複合体を支援しているとして、新たに61の事業体が制裁対象に指定されました。この制裁対象には、貿易制限の回避や、無人機の生産やロシアの軍事作戦への物質的支援などに使用される機密品目の調達に関与しているとされるSovcomflotやVolga Dneprグループが含まれます。


輸出入規制


EUは、いくつかの新たな制裁指定と輸出入規制を導入しました。


  • ロシアの防衛・安全保障分野の技術強化に貢献しうる制限品目のリストが拡大されました。

  • EUは、ロシアの工業力強化に貢献する品目(マンガン鉱やレアアースの化合物を含む化学物質、プラスチック、掘削機械、モニター、電気機器など)の輸出と、ロシアにとって大きな収入源となっているロシアからのヘリウム輸入をさらに制限しました。2024年6月25日以前に締結された契約については、物品の性質に応じて様々な事業縮小期間が設けられています。


その他の制裁措置


EU規則2024/1745 第5ab条と第11条は、EU事業者を保護するための枠組みを提供しており、制裁の実施や収用に関連する、ロシア企業による損害の賠償を請求することができます。ここでは、附属書XLIIIに列挙されているロシア企業に対する取引禁止の強制化や、賠償金を回収するためのEU加盟国の管轄裁判所における司法手続が規定されています。


サハリン2(Сахалин-2)プロジェクトに関する適用除外は、日本のエネルギー安全保障上の必要性から、2025年6月28日まで延長されました(EU規則2024/1745詳説42)。



ロシアが関与する貿易は、重要な法的規制の対象となっています。組合員は、適用される制裁措置に違反するいかなる取引にも、保険てん補を受けられないことにご留意ください。また、組合員におかれましては、制裁リスクの高い取引に従事する前に、貿易チェーン全体の関係当事者、貨物、船舶およびその他のサービス提供者に関し、徹底的なデューディリジェンスを尽くすことをお勧めいたします。最後に、デューディリジェンス調査および所見の記録を保管するようご注意ください。


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より詳しい情報は、以下よりご覧いただけます。


欧州理事会のプレスリリース

14次制裁パッケージに関するQ&A