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米国-カリフォルニア州における油流出関連の違反に対する刑罰強化

2020/10/09 第20-014号

要旨

 

カリフォルニア州の水域における船舶からの油流出損害に対して、202111日から新しい罰金が適用されることをご案内申し上げます。

 

カリフォルニア向けの船舶を運航されている組合員の皆さまに対し、この法律改定は以下のような結果をもたらすことになります。

 

1) 現行の罰金が、1つの違反ごとに最高100万米ドルへと倍額化される(違反の日または部分的な日ごとに別々の違反とみなされる)。

2) 1,000ガロンを超える流出油について、1ガロン当たり最高1,000米ドルの付加の罰金を科す権限を裁判所に与える。

 

いずれの場合も、違反者が故意にカリフォルニア州の水域に汚濁をもたらす行為を行ったか、もしくは汚濁の発生を合理的に知り得た場合に、罰金が科される可能性があります。

 

背景

 

2020924日、カリフォルニア州知事は、カリフォルニア州議会法案(AB3214に署名し、その結果、カリフォルニア州のレンパート・キーン・シーストランド油流出防止・対応法(以下「同法」)の改正により、罰則や罰金が強化・増額されることになりました。現行法では、このような民事および刑事罰はさまざまな法令のもとで科されます。Government Code 8670.3条は、責任の主体(「違反者」)を個人、信託、企業、株式会社または法人(政府関連法人、パートナーシップ、団体を含むがこれらに限定されない)と定義していることから、輸送チェーンに関与する他の当事者のうち、船主、オペレーター、船長も含まれることになります。

 

当初の議会草案は、次のような内容になっていました。


(1)カリフォルニア州における賠償資力証明(COFR)の金額引き上げ-カリフォルニア州水域を運航するTank VesselまたはNon-tank Vesselは、油流出による損害をカバーするため、Tank Vesselの場合10億米ドルから20億米ドルへ、Non-Tank Vesselの場合は3億米ドルから6億米ドルへと、それぞれ金額が引き上げられた賠償資力証明を保持しなければならない。

(2) 油流出時に科される罰金の水準を従来の2倍にする。

(3) 1,000ガロンを超える流出油について、流出油1ガロン当たり最高1万米ドルの付加の罰金を科す権限を裁判所に与える。


いずれの場合も、違反者が故意にカリフォルニア州水域で油流出を引き起こしたか、もしくはその行動が油流出につながることを合理的に知り得た場合に責任があると判断されることになっていました。カリフォルニア州法では、「合理的に知り得た」という表現は、単純な過失の基準と同等なものと考えられています。


Tank VesselおよびNon-tank Vesselが米国向けの航海を行うために取得を要求される連邦または州のCOFRについては、国際P&Iグループのクラブでは発行しておりませんが、COFRを取得するために必要となる、1事故1隻あたり最高10億米ドルの油流出損害(第三者からのクレームのみならず罰金もクラブのルールでのカバー対象です)に対する保険カバーをクラブが提供していることはお気付きかと存じます。


AB 3214 - カリフォルニア州議会

 

国際P&Iグループや地元の船主・エネルギー団体が法案起草者へ直接に陳情を行った結果、COFRの金額引き上げは、草案から削除されました。また、法案起草者は、1千ガロンを超える油の流出があった場合の罰金額を1ガロン当たり最高1万米ドルから、最高1,000米ドルへと引き下げましたが、法案からの完全削除や、罰金額のさらなる引き下げはできませんでした。既存の罰金額を倍増にすることについても、起草者は当初の草案のままとしました。

 

カリフォルニア州知事-AB 3214への署名

 

国際P&Iグループは、次に国際海運会議所(ICS)と協力して、AB 3214に対し拒否権を行使するようカリフォルニア州知事へ直接伝えました。国際P&IグループとICSは、地元の利害関係者にも働きかけ、カリフォルニア州内および国際的に多くの関係者へ影響することを考慮し、海事労働組合からも同様の陳情を行うよう働き掛けました。

 

しかし、残念ながら、知事は拒否権を行使せずに924日に法律に署名し、改定法が202111日から発効することとなりました。

 

以下の場合に、違反者に改定法に基づく増額された罰金あるいは新たな罰金が科される可能性があります。


(1) 油流出に関連して、故意に行政官の指示や命令に従わなかった場合。

(2) 船舶に障害が生じてから1時間以内に、あるいは、障害の生じた船舶から油が水上や海上へ流出したことを知りながら、Coast Guardに届け出なかった場合。

(3) 州の水域への油の排出もしくは流出に故意に関与するか、排出・流出を引き起こした場合。または、その者が州の水域への油の排出・流出に関与したもしくはその原因となったことを合理的に知り得た場合。

(4) 流出油の清掃、軽減、または除去を求められていることを知りながら、これを開始しなかった場合。

 

上記の禁止行為のいずれかに違反して有罪判決を受けた者は、違反の日または部分的な日ごとに別々の違反とみなされ、違反ごとに1万米ドル以上100万米ドル以下の罰金を科されます(上述のとおり、本特別回報でお伝えしている罰金に加え、他にもさまざまな民事および刑事罰が科される可能性があることにご注意ください)。

 

法律はさらに、「裁判所は、細目(a)〔すなわち、上述の(1)から(4)〕に違反して有罪判決を受けた者に対し、1,000ガロンを超える流出油について、1ガロン当たり最高 1,000米ドルの罰金を科すことができる」と規定しています。

 

(1)(2)(4)については、罰金が適用されるのは行為が故意に行われた場合に限定されるかもしれません。しかし(3)は、行為を知っている者のみならず、「...合理的に知り得た者」にも言及しており、カリフォルニア州法のもとでは、単純な過失であった場合にも、この規定に違反したとして船主に罰金が科される可能性があります。

 

国際P&Iグループは、汚染者に対して非常に高額の罰金が科される可能性があることを念頭において、この新しい法律が油濁リスクのカバーに与える潜在的影響を検討しており、この点については、改めてご案内する予定です。

 

また、国際P&IグループとICS は、この新しい法律から生じる業界の懸念に対処するための措置を講じる可能性を検討していますが、そのような措置を講じても、202111日のカリフォルニア州での法律発効日には影響を及ぼさないでしょう。

 

この点につきましては、可能な限り早く皆さまにご案内いたします。

 

国際P&Iグループのすべてのクラブが、同様の内容の回章を発行しています。