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中国-固形廃棄物による環境汚染の防止および管理に関する法律改正(2020年9月1日施行)-情報追加

2020/08/18 第20-012号
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※青字部分の情報を追加しました。

 

要旨

 

中国における現行の「固形廃棄物による環境汚染の防止および管理に関する法律(2015年改正)」は、特定の輸入許可を得ない限り、固形廃棄物および有害廃棄物の輸入、投棄、廃棄処分を禁止しています。現在輸入が禁止されている固形および有害廃棄物、ならびに輸入許可が必要な廃棄物は、中国の管轄部門が発行している各目録に記載されています(下記をご参照ください)。許認可制度は201181日から施行されています。

 

202091日から施行される固形廃棄物による環境汚染の防止および管理に関する法律(改正法)は、禁止されている固形廃棄物を輸入する、および/または適切な輸入許可を得ていない場合、当該固形廃棄物の返還と廃棄処分について、運送人と輸入業者に連帯責任を課し、また違反に対する罰金額を大幅に引き上げるものです。

 

中国は2020年後半に固形廃棄物の輸入を削減する予定としていて、202111日から中国へのすべての固形廃棄物の輸入が禁止されることにご留意ください。その結果、202111日からは固形廃棄物の輸入に関する許認可制度が存在しなくなる予定です。

 

 

2020年改正法

 

中国国内への輸入、投棄、廃棄処分が禁止されている、および/または輸入許可が必要な固形廃棄物は、2017年と2018年に中国国務院の管轄部門が公表・修正した固形廃棄物目録に記載されています。目録は、以下のとおり、本共通回章に添付しています。

 

  • 添付I:中国への輸入禁止固形廃棄物の目録で、輸入が不可となるもの。
  • 添付II:輸入制限の下で原材料として使用することができる固形廃棄物の目録で、現在は許可を得て原材料として使用するために中国へ輸入することができるが、2021年1月1日以降の輸入が禁止されるもの。
  • 添付III:原材料として使用することができる固形廃棄物であって、輸入制限を受けていないものの目録。このような固形廃棄物は、現在は認可を得て中国へ輸入することもできますが、2021年1月1日以降の輸入は禁止されます。添付IIと異なり、添付IIIに記載された固形廃棄物の輸入業者は、「原材料として使用可能な固形廃棄物(輸入制限なし)に関する輸入許可」を取り付ける必要があります。
  • 添付IV:中国への輸入がすでに禁止され、今後も禁止となる有害廃棄物の目録。

 

輸入制限は、固形廃棄物輸入に関する行政措置に基づき、中国で201181日より始まった許認可制度の対象となります。運送人は、中国への固形廃棄物の輸送を受け入れる前に、荷送人に対し、(i)該当する固形廃棄物の輸入許可証、(ii)固形廃棄物輸入に関する荷受人の登録証明書、(iii)外国の固形廃棄物サプライヤーの登録証明書、(iv)輸入固形廃棄物の輸出前検査証明書の提出を要求すべきです。この許認可制度は、すべての固形廃棄物の輸入が禁止される202111日より前、つまり2020年末まで実施されます。

 

海上輸送により中国へ輸入された固形廃棄物の返還と処分に関する責任を規定する現行法では、輸入が禁止されている固形廃棄物の返還や処分費用について、運送人が輸入業者を特定できない場合にのみ、運送人に責任を課していました(2015年改正、第78条)。改正法では、禁止されている廃棄物を輸入した場合や、輸入禁止の固形廃棄物目録における許認可制度の要件を順守していなかった場合に、固形廃棄物の返還と処分について、運送人と輸入業者の双方に連帯責任が課せられます。したがって、運送人が輸入業者を特定できている場合であっても、運送人が責任を負う可能性があります。もし運送人と輸入業者が固形廃棄物の返還を拒否し、または3か月以内に返還の手配を行わない場合には、所轄当局は輸入業者や運送人が廃棄物を返還するよう措置を講じます。返還できない固形廃棄物や税関当局が返還しないことを決定したような場合には、その廃棄物は関係当局によって廃棄処分され、処分費用について運送人と輸入業者が連帯して責任を負うことになります。

 

改正法では、同法に違反した場合の罰金も大幅に増額されています。運送人が、禁止されている固形廃棄物を中国領内へ輸送した、または中国を経由する有害廃棄物の輸送に関与した場合、運送人と輸入業者に50万元(約71,000米ドル)から500万元(約710,000米ドル)の罰金が科せられると規定されています(第1151項)。これは、税関当局による固形廃棄物の輸出地への返還命令に加えて、この罰金が科せられることになります。改正法は、有害廃棄物以外の固形廃棄物が中国領内を通過することを禁止するものではありません。運送人が固形廃棄物を中国経由で輸送する場合、その固形廃棄物(有害廃棄物を除く)が中国の港で荷揚げされないのであれば、税関当局への申告は必要ないと理解されています。一方、中国の港で荷揚げされ、中国領内を通過する場合には、輸入許可を得る必要があります。

 

法律違反に対する罰金の額が著しく増額されることを踏まえると、組合員が固形廃棄物の輸送を引き受ける際には、記名式船荷証券(straight bill of lading)か海上運送状(seaway bill)を発行し、船荷証券や海上運送状に記載された受荷主名と上記の輸入許可証や登録証明書に記載された輸入業者名が一致していることを確認することをお勧めします。さらに、組合員が貨物につき疑義がある場合、特に荷送人が以前にも固形廃棄物を中国へ輸送したことがあると組合員が理解している場合には、荷送人に対し輸入許可証、登録証明書、出荷前検査証明書と同様に、上記目録に製品の税関コードが掲載されている場合には、当該税関コードの提示を求めるべきです。

 

もし、禁止されている固形廃棄物の運送が、港での荷揚げ後にその廃棄物に起因する環境汚染につながる場合には、追加の罰金が課せられる可能性があり、その額は、汚染による直接的な経済的損失と同額~3倍に相当する金額、または、その事故が重大な性質のものであるとみなされる場合には、直接的な経済的損失の35倍に相当する金額で計算されます(第118条)。改正法は、中国の海域内での海上輸送に起因する海洋環境への汚染損害の防止および管理については規定するものではなく(第2条)、中国における別の法律に準拠します。

 

改正法は、荷送人の誤申告により固形廃棄物が輸入された場合を区別していませんが、運送人は誤申告の結果科せられた罰金について異議を申し立てることができます。中国行政処罰法(第272項)によれば、禁止された固体廃棄物の輸入が軽微な行為であると判断され、有害な影響を及ぼすことなく、適時に是正された場合には、行政処分は科されないものとするとされています。ただし、運送人は依然として禁止された固形廃棄物の返還と処分に関し輸入業者と連帯責任を負うことになります。

 

中国の領土または海域で事故が発生した場合、船舶に積載された貨物、または船舶および機械類も[「固形廃棄物の識別基準 一般規則(GB34330-2017)」に基づき]固形廃棄物として扱われ、中国法に則った処分が必要となる可能性があります。これは、貨物や船舶が損傷を受けたことにより本来の使用価値を失ったか否か、また、船舶をその後原材料として使用できるか否かによります。損傷を受けた貨物が修繕不能となり、元の用途で再販売できない場合、あるいは事故に起因して、船体や機械類の一部が中国国内での破断のために売却されるような場合、それらは固形廃棄物として識別される可能性が高く、税関当局の監督のもとで処分する必要があるでしょう。国際P&Iグループは、こうしたシナリオに対する当局の判断はケースバイケースだろうとの法的アドバイスを得ています。

 

この地域において輸送を行う組合員は、固形廃棄物による環境汚染の防止および管理に関する法律の対象となりうるあらゆる活動について、十分注意し、慎重に行動することが求められます。改正法の施行に向けて、税関が貨物の検査や輸入固形廃棄物の検疫を強化することが予想されます。密輸嫌疑や法律違反による罰金を回避するため、中国へのいかなる種類の廃棄物輸送についても、組合員は相当な注意を払い、慎重に確認することをお勧めします。

 

改正法において課せられる要求事項に関し疑問がある場合は、当組合にご連絡ください。改正法の英語版*および中国語版は、本共通回章の添付資料VとVIに含まれています。

 

国際P&Iグループのすべてクラブが、同様の内容の回章を発行しています。

 

 

* 固形廃棄物による環境汚染の防止および管理に関する法律(2020年改定)[英語版]は、北大法宝(本翻訳の独占的著作権はChinalawinfo Co., Ltd.にあります)によって翻訳(www.pkulaw.com/english)されています。言語、法律システム、文化の違いがあることから、中国法の英訳はあくまで参考としてのみ使用しています。最終的な出典としては公式の中国語版をご利用ください。