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中国天津港における船舶汚染防止管理の新規制(その2)

2018/05/24 No.961

題記の件に関し、香港の油濁清掃業者のHong Kong Reman Marine Services Co., Ltd.より入手した最新情報を2018年4月18日付Japan P&I News No.954でご案内いたしましたが、複数の組合員より掲題の新規制の解釈や施行、運用等につきご照会を頂戴いたしました。

当組合では組合員の一助とすべく、同新規制についてHuatai Insurance Agency & Consultant Service Ltd.より追加情報を入手しましたのでご参考に供します。

なお、同新規制については、中国海事局より公式解釈が出されていませんので、Huatai社独自の見解であること、お含み置きくださいますよう、また実際に天津に寄港される場合には、ご自身の代理店に同規制の施行状況をご確認くださいますようお願い申し上げます。


=引用開始=

2018年3月1日、天津市政府は「天津港における船舶汚染防止管理に関する新規則」を公布、同規則は2018年5月1日から施行されています。同規則には、船舶やターミナル、その他関係者に対し、港内を航行したり港内で作業したりする際の環境汚染防止を要求する規定が設けられています。

同規則の適用範囲は、2010年天津港総合計画に記載されている天津港湾海洋環境区域で、海域とその上空が含まれます。

当社はその最大限の知識と経験に基づき、同規則の要求事項に関する見解をご参考までにお知らせいたします。

  1. 天津港内での焼却炉の使用禁止。違反者には3,000から30,000人民元の罰金が科されると同時に違反の是正措置が求められる。

    [Huatai提案の対応/対処方法]
    1. 排出記録簿(Garbage Record Book)を確実にする。
    2. 当社が知りうる限り、渤海海域でも焼却炉やその他汚染物質を発生させる設備の使用は禁止されている。

  2. 船舶が天津港内にて航行、着岸、錨泊または作業期間が30日を超過する場合、または船舶が天津港内の造船所や乾ドックに修理のため継続的に入渠する場合は、汚染物質排出設備の封印を行わなければならない。これらに違反すると2,000から20,000人民元の罰金が科されると同時に違反是正措置が求められる。封印された該当設備を開封する場合には事前にMSAに連絡しなければならない。船舶、人命、財産が危険に晒されている緊急時には、封印を開封することができるが、かかる場合には事後MSAにできるだけ速やかに連絡しなければならない。そして、このような事実をEngine Log Bookに適切に記載しなければならない。

    [Huatai提案の対応/対処方法]
    1. 汚染物質排出設備の封印は、天津港内にて船舶が航行、係船、錨泊や作業した31日目より始め、船舶の出港日まで行う必要がある。
    2. 前述の30日以上の期間は累積であり、ドック入りの期間も含まれる。
    3. 封印されなければならない汚染物質排出設備には機関室の油性混合物排出バルブも含まれる。一方、船級協会承認済(class approved)の汚水処理設備は除外される。
    4. 現地MSAが開封の監督/検査をするので、次の点に注意すべきである。
      1. 封印はそれが開封され、対象設備が使用されることのないよう確実にされていなければならない。
      2. “by Order of the Master, it was sealed on dd/mm/yy, it is forbidden to unseal / open / operate without the Master further Order. Dated on dd/mm/yy”
        (船長の命令により、xxxx年xx月xx日に封印。船長による許可を得ずに開封/使用することを禁ず。xxxx年xx月xx日)との警告を対象設備の上または近くに貼っておく。
      3. 封印日とその状態を証明できるよう写真を封印時に撮り、MSAの検査の際に必要があれば提示できるようにしておくとよい。
      4. 封印と開封の記録を、MSAの検査に備え、機関日誌および(または)他の正式な記録簿に適切な記録を残すようにすべきである。

  3. ダスト貨物または有害ガスを拡散する可能性のある貨物を輸送または荷役中の船舶は、同物質の封入またはその他保護策を大気汚染防止のために講じなくてはならない。有害ガスのリサイクルは、危険汚染物質を含む貨物の積載や作業を行う船舶側が対策を講じるべきである。同対策実施に違反した場合は3,000から30,000人民元の罰金を科されると同時に是正措置が求められる可能性がある。

    [Huatai提案の対応/対処方法]

    1. 航行中の一般貨物船、ばら積船、オイルタンカー、ガス運搬船などの船舶は、ハッチカバーやバルブが閉じられ、風雨密性の状態を保持しなくてはならない。
    2. 船舶が荷役作業のため着桟中、同作業が船舶側ではなく(陸側の)港湾荷役会社により行われる場合、保護対策実施義務は港湾荷役作業会社にある。
      しかし、本船側も汚染防止設備をいつでも稼働可能な状態にしておく必要がある。
    3. 新規則では、ターミナルや港湾荷役会社にも荷役作業における汚染防止対策の義務が課されている。
    4. 前述の対策は外航船のみならず、あらゆる内国貨物を輸送する(中国)内航船にも適用される。トン数や船種は問わない。
    5. 前述の貨物に関するハッチカバーやバルブの操作がある場合、適切な記録を舷門の記録簿もしくは貨物作業帳または船舶上のその他公式記録簿に残す。

  4. 船舶のデッキは洗浄前、汚染物質が除去されていなくてはならない。
    次のいずれかに該当する場合は、デッキを洗浄してはならない。
    1. デッキに汚染物質が残っている。
    2. 船舶が海洋自然保護海域、海洋特別保護海域、養殖海域や漁場、塩田地帯Haihe川の河口地域を含む特別保護ゾーンを航行している。

    [Huatai提案の対応/対処方法]
    1. 渤海の他の海域でもデッキ洗浄は同様に禁止されている。
      デッキ洗浄により出る汚水は濡れたごみとして定義されているからである。
    2. 当社が知る限り、特別保護ゾーンは天津行政区の主に海岸線に沿って設定されているが、外航船の通常の航路上に位置していない。
      詳細についてはチャートとGuide to Port Entry等を参照のこと。
    3. 一般貨物残渣等は、雨水やデッキ洗浄で天津港に流出してしまうことのないよう、デッキ上か船倉内にまとめて留めおくことを勧める。
      どうしても洗浄が避けられない場合は、汚水と残渣は適切に保管しておくか処分することが肝要である。

  5. 船舶汚染物質回収が業者により行われる場合には、安全と汚染防止対策に関する責任の所在を明らかにすべく、業者と予め委託契約書を締結しておくこと。

  6. 船舶の構造、設備・器具および証書について同規制は何も規定していない。
    したがって、船主は2018年5月1日以降天津港に入港の際には、汚染防止についてのこれら要求を満たし、遅延や過怠金を避けるよう、適切な対策を講ずることを推奨する。

=引用終了=


繰り返しとなりますが、組合員におかれましては、天津港寄港の際には本新規制につき起用代理店に詳細を必ずご確認くださいますようお願い申し上げます。


追記:2018年4月18日付Japan P&I News No.954にある次の規則は、補油業者に適用されるものであり、補油を受ける側の船舶に適用されるものではないことが判明いたしました。

燃料油サプライヤーは、供給する燃料油の品質が関連基準および要件を満たしていることを確実にし、国家検査資格を有する検査機関に同燃料油サンプルを提出しなくてはならない。また同燃料油の品質検査結果報告を本船上に保管しなくてはならない。



当組合の確認が不十分でした。訂正と共にお詫び申し上げます。