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アラブ首長国連邦(UAE)―責任制限に関する画期的判決

2008/09/10 No.557
  • 外航

掲題に関し、英国の法律事務所Holman Fenwick WillanDubai)より情報を入手致しましたのでご参考に供します。


UAEでは、責任制限という概念がイスラム法と相容れないため、「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約(76LLMC)」を批准しているにも拘らず、実際に責任制限事案を取り扱うにあたっての明確な基準がありませんでした。しかしUAE 最高裁は最近の判決で、76LLMCUAE国内で有効であること、及び被告は責任制限をする権利があること(原告が、その権利を打破するための証拠を提出することを免れない)を明確化し、下級審においても適用されるとの見解を示しました。


とはいえ、UAEで施行されるアラビア語の76LLMCが英語版76LLMCの正確な訳と なっているか否かは不明確であり、76LLMC本来の意図とは異なる判決が下ることも考えられます。また、責任制限基金の設立については法律に規定が無く、基金設置の試みは失敗に終わりました。さらに、UAE国内法には76LLMCと矛盾する条項が存在するため、国際法が国内法に優先するとはされておりますが、紛争の原因となる可能性は あります。


UAE最高裁の判決は、責任制限事案に関する明確な指針を打ち出しましたが、上記のような不安定要素が存在することを念頭に置く必要があります。


この情報が、組合員の皆様のお役に立てば幸いです。