直接還元鉄(DRI)の海上運送 - 固体ばら積み貨物の安全実施規則(BCコード)の改定
2010/05/14 第10-003号
- 外航
直接還元鉄(Direct Reduced Iron: 以下"DRI")の海上運送をめぐる問題は以前より懸念されておりましたが、DRI輸送中に人命が犠牲となったYthan号の事故(2004年)や貨物と燃料油を積載したままフランス当局により故意に沈没させられたAdamandas号の事故(2003年)以降、関心が益々高まっております。 |
|
Ythan号では、貨物の "HBI Fines"(粉状のHot Briquette Iron)と積荷役の際に含まれた水分の相互作用により爆発が起こり、人命が犠牲となりました。事故当時のBCコード(固体ばら積み貨物の安全実施規則)では、熱間成型されたブリケットやHBIをDRI (A)として、冷間成型されたペレットや塊鉱等をDRI (B)として2分類していました。しかし、粉状のDRI/HBIはこれら(A)と(B)に明確に分類されておらず、専門家により危険性が高く反応しやすい(B)に分類するよう推奨されていました。 |
|
前述の事故とその後の調査を受けて、IMOの危険物、固体貨物及びコンテナ小委員会(the IMO Sub-committee on Dangerous Goods, Solid Cargoes and Container - DSC)により関連した安全基準の一部が見直されました。マーシャル諸島、Intercargo及び国際P&Iグループは、粉状のDRIをDRI (C)として個別に分類し、DRI (B)及び(C)をイナーティング(窒素)により輸送すべきであり、DRI (C)に関しての含水量は0.3%以下であるべきと主張しました。2008年9月開催の第12回DSC小委員会にてこの改定案はMaritime Safety Committee(海上安全委員会: MSC)に推奨され、2008年11月に採択、IMSBC コード(International Maritime Solid Bulk Cargo Code: 国際海上個体ばら積み貨物コード)と改正されました。 |
|
同コードのDRI (A)、(B)及び(C)に関する主な変更点は、以下の通りです。 |
|
DRI (A) ブリケット、熱間成型されたもの | |
- | 含水量は1%以下であること。 |
- | 貨物は主にブリケットであること。大きさが6.35mm以下の粉状のもの及び粉塵は5%以下であること。 |
- | 航海中は水素濃度を測定し、25%LELを超える場合には適切な措置が取られること。 |
- | 必要に応じて自然換気をすること。機械的な換気を行う場合には、ファンは防爆性で火花の発生を防ぐものであること。 |
- | 吸気/排気口には金網を設置すること。 |
DRI (B) 塊鉱、ペレット、冷間成型のもの | |
- | 粒子の大きさは平均6.35mm−25mmであること。大きさが6.35mm以下の粉状のもの及び粉塵は5%以下であること。 |
- | ローディングコンベアは乾いた状態であること。 |
- | 積荷役前に超音波テスト又は同等の方法により、ハッチカバー等の気密性を検査すること。 |
- | 含水量は0.3%以下に保ち、積荷役中も監視すること。 |
- | 積荷役後に水分を含んだり、相互反応がみられたものは直ちに荷揚げすること。 |
- | 必ずイナーティングにより輸送すること。 |
- | 船艙内の数箇所に温度計を設置のうえ、航海中は不活性状態を維持するため、水素/酸素濃度を測定すること。 |
- | 航海中の酸素濃度を5%以下の条件に保つための設備を保持していること。CO2の消化装置を条件維持のために使用してはならないため、航海中に補給ができるよう予備のイナートガスを保持する手段を講じること。 |
- | 積荷役が完了し、船艙が正しく密閉、イナーティングされ、全ての測定箇所で温度が65℃以下、空間部分の水素濃度が0.2%以下の安定した状態にあることを船長等が確認するまで出港しないこと。 |
- | 航海中の酸素濃度は5%以下に保つこと。 |
DRI (C) 生産品、粉状のもの | |
- | 粒子の大きさは平均6.35mm以下であり、12mmを超える粒子を含まないこと。 |
- | これに分類される物質はその性質により相互反応の確認が非常に難しいため、常に最悪の事態を想定し取り扱うこと。 |
- | 輸送条件は、主に含水量を0.3%以下に保ち、イナーティングにより輸送するなどDRI (B)とほぼ同じである。 |
IMSBCコードのDRI輸送条件の概要を添付(英文のみ)致しますが、概要に限らずコードの全条件を満たし厳守すべきであることをご留意下さい。 |
|
以上のとおり、DRI (B)及び(C)に分類される貨物を積載する場合には、当該船舶が航海中の酸素濃度を5%以下に維持する条件を満たしているか、十分ご確認願います。 |
|
同コードは、2011年1月より強制化される予定です。 |
|
DRI輸送に関するご質問がございましたら、当組合までご連絡下さい。 |
|
なお、国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。 | |