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国際PIグループ回章 B/L(船荷証券) - 韓国及び中国における貨物引渡しの件

2003/07/21 第03-009号
  • 外航
オリジナルB/Lの提出を受けずになされた貨物引渡し(保証渡)から生ずる組合員の責任は、PI保険からはてん補されません。 国際PIグループ・クラブでは2001年2月に、保証渡を要求された際に取得すべき保証状の標準書式の改定をご案内致しました(特別回報 第00-021号をご参照下さい)。 それ以降、韓国並びに中国の港において、貨物が本船より揚荷された後、荷受人の引取りまで保税倉庫等に保管される場合に、組合員が直面する問題が取り上げられています。


この特別回報では組合員の皆様に


A.次の3点を今一度ご確認頂くようお願いし、


    1. オリジナルB/Lの提出がない場合には貨物の引渡し(保証渡)をすべきではなく、保証渡をしたことによって生じる組合員の責任や費用はPI保険ではてん補されません。 もし組合員がオリジナルB/Lの提出を受けずに貨物を引き渡すのであれば、2001年2月に案内しました銀行が保証人として加わった保証状の標準書式と引換えにのみなされるべきです。 またそのような場合には保証人として加わった銀行が信用できるものかを確認する必要があります。

    2. 用船者よりB/Lの提出がなくても貨物の引渡しを認める旨の明確な条項をC/P上へ挿入するよう要求されることは珍しくないようです。 そのような条項の挿入は受け入れるべきではなく、用船者より要求がありましたら、返答をする前に当組合までご相談下さい。

    3. オリジナルB/Lの提出なしでの貨物の引渡しを目的に用船者並びに再用船者から提供される私的な保証状は受け入れないようご注意願います。また、コピーB/Lの提出に対しても貨物を引き渡さないようご注意下さい。

B.加えて、韓国及び中国の港にて貨物を揚荷する場合における特別な注意点を以下にてご案内致します。


1.韓国での揚荷

韓国の港ではしばしば貨物は本船より保税倉庫へ揚荷され、荷受人による引取りを待つことになります。保税倉庫には荷受人が自ら所有する、所謂“自家”保税倉庫と呼ばれるものと、荷受人とは関係のない独立した会社が所有する保税倉庫があります。 どちらに保管される場合においても、運送人には貨物の引渡し前にオリジナルB/Lの提出を受ける責任があります。 韓国では法律上、貨物の引渡しはCY/CY貨物を除いて、貨物の管理が運送人若しくはその代理人から他の者へ移譲されたときとされます。なお、CY/CY貨物の場合には貨物がコンテナヤードを離れたときとされます。 したがって、自家保税倉庫で保管される場合には貨物は通常本船の船側を通過した時点で本船の管理から離れるため、引渡しはこの時点で行なわれることとなります。 これに対し、独立系の倉庫に保管される場合には貨物が倉庫から搬出されるまでは本船の管理から離れたことにはならず、倉庫から搬出された時点で引渡しがされたこととなります。

独立系倉庫においても自家倉庫においても、オリジナルB/Lの提出を受けずに貨物が搬出されるケースが数多く見受けられます。 また、このうちいくつかのケースでは荷受人がB/L所持人ではないにもかかわらず、貨物の引渡しを受けています。その結果、B/L所持人が、通常は銀行ですが、荷受人から支払いを受けられず、または品物を取り戻せない場合には運送人に対して損害賠償請求がなされています。

船主が取るべき自己防衛策として次のような方法が考えられます。


    1. B/Lの提出を受ける前に、荷受人より貨物の引渡しをするよう要求があり、それに応じる場合には、前出の銀行が保証人として加わった標準書式での保証状の差入れを条件にのみ貨物の引渡しをするようにして下さい。

    2. 運送人には貨物を自家倉庫へ揚荷する義務はありません。空きがあれば、独立系倉庫で保管されるよう主張すべきと思われます。 その場合、オリジナルB/Lの提出を受けるか若しくは前項の銀行が保証人として加わった保証状の差入れを受けるまでは運送人が貨物を管理下に置くことができます。

    3. 貨物を独立系倉庫で保管する場合には、倉庫の所有者はオリジナルB/Lの提出を受けるか若しくは運送人の同意を得た場合にのみ貨物を引き渡す旨の契約を倉庫の所有者と結ぶようにして下さい。併せて、オリジナルB/Lの提示を受けずに、また運送人の同意を得ずに引渡しがなされた場合には運送人へ補償する旨の保証状を取り付けて下さい。 しかしながら、仮に保証状が実効のないものであった場合には、PI保険によってはてん補されませんので、運送人自らが損失を負担することになります。

    繰り返しになりますが、保証状の効力は保証状の提供者が支払能力を有すること、その他さまざまな要素によりますのでご注意下さい。

    B/L上に着荷通知先が記名されている場合、通常は荷主か銀行ですが、本船から貨物の管理を移譲する前に、着荷通知先へ相談するようにして下さい。


    また、韓国の港においては、B/L所持人が正当な引渡しを受けるべく裏書されていないことが明らかな場合にも、貨物の引渡しをしないように注意して下さい。以前韓国の銀行は裏書されていないオリジナルB/Lを現地の荷受人に譲渡して貨物の引渡しを受けられるようにし、同時に与信期間を延長していました。 韓国の裁判所は運送人によるそのような貨物の引渡しを不法と判断しています。


    2.中国での揚荷


    中国ではしばしば貨物は本船より税関が管理する倉庫または保管区域に揚荷され、荷受人よりオリジナルB/Lの提出を受けて引取られることとなります。 貨物の引渡しを受けるために偽造のB/Lが使用されたケースが数多く発生しており、税関官吏、代理店の職員やターミナルオペレーターの従業員の知識を用いたものと考えられます。 以前実施された腐敗追放の大掛かりな捜査では、大勢の税関官吏が逮捕されました。


    中国の港においては揚荷後の貨物に対する効果的な管理は事実上不可能であり、税関官吏、代理店並びにターミナルオペレーターに対する求償権の効果も疑わしいものであるため、自己防衛の手段として次のような方法を採るようお願い申し上げます。


      1. B/Lの提出を受ける前に荷受人より、貨物の引渡しをするよう要求がある場合には、前出の銀行が保証人として加わった標準書式での保証状の差入れを条件に引渡しをするようにして下さい。

      2. 運送人にはB/Lの提出を受けずに貨物を揚荷する義務はなく、B/Lの提出を受けるか、前項の保証状の差入れを受けるまでは船主が貨物を管理下に置くことができます。さらにある特定の状況では、裁判所へ適切な命令を出すよう申請し、貨物がオリジナルB/Lの提出を受けたときにのみ引き渡されるようにすることが出来ます。

      3. 上記以外の方法では、税関の保税区域に荷揚げする場合には、プロテクティブ・エージェントもしくはリーガル・レプリゼンタティブを使い、前出の韓国1.(3)と同様の条件での保証状を取り付ける方法が考えられます。 また、留置権の行使が認められる場合には、保管費用が支払われるまでは貨物の引渡しがなされないよう、留置権を行使することを推奨します。

      上記の勧告は当組合に加入する船主及び用船者に同様に当てはまるものであります。