米国アラスカ州油濁法に基づくNon‐Tank Vesselの賠償資力証明/事故対応計画について(その2)
2003/03/27 第02-002号
- 外航
題記に関する2000年8月7日付「P&I特別回報第00-009号」をご参照下さい。同回報で400総トンを超える非タンク船の油濁に関するアラスカ州の新法の概要をお知らせしましたが、施行細則が未完であったため、①賠償資力証明(COFR)申請書の提出期限、②保険免責金額に対する別途保険手配の要否、及び③事故対応計画(Contingency Plan)に関しては判明次第お知らせすることにしておりました。
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1. |
賠償資力証明(COFR) |
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(1) |
賠償資力要求額 |
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① |
主として持続性鉱物油を積載する400総トン超の非タンク船: 1事故につき油積載容積1バレル当り$400.20又は$6,670,000の何れか大きい額 |
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② | 主として非持続性鉱物油を積載する400総トン超の非タンク船: 1事故につき油積載容積1バレル当り$133.40又は$1,334,000の何れか大きい額 |
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(注) |
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1. | 同州法上「油」とは、原油・燃料油・ガソリン・潤滑油・油性スラッジ・廃油・LNG・LPG・その他の炭化水素系油を含む全ての種類・性状の油をいいます。 | |||
2. | 同州法上「非持続性鉱物油」とは、340°C(645°F)において体積の50%以上が留出し、370°C(700°F)において体積の95%以上が留出する炭化水素系鉱物油をいい、「持続性鉱物油」とは、非持続性鉱物油以外のすべての鉱物油をいいます。 | |||
3. | 法定額は特別回報第00-009号記載のとおりですが、3年毎に10月1日に消費者物価指数により調整されることになっており、今回の施行細則には初回調整額が掲載されています。 | |||
4. | 同一申請者が複数の船舶を就航させる場合の賠償資力要求額は、全船舶分の合計ではなく申請船舶中のいずれか最高額で足ります。 | |||
5. | 当組合に加入する外航船の油濁カバーの限度額はUS$10億ですので、上記要求額を十分満たしています。 | |||
(2) |
保険免責金額(Deductible)の取扱い |
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保険免責金額部分に関しては、2002年11月27日よりUS$50,000を超える場合にのみ別途の賠償資力証明が要求されることになりました。したがって油濁に関するDeductibleがUS$50,000を超える加入船舶について同州のCOFRを申請される場合には、当該組合員からDeductible相当額の償還保証をいただく代わりに保険契約承諾証に組合はDeductibleの抗弁をしない旨の追加条項を記載しますので、そのような組合員はその旨お申し出ください。 |
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(3) |
COFR申請書式 |
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以下のサイトからダウンロードできます。 http://dec.alaska.gov/spar/ppr/fr_nontank.htm |
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(4) |
COFR申請書提出期限 |
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本船の同州水域到着予定日から少なくとも15日前までという原則は変わりませんでしたが、緊急の場合には5日前まで申請は受理されます。 |
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(5) |
COFR申請書提出方法 |
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申請者の署名ある書面による申請が原則です。Faxによる申請も受理されますが、この場合には正規の申請書をFax送信後2営業日以内の日付のある書留郵便、配達証明郵便又は航空宅配便で送付することが必要です。 |
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(6) |
COFR申請書記載事項の変更届 |
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賠償資力証明額の変更をもたらすような記載事項の変更が生ずる場合には、変更の30日前まで、又は同州水域到着予定日の15日前までに届けなければなりません。 |
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(7) |
COFRの更新手続き |
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COFRは有効期間満了日の90日前から30日前までに更新申請を行う必要があります。P&Iクラブの保険契約承諾証を賠償資力証明に使用している場合のCOFRは2月20日に有効期間が満了しておりますが、P&I保険契約更改後60日以内に付保確認書を提出し、90日以内に保険契約承諾証を提出することが必要です(60日以内に保険契約承諾証を提出すれば付保確認書の提出は不要)。同州のCOFRを保持されている組合員各位におかれましては既に更新申請を行われていることと存じますが、2003保険年度のP&I保険契約承諾証の写しを2003年4月21日までに(申請代行業者経由)同州環境部(ADEC)に送付されますようご案内します。 |
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2. |
事故対応計画(Contingency Plan) |
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アラスカ州水域を航行する400総トンを超える非タンク船は、同州環境部(ADEC)に事故対応計画書を提出し、その承認を受けることが義務付けられます。2003年5月27日までに承認申請書が提出された計画は仮承認されたものとして扱われます。同日までに申請が行われない船舶については、同州内の航行及び油の積卸が禁止されます。
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(1) |
申請義務者:裸用船者、運航者、船主(運行管理権及び義務を保持する場合) |
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(2) |
Contingency Planの類型? 簡便型計画(StreamlinedPlan)と個別対応型計画(Equivalent Plan): |
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施行細則はStreamlined PlanとEquivalent Planという2種類の計画を規定しています。
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(3) |
Streamlined Plan記載事項の概要: |
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① | 計画所持人の名称、住所及び電話番号 | |||
② | 計画の各船舶の名称、公式番号、登録国並びに船主及び運航者の名称及び住所 | |||
③ | 申請年月日及び初回アラスカ州水域入域予定日 | |||
④ | 適格指定代表者(QualifiedIndividual)の氏名、電話番号、役職、Eメール・アドレス及びFax番号 | |||
⑤ | 油流出の場合の緊急報告行動(関係機関への報告責任者の氏名、電話番号及び通報先機関の電話番号を含む) | |||
⑥ | 各船舶の全長、全幅、総トン数、型、構造配置⑦ 各船舶の事故対応の際の行動基準書又は行動図表(各油タンクの位置、サイズ、搭載能力、各タンク搭載油種、その他油濁対応者に必要な情報を明記すること) | |||
⑧ | 各船舶の居住区、緊急脱出口、配管、タンク、バルブ、オーバーフロー・パイプ、タンクへの進入口、ポンプ、緊急停止スイッチ等の場所を記した詳細配置図にアクセスできる緊急連絡先の名称、場所及び電話番号 | |||
⑨ | 各船舶の最大燃料油搭載能力(バレル)と事故対応計画の基準とした燃料油量 | |||
⑩ | 各船舶の州内運航地域 | |||
⑪ | 各契約清掃業者及び事故対応チームの名称、電話番号及びEメール・アドレス | |||
⑫ | 清掃業者との契約の存在、契約清掃業者がADECの認可業者であること及び契約清掃業者が申請者の為に対応措置をとることが契約上明示されている旨の陳述(「対応計画提供業者」の計画を利用する場合を除く。) | |||
⑬ | 事故対応チームとの契約の存在、事故対応チームがADECの認可業者であること及び事故対応チームが申請者のために対応措置をとることが契約上明示されている旨の陳述(「対応計画提供業者」の計画を利用する場合を除く。) | |||
⑭ | 計画が対応計画提供業者により提出された場合には、提供業者の名称、電話番号、Fax番号及びEメール・アドレス | |||
⑮ | 各船舶が連邦海事法令及び国際海事条約等の基準を満たしている旨の陳述 | |||
⑯ | 計画実行責任者の署名ある記述内容の真正証明 | |||
(4) |
対応計画標準/運航水域 |
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施行細則はContingency Planの所持人に各水域において十分な対応資材を保持することを義務付け、州を10の水域に区分しています。対応計画標準によれば計画所持人は業者との契約に基づき各就航水域において48時間以内に最大積載油量の15%の流出をコントロールできるだけの対応要員資材等を備置するか24時間以内に現場に到着できることが求められます。 |
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(5) |
対応計画提供業者 |
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アラスカ州への就航機会が少ない船舶の船主は、州の認可を受けた「対応計画提供業者」に計画提出を委託することができます。対応計画提供業者は、申請者又は計画所持人と清掃業者及び事故対応チームとの間の仲介者として機能します。対応計画提供業者は、計画所持人と指定清掃業者及び事故対応チームとの契約締結を補助するか、叉は清掃業者及び事故対応チームと自ら直接契約した上でそのような業者を必要とする船主又は運航者と契約するか、いずれかの方法を取ることができます。従来このような業者の申請代行サービスを利用されている場合には、計画作成代行の案内があるものと思われますので、必要に応じ適宜ご利用されることをお勧めします。 |
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(6) |
清掃業者と事故対応チーム |
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これらはいずれもADECの認可を得なければなりません。現在現地業者及び全米規模の業者を含む多数の業者が認可申請中ないし申請準備中といわれています。最新の情報がご必要な場合は、当組合の各契約窓口にご紹介下さい。 |
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(7) |
検査及び演習 |
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ADECは船舶の州法遵守状況を確認するため本船を検査し、また事故対応計画の実効性を確認するため油流出演習を行う権限を有します。これら検査及び演習は予告される場合もされない場合もあります。 |