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2004/07/01

No.503 シンガポールにおける船舶差押え制度の改正について

| by:sysadmin
No503
2004年07月01日

シンガポールにおける船舶差押え制度の改正について



船舶差押え制度につき、シンガポール高等法院の海事部門が2004年4月1日付で法令を改正し、裸傭船者に対するクレームについて船舶の差押えが認められることとなりました。シンガポールの弁護士事務所Holman,Fenwick & Willanから情報が寄せられましたので、当組合の試訳とともに、同事務所からのメッセージをご参考に供します。

以上

<日本船主責任相互保険組合>

シンガポール高等法院海事部門は今般、あるクレームにつき、当該クレームを受ける当事者が裸傭船している船舶の差押えを認めることとした。これまでは裸傭船者がクレームを受ける当事者の場合、クレーマントが裸傭船のごとき賃借船舶を、差し押えることを認めていなかった。従って、裸傭船船舶に物品やサービスの供給者や、荷主が、その船舶を支配する者あるいは契約当事者としての裸傭船者に対してクレームする場合に問題となっていたが、シンガポール法のもとでは、クレームを受ける当事者が所有する船舶しか差し押さえできなかった。

今般、高等法院(海事部門)法令が改正され、裸傭船の船舶でも、要件を満たせば、裸傭船者に対するクレームの担保として、その船舶を差し押さえることができることとなった。この改正により、シンガポール海事法は、英国や香港、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシアといったコモン・ロー諸国において既に採択された立場、また1952年 (Brussels) 及び1999年 (Genoa)アレスト条約に表される国際的海事慣行の共通理解と一致するものとなった。

この改正は、従来のシンガポール海事法の抜け穴を塞ぐこととなる。旧法のもとでは、船舶を支配する場合、船舶所有者でなく裸傭船者となることによって、シンガポールでの船舶差押えを有効に回避できた。船舶の運航者としての裸傭船者に対する正当なクレームや担保としての船舶差押えの真正な根拠をもって供給業者や荷主が船舶を差し押さえても、後にその船舶が裸傭船されていたと判明すれば、それまでに要した時間や費用は無駄となり、その行為は無に帰すことになった。

この改正は、クレーム発生に関連した船舶の差押えについてのみ関係する。すなわち、物品やサービスが供給されたり、貨物運送に供された船舶がクレームを起こした場合である。原因(クレーム)の発生時点で、クレームを受ける当事者はその船舶の所有者あるいは裸傭船者、またはその船舶を占有あるいは支配する者でなければならないことは、従来と変更はない。差押えが実行される時点、すなわち令状が発せられた段階で、クレームを受ける当事者はその船舶の所有者あるいはその船舶の裸傭船者でなければならない、とするのが変更点である。この「あるいは・・・・・裸傭船者でなければならない」の追加によって、船舶差押えの範囲が拡大された。

姉妹船に対する差押えに関して変更はない。クレーム発生に関連した船舶以外の船舶(他船)を差し押さえるには、依然として、クレームを受ける当事者が差押えの時点でその他船の所有者でなければならない。換言すれば、クレーマントは、クレームを受ける当事者となる裸傭船者が所有する他船であれば、差し押さえることができる。しかしながら、クレームを受ける当事者となる船舶所有者や裸傭船者が裸傭船する他の船舶を差し押さえることはできない。

裸傭船船舶に対する(対物)訴訟で勝利したクレーマントは、その船舶の所有者が(対人として)そのクレームに責任を負わないにもかかわらず、その船舶の競売代金から損害賠償を受ける資格を有する。斯かる船舶所有者は、競売代金が損害賠償額に満たなくても、その不足額につき責任を負わない。所有者の責任は、船舶の喪失(場合によっては差押え解除のための保証額)に限定される。

船舶差押えに関する法制度の改正は、2003年4月に法務長官室が公表した協議書の中で提言されている。この協議書では、改正の背景やそれにまつわる議論が述べられ、他国の海事法制度や国際海事慣習の状況も論じられている。
今回の法改正についてより詳細に知りたい方は、http://agcvldb4.agc.gov.sg/agc/Consultation%20Paper%20-%20Apr%2003(2).docから協議書全文をご覧頂けます。

以上


添付ファイル:AttachmentNo.503.DOC
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