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EUの対ロシア制裁-第21次パッケージ

2026/07/30 第26-009号

2026年7月23日、EU理事会は、理事会規則第833/2014号と第269/2014号を改正し、ロシアに対する制裁措置に関する第21次パッケージを採択しました。これらの措置は、理事会規則第2026/1848号理事会実施規則第2026/1843号理事会規則第2026/1844号および理事会決定第2026/1845号により施行され、EU官報に公示されました。EU理事会のプレスリリースはこちら、欧州委員会のFAQsはこちらでご覧いただけます。

 

組合員が留意すべき優先事項として、EUの制裁指定基準が拡大され、シャドーフリート船舶にサービスを提供する船舶が含まれるようになりました。本パッケージは、ロシアの94の銀行・金融機関を含む170の事業体および48の個人の制裁指定(単一のパッケージとして過去4年間で最多)、ならびに分野別措置、取引措置、金融措置および制裁迂回防止措置により構成されています。

 

重要なポイント

  • シャドーフリート船舶の制裁指定の拡大:新たに41隻の船舶が指定され(理事会規則第833/2014号を改正する理事会規則第2026/1848号に基づく)、制裁対象船舶の総数は670隻を超えました。これには、上述の拡大基準により指定された、制裁対象船舶に定期的に燃料を補給したとされる給油船5隻が含まれます。
  • EU加盟国に対して、抑留したシャドーフリート船舶上の貨物を没収・売却する権限を付与。
  • LNGタンカーの売却:船主は今後、LNGタンカーの第三国への売却について、自社が所在するEU加盟国に通知しなければなりません。欧州委員会は、2026年10月25日までに、LNGタンカーのロシアへの売却を全面的に禁止するかどうかを検討します。全面禁止が導入された場合、売主は、第三国に売却された船舶がロシアの利害関係者に転売または譲渡(代理所有を通じたものを含む)されないようにするための合理的な措置を講じることも義務付けられます。
  • LNG取引:2022年2月24日より前に締結された長期契約に基づいて、ロシアLNGを引き続き第三国に輸送することを許可する1年間の更新可能な適用除外が設けられました(ただし、年間数量が2025年の水準を超えないことが条件)。なお、2027年1月1日からのEUへの輸入禁止を含め、以前合意されたロシアLNGに関するその他の制裁措置に変更はありません。
  • プライスキャップ:上限価格の自動更新制度が2027年7月15日まで停止され、ロシア産原油の上限価格は1バレルあたり44.10米ドルに維持されます。
  • 取引禁止の追加:ロシアの2港と4空港、ジョージアの精製所、石油トレーダー5社ならびにロシアとベラルーシの精製所が新たに制裁指定されました。
  • ロシア取引に従事する老齢タンカーを登録するために使用されていた詐欺的な船舶登録ネットワークの背後にいる中心人物と特定された個人の制裁指定。

 

シャドーフリートと船舶の制裁指定
新たに41隻の船舶が制裁指定され(理事会規則第2026/1848号に基づく)、制裁対象船舶の総数は670隻を超えました。新たに指定された船舶には、プライスキャップ制度を回避しているとされる非EUタンカー、ロシアのエネルギー部門を支援する船舶、軍事装備を輸送する船舶および占領下のウクライナ領土から持ち出された穀物を輸送する船舶が含まれています。制裁対象船舶は、引き続きEUへの入港禁止および保険を含む幅広い海事サービス提供禁止の対象となり、当該船舶が関与する船舶間移送や貨物輸送も禁止されます。

 

制裁指定基準が拡大され、シャドーフリートに対して船舶間移送や燃料補給等のサービスを提供する船舶も対象となりました(理事会規則第2026/1848号により改正された理事会規則第833/2014号のArticle 3s(2))。これに基づき、制裁対象船舶に定期的に燃料を供給したとされる給油船5隻が指定されました。また、制裁対象の海運業務を支援するために人員を派遣したとされる船員派遣会社等、シャドーフリートのエコシステムに関連する8事業体と1個人も指定されました。

 

新たな規則により、EU加盟国は、抑留したシャドーフリート船舶上の貨物を没収・売却することができるようになりました。

 

船舶登録
ロシア取引に従事する老齢タンカーに船籍書類を提供したとされる船舶登録ネットワークの背後にいる中心人物と特定されたインド国籍の個人が制裁指定されました。このネットワークは、ドミニカ、ガイアナ、サモア、ミクロネシア、エスワティニおよびラオスにおける船舶登録手続きとの関連が報告されています。いくつかの旗国当局は承認を取り消したか、または当該登録手続きを否認したと報告されており、IMOは関連する登録のいくつかを虚偽または無効であると宣言しています。デューデリジェンスの一環として、船籍の有効性を確認することが重要です。

 

LNGに関する措置
船主は今後、LNGタンカーの第三国への売却について、自社が所在するEU加盟国に通知しなければなりません(Article 3qa)。欧州委員会は、2026年10月25日までに、LNGタンカーのロシアへの売却を全面的に禁止するかどうかを検討します。当該禁止が導入された場合、売主は、第三国に売却された船舶がロシア利害関係者に転売またはその他の方法で譲渡(代理所有を通じたものを含む)されないように合理的な措置を講じることも義務付けられます。

 

2022年2月24日より前に締結された長期契約に基づいて、EUの事業者がEU域外の買主にロシアLNGを引き続き輸送することを許可する1年間の更新可能な適用除外が合意されました。ただし、年間数量が2025年の水準を超えないことが条件とされています(Article 3ra)。この適用除外は、当該基準を満たすあらゆるEUの事業者が利用可能であり、単一の企業に限定されるものではありません。

 

長期契約(2025年6月17日より前に締結され、期間が1年を超える契約)に基づく、ロシア産またはロシアから輸出されるLNGのEUへの輸入に対する2027年1月1日からの包括的な禁止を含め、以前合意されたロシアLNGに関するその他のEUの制裁措置に変更はありません。

 

第20次制裁パッケージで導入されたLNGターミナルに関するサービスの提供禁止が、ロシアとEUの事業者だけでなく、ロシア企業によって支配されている非ロシアの第三国の事業者にも適用されることが明確にされました(Article 3rb)。

 

既存の日本向けのサハリン2の適用除外は2028年3月31日まで延長され、新たに韓国向けについても同日までの適用除外が認められました。

 

プライスキャップ制度
ホルムズ海峡封鎖による影響を受け、ロシアの石油販売による収益を引き続き抑制するため、上限価格の6か月ごとの自動更新制度(第18次制裁パッケージで導入)が2027年7月15日まで停止されます(Article 3n)。これにより、ロシア産原油の上限価格は1バレルあたり44.10米ドルに維持されます。この停止措置は、例外的な市場の動向があった場合には、その前に見直される可能性があります。

 

第20次制裁パッケージの下で確立された、ロシア原油・石油製品を輸送する船舶に対する海事サービスの提供を全面的に禁止するための法的根拠は引き続き有効ですが、それを発動する決定はまだなされていません。

 

港湾、精製所および取引禁止
第20次制裁パッケージで指定されたMurmansk港とTuapse港に加えて、ロシアの2港(OlyaとVysotsk)および4空港に取引禁止が拡大されました。ロシア原油の取引と精製に従事するジョージアのKuleviにある精製所に対しても、6か月の猶予期間を条件として、取引禁止が課されました。

 

石油部門では、ロシアの3精製所、ベラルーシの主要な精製所およびベラルーシの石油製品をロシアで販売するために設立された企業を含む18事業体と1個人が制裁指定されました。ロシア原油・石油製品の購入禁止を妨害したとして、アラブ首長国連邦に拠点を置くNexus Oil Tradingを含む石油トレーダー5社に対しても取引禁止が課されました。

 

その他の措置
本パッケージは、上述の他にも、ロシアの銀行と暗号資産部門に影響を与える取引禁止と資産凍結の拡大、ロシアの軍産複合体を対象とした制裁指定と輸出制限の追加(長距離ドローンに使用される部品を含む)、特定の金属と鉱石の新たな輸入禁止、ベラルーシに対する同様の措置、ならびにロシアの裁判所の判決に対するEU事業者向けの法的保護の強化等、幅広い措置を導入しています。

 

制裁違反の取引には保険が適用されませんので、組合員におかれましては、制裁リスクが高い取引を行う前に、関係者、貨物、船舶、その他のサービスプロバイダーについて、取引全体を通じて徹底的なデューデリジェンスを行い、その調査結果を記録に残すことを強く推奨いたします。

 

国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。