船舶における閉囲区画立入に関する改正勧告(MSC.581(110))への対応について
一般財団法人日本海事協会(ClassNK)から、船舶における閉囲区画立入に関する改正勧告への対応について情報を入手いたしましたので、以下のとおりご案内します。
2025年6月に開催された第110回海上安全委員会(MSC 110)において、船舶における閉囲区画立入時の安全性向上を目的とした「船舶における閉囲区画立入に関する改正勧告」が、決議 MSC.581(110)として採択されました。
本決議は、これまでの決議 A.1050(27)に替わるものであり、閉囲区画立入に伴う死亡事故の防止を目的として、定義、リスク評価、大気計測、CO2管理、緊急対応計画等を明確化しています。
改正内容につきましては、ClassNK発行のテクニカルインフォメーションをご参照ください。
今回の改正勧告を受け、改めて閉囲区画作業における安全確保について注意喚起いたします。事故の多くは機器の不具合だけでなく、手順の省略や油断といったヒューマンファクターに起因しています。過去の事故教訓に基づき、以下の点にご留意ください。
1.逸脱の常態化への警戒
- 多くの事故調査で明らかになるのは、不安全な行動が一度きりの過ちではなく、習慣化していたという事実です。「前回も手順を省いたが問題なかった」「急いでいるから保護具を省略しても大丈夫だろう」という小さな逸脱が繰り返されるうちに、それが組織内で「通常の手順」として誤認されるようになります(逸脱の常態化)。
- この「見えないリスク」を断ち切るには、基本手順を毎回確実に遵守する強い規律と、同僚同士で注意し合える安全文化の醸成が不可欠です。
2.リスクアセスメントの徹底と船長の検証
- リスクアセスメントは、各部の責任者・安全担当者が実施し、その内容を船長が検証・承認するプロセスを徹底することが肝要です。
- 船長は、気象海象、船体動揺、他作業との干渉、要員の疲労度などを総合的・俯瞰的に判断し、最終的な許可を与えるプロセスを形骸化させないよう、運用を確実にすることが求められます。
3.作業許可とストップワークオーソリティ
- 作業許可は、単なるチェックリストの作成作業ではありません。船の安全最高責任者である船長による最終確認と許可です。
- 一方で、ストップワークオーソリティは、ランクに関わらず全ての乗組員に与えられた権利であり義務です。少しでも危険を感じた場合は直ちに作業を停止し、船長は、安全のために作業を止めた乗組員を支持し、不利益な扱いをしないことを保証する必要があります。現場の船員が「安全ではない」と感じた場合、直ちに作業を停止できる文化を醸成することが、事故防止の最後の砦となります。
4.大気計測の落とし穴と確実な実施
- ガス検知器の信頼性は生命線です。メーカー指定の校正に加え、使用直前の動作確認を必ず実施する必要があります。
- 閉囲区画内の危険ガスは、比重によって滞留場所が異なります。入口付近の計測だけで安全と判断せず、延長チューブ等を使用し、上部・中部・底部の各層を慎重に計測する必要があります。
- 換気は入域前だけでなく作業中も継続し、常に新鮮な空気が循環する状態を維持することが不可欠です。
5.救助活動時の二次災害防止
- 過去の死亡事故の多くにおいて、倒れた同僚を助けようとした救助者が、呼吸具を装着せずに無防備に入域し、二次災害の犠牲となっています。
- 非常時には感情を抑え、定められた救助手順を厳守することこそが、結果として要救助者を救う唯一の道であることを、訓練を通じて浸透させることが重要です。
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