「Force Majeure(不可抗力)条項」に関する英国最高裁判決
英国最高裁は、「reasonable endeavours(合理的な努力)」という文言を含む「force majeure(不可抗力)条項」の適用について争われた事件で、不可抗力となった事態を克服するために合理的な努力をする当事者の義務は、契約にその旨の明確な文言がない限り、契約外の履行の申し出を受け入れることを義務付けているものではないと判示しました。
本件はロンドンの仲裁人の判断が英国裁判所の第一審で覆り、第一審判決が控訴審で覆り、さらに控訴審判決が最高裁で覆った興味深い事例です。この判決について、当組合のSenior Legal Adviserを務めるWilliam Turnerの解説を添付資料のとおりご紹介いたします。
(事案の概要)
船主MUR Shipping BVと傭船者RTI Ltdは、ボーキサイトを運送するCOAを締結した。運賃はUSDで支払うと定められていた。COAには「force majeure(不可抗力)条項」があり、同条項には「reasonable endeavours(合理的な努力)」によって克服することができない場合を除き、不可抗力として認められないとの規定があった。COA履行中に、傭船者の親会社が米国の制裁対象となったため、傭船者はUSDで運賃を支払うことが出来なくなった。傭船者はEURでの支払いを提案したが、船主はこれを認めず不可抗力条項によってCOAの履行を中断した。傭船者は船主が不可抗力となった状況を克服するための「reasonable endeavours(合理的な努力)」を怠ったので「force majeure(不可抗力)条項」に依拠することができないとして争った。
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