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ニュース

英国の対ロシア制裁に関する最新情報

2026/05/29 第26-003号

はじめに

2026年5月20日、英国のRussia (Sanctions) (EU Exit) (Amendment) Regulations 2026(以下「修正規則」)が説明覚書とともに施行されました。本特別回報では、この修正規則の概要をご案内します。

 

修正規則により、ロシア産液化天然ガス(LNG)の海上輸送の禁止、制裁指定船舶に対する包括的なサービスの提供禁止による船舶制裁体制の強化、ロシア産原油から精製された石油製品の輸入禁止、ロシアへの輸出・ロシアからの輸入禁止品目の拡大、ならびにロシア関係者に対する建設サービスの提供禁止が導入されます。

 

主要なポイント:

  • 三国間貿易を含む、ロシア産LNGの海上輸送の禁止。ただし、期限付きの限定的な例外およびライセンス制度が設けられています。
  • 制裁指定船舶に対する広範なサービス(技術、用船、保険など)の提供禁止措置の導入により、船舶に対する制裁体制が拡大され、LNGと石炭輸送も対象となります。
  • 第三国においてロシア産原油から精製された石油製品の英国への輸入の禁止。ただし、軽油とジェット燃料は対象外です。
  • 工業製品、化学品、金属および先端技術(AI、量子、半導体を含む)全般にわたる貿易制限の拡大。ただし、2026年11月20日までの猶予期間が設けられています。
  • ロシア関係者に対する建設サービスの提供が禁止され、既存の専門的サービスに対する制限が拡大されます。
  • 差し押さえられた資産、制裁対象者またはロシア関係者に関連する取得を禁止する輸送資産に対する禁止措置
  • 限られた例外を除き、ロシア産ウランの輸入、取得、第三国への供給および関連サービスに対する禁止措置

 

ロシア産LNGの海上輸送

修正規則により、Russia (Sanctions) (EU Exit) Regulations 2019に新たにChapter 4LAが挿入され、ロシアを原産地または発送地とするLNG(CNコード2711 11 00)を、船舶によりロシアから第三国に、または三国間で供給・提供することが禁止されます。この禁止措置は、当該LNGを船舶により直接・間接的に供給・提供する者に適用され、当該LNGを運送する船舶または当該LNGの移送を受ける船舶を所有、支配、用船または運航する者も対象となります。STS移送は、明示的にこの禁止措置に含まれています。

 

関連して提供される金融サービス(保険を含む)、資金および仲介サービスの提供には、別途禁止措置が適用されます。

 

修正規則には、2025年6月17日より前に締結された長期契約(契約期間が1年超)に基づいて生じる義務に対する例外が設けられており(regulation 60L)、契約条件が2025年6月17日より後に実質的に変更されていないことを条件として、2027年1月1日まで引き続き海上輸送および関連する金融サービスを提供することが認められます。容認される契約条件の変更事項には、数量の削減、価格・手数料の引き下げ、守秘義務に関する修正、運航手続きに関する変更、住所変更、グループ内移転、裁判または仲裁手続きにより要求される修正があります。

 

上記禁止措置は、EUの第19次制裁パッケージにおけるEU理事会規則第833/2014号第3ra条の下で導入されたLNGの海上輸送に対する制裁措置と同様のものです。

 

デリバティブ取引および関連する仲介と支払い処理には、別途例外が適用されます。また、人の健康・安全、インフラまたは環境に深刻かつ重大な影響を及ぼす可能性のある事象を緊急に防止または緩和するために必要な行為についても、例外が認められています。

 

貿易制裁実施局(OTSI)は、LNGの海上輸送に関する一般商業ライセンスを発行し、短期契約(1年を超えないもの)に基づき、サハリン2またはヤマルLNGターミナルから船舶により第三国に、または三国間でLNGを供給・提供することが2027年1月1日まで許可されます。これに関与する者は、開始から30暦日以内にOTSIに通知しなければなりません。

 

船舶に対する制裁体制の強化

船舶の制裁指定に関する枠組みも拡大されます。これまでは、船舶が制裁指定されると、英国の港への入港禁止、移動制限、抑留および英国籍登録の禁止措置が科されましたが、新たな規則により、指定船舶に関する取引および輸送に対する制裁が導入されます。

 

新たな規則の下では、制裁指定船舶に対する技術的援助、乗組員サービス、運航サービス、用船サービス、仲介サービス、金融サービス(保険を含む)または資金の直接・間接的な提供、指定船舶の取得、販売、移転または供給に関するサービスの直接・間接的な提供、指定船舶に関するサービスの直接・間接的な調達(指定船舶の使用を伴うサービスを含む)、ならびに指定船舶の用船・運航が禁止されます。

 

船舶を制裁指定する根拠が拡大され、既存の石油・石油製品に加えて、ロシア産LNGおよびロシア産石炭・石炭製品を運送する船舶も対象となります。

 

上述の説明覚書には、指定船舶に関する新たな取引制裁は、英国制裁リストに掲載されている既存の指定船舶に対して自動的に適用されるわけではなく、英国政府は、新たな制裁措置を課すべきかどうかを検討するため、既存の指定船舶を見直す可能性があると書かれています。

 

精製石油製品の輸入禁止

本規則に新たにChapter 4IBが挿入され、第三国においてロシア産原油(HSコード 2709)から精製された石油製品(HSコード 2710)を英国に輸入することが禁止されます。関連する技術的援助、金融サービスおよび仲介サービスも禁止されます。

 

OTSIは、一般商業ライセンス(GBSAN0004)を発行し、CN 2710 19 42およびCN 2710 19 44(軽油)ならびにCN 2710 19 21(ジェット燃料)に対して例外を認めています。このライセンスは無期限ですが、いつでも撤回される可能性があり、撤回される場合、国務大臣は4か月前の通知を行うよう努めるものとされています。

 

英国の上記措置はEU制裁の内容とは異なり、EUの方は、第18次制裁パッケージの下で、2026年1月21日から、限られた例外を除き、ロシア産原油から精製された石油製品を第三国からEU域内に直接・間接的に購入、輸入または移転することを禁止しています。

 

ロシア産ウランの輸入・輸送禁止

修正規則に新たにChapter 4KAが挿入され、ロシアを原産地または発送地とするウランの英国への輸入、取得およびロシアから第三国への供給・提供が、関連する金融サービス(保険を含む)、資金、技術的援助および仲介サービスの提供とともに禁止されます。2026年5月20日時点で稼働していた第三国の原子力施設の運転を継続するために必要な行為および同日より前にロシアから輸出され第三国に保管されているウランについては、限定的な例外が適用されます。

 

その他の措置

ロシアへの輸出およびロシアからの輸入が禁止される品目が拡大されます。説明覚書には、新たに輸出が禁止される次の4項目が記載されています。

  • 工業用化学品、金属および機械を含む、EUにより制裁対象とされている品目
  • 金属および炭素繊維製品を含む、ウクライナ政府により制裁が推奨されている品目
  • 暴動鎮圧剤に使用される化学物質
  • 量子、AI、半導体およびエンジニアリングバイオロジー技術に関連する部品や材料を含む、新興技術関連の品目

 

禁止品目に関する既存の契約については、2026年11月20日までの猶予期間が設けられています。

 

修正規則では、建築およびエンジニアリングサービスに対する既存の制裁を補完するものとして、ロシア関係者に対して建設サービスを提供することが禁止されます。

 

また、Russia (Sanctions) (EU Exit) Regulations 2019の下で抑留指示の対象とされた輸送資産を、制裁対象者もしくはロシア関係者から、またはその利益のために取得することが禁止されます。

 

情報源

修正規則の全文は、こちらでご覧いただけます。また、一般商業ライセンスおよび関連するガイダンスは、GOV.UKに公開されています。

 

制裁違反の取引には保険が適用されませんので、組合員におかれましては、制裁リスクが高い取引を行う前に、関係者、貨物、船舶、その他サービスプロバイダーについて、取引全体を通じて徹底的なデューデリジェンスを行い、その調査結果を記録に残すことを強く推奨いたします。

 

国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。