【続報】EUと英国による最近の対ロシア制裁-インフラ取引禁止(EU理事会規則833/2014の第5ae条)に関するEUのFAQ
2025年3月12日付特別回報第24-023号では、EUが採択した対ロシア制裁第16次パッケージについてご案内しました。その中で、同パッケージには、附属書XLVIIのパートAに記載された港湾、すなわちUst-Luga、Primorsk、Novorossiysk、AstrakhanおよびMakhachkalaとの取引を禁止するEU理事会規則833/2014の第5ae条が含まれていることをお知らせしました。第5ae条第3項には、この禁止措置の適用除外が網羅的に規定されています。ロシアからの輸出が許可されている特定の貨物(例えば石炭)に対する適用除外規定がなかったことから、国際P&Iグループは当該貨物の輸送が引き続き許可されるのかどうか確認していました。
2025年3月20日、EUは第5ae条で導入されたインフラ取引禁止に関するFAQを公表しました。
FAQは、第5ae条第3項で明示的に適用除外とされている場合を除き、リストに記載された港湾から商品を輸出することはできないことを明確にしています。
「4. リストに記載されたロシアの港湾および閘門は、輸入禁止の対象ではないロシア産の商品を輸送するために使用できますか?(最終更新日:2025年3月20日)
第5ae条は、広範な取引禁止を規定しています。原則として、EUの事業者は、第5ae条第3項で明示的に適用除外とされていない製品に関する取引に関与することはできません。これには、輸入禁止の対象ではない商品も含まれます。附属書XLVIIに記載されていない他のロシアの港湾は、第三国への輸送またはEUへの輸入(当該商品が輸入制限の対象ではない場合)のために使用することができます。」
また、石炭についても同じ立場が示されています。
「5. リストに記載されたロシアの港湾および閘門は、ロシア原産の石炭を第三国に輸送するために使用できますか?(最終更新日:2025年3月20日)
EUは、EU制裁が正当な貿易や人々の交流に悪影響を及ぼしたり、世界の第三国、特に後発開発途上国の食料およびエネルギーの安全保障に影響を与えたりすることを回避することを約しています。また、EU理事会規則2025/395(「第16次制裁パッケージ」)の前文29項は、正当な貿易への悪影響の回避に言及しています。EU理事会規則833/2014の第5ae条(2025年2月24日のEU理事会規則2025/395によって改正)は、これらの目的に照らして解釈する必要があります。EUの事業者は、世界のエネルギー安全保障を確保するために、ロシアの石炭を第三国に輸送することが許可されています(リストに記載された商品の輸入、購入および移送に関するFAQのQ.2も参照)。しかし、EUの事業者はリストに記載された港湾との取引に関与することはできず、ロシアの石炭を第三国に輸送するためには、リストに記載されていない港湾で積載しなければなりません。」
FAQでは、硫黄の輸送についても重要な明確化を行っています。
「8. 第5ae条第3項(d)の適用除外規定は、肥料の生産のための原材料または成分(硫黄など)の購入、輸入および輸送にも適用されますか?(最終更新日:2025年3月20日)
適用されます。硫黄を含む原材料または成分が肥料として、または肥料を生産するための原材料として使用され、かつそれらの購入、輸入および輸送がEU規則833/2014で別途禁止されていない場合に限り、第5ae条第3項(d)に基づく取引は許可されます。」
またFAQでは、EUは制裁を域外適用しないという立場が示されています。つまり、EU域外の事業者がリストに記載された港湾と取引することは認められています。
「9. 当該取引禁止は、第三国の国民・事業体とリストに記載されたロシアの港湾・空港との間の取引にも適用されますか?(最終更新日:2025年3月20日)
適用されません。EU理事会規則833/2014の適用範囲は、第13条に定められています。EUの制裁は、域外適用されません。同規則は、とりわけ、EU領域の内外に所在するEU加盟国の国民およびEU加盟国の法律に基づいて設立された法人、事業体または団体に適用されます。つまり、第三国の国民・事業体と附属書XLVIIに記載された港湾・空港の間のEU域外での取引は、EU制裁の対象に含まれません。」
FAQはさらに、EUの事業者が引き続き非EU船舶にサービス(保険の提供を含む)を提供することができることを明確にしています。
「11. EUの事業者が附属書XLVIIに記載された港湾に寄港する船舶にサービスを提供したら、第5ae条の対象となる事業体と間接的に関与することになりますか?(最終更新日:2025年3月20日)
附属書XLVIIに記載された港湾に寄港した船舶へのサービスの提供は、当該港湾との直接または間接的な取引ではないため、第5ae条で禁止されません。欧州委員会のFAQは、EU理事会規則833/2014の第5aa条における国有企事業体に関する取引禁止について、リストに記載された事業体が所有する港湾に寄港する船舶への保険の提供は、この事業体との直接または間接的な取引ではないことをすでに明確にしています(統合FAQのG.5のQ.6を参照)。同様に、リストに記載された港湾に寄港する船舶への他のサービスの提供(例えば、補油サービスの提供、貨物の積み降ろしなど)も、直接または間接的な取引にはあたりません。」
ただし、EUの事業者が適用除外規定に該当しないで、リストに記載された港湾に寄港した場合は、クラブは当該港湾との直接または間接的な取引に関与する(例えば、クレームに関する支払いを行う)ことはできないでしょう。
EUはまた、寄港後の報告義務の観点からEU事業者と考えられる事業体を明確にし、またこの要件は保険会社には適用されないことを示しました。
「14. 第5ae条の適用除外に該当する取引を報告する必要があるのは誰ですか?(最終更新日:2025年3月20日)
EUの事業者は、第5ae条第3項または第4項に従って締結された取引について、同条第5項に従い、締結後2週間以内に、自己がそこに法人を設立しているか、そこの法律に基づいて設立されている加盟国の管轄当局に通知する必要があります。一般的に、取引に関与する事業者(例えば、リストに記載された港湾で合法的な貨物を積み込む船舶の管理会社や、リストに記載された空港に緊急着陸する必要があった航空会社など)に報告義務があります。
第5ae条第3項で適用除外とされている非制裁商品をロシアから輸入するEU業者は、港湾との直接または間接的な取引がないと考えられる場合(Q.11を参照)は、当該輸入を報告する必要はありません。リストに記載された港湾との直接または間接的な取引がある場合は、取引を報告する必要があります。」
ロシアが関与する取引は、重要な法的規制の対象となっています。組合員におかれましては、適用される制裁に違反する取引については、保険てん補を受けられないことにご留意ください。また、制裁リスクの高い取引を行う前に、関係者、貨物、船舶およびその他のサービス提供者に関し、取引全体の徹底的なデューディリジェンスを行い、その調査結果を記録に残すことをお勧めいたします。
国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。