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補償状(Letter of Indemnity)-IG標準書式文言の改訂

2023/09/13 第23-010号
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国際P&Iグループ(IG)の標準補償状(LOI)書式(B/L原本の提示なしでの貨物引き渡し、および/またはB/Lに記載されている港または場所以外での貨物引き渡しの際に提出されるもの)の見直しが最後に行われたのは2010年でした。リスクを伴うにもかかわらず、この書式は依然として広く利用されています(また、一部の取引においては、LOIと引き換えに貨物を引き渡すことがほぼ慣習となっているものもあります)。最近の多くの英国裁判所判決ではLOIの全体的な有効性が支持されていますが、一部の当事者が(LOIに基づく)契約上の義務を免れようとする試みもみられます。

 

とはいえ、こうした文書をそのままにすることはできないことから、近年、IGの作業部会では、用船者・船主の代表者とBIMCOの協力を得て、LOI文言の見直しを行ってきました。その結果、IGは本日、標準書式の改訂版(本特別回報に添付)を公表いたします。IG加盟クラブは、特に、英国商事裁判所を退官したNigel Teare判事からLOI文言に関する支援と助言を得たことに感謝しています。

 

以前の版とは異なり、改訂文言には、個々の変更点とその根拠に関するExplanatory Notes(解説)が付されています。この解説は、本特別回報に添付されています。重要な点として、新しい文言には、関連する状況下でLOIを受け入れた場合、P&I保険によるカバーは損なわれること、組合員の責任は、クラブの理事会がその裁量で適切であると判断した場合にのみに保険てん補されることを注意喚起すべく、目立つ位置にその旨が記載されています。標準文言の使用は、カバーに関する立場を変更するものではありません。このような状況から、LOIを受け入れた組合員は、LOI発行者である相手方の財務状況を十分に確認することを強くお勧めします。

 

LOI文言の見直し作業は、IGの船荷証券委員会を通じて行われました。同委員会の検討対象には、電子船荷証券も含まれています。文言の見直しを行っている間に、電子船荷証券への関心も高まってきました。電子船荷証券を採用したオペレーターからは、電子船荷証券を利用することで、LOIに頼る必要性が減少し、船主が負う商業的リスクが取り除かれ、用船者の潜在的責任の負担が軽減されたとの報告を受けています。

 

すべてのIG加盟クラブは電子船荷証券の使用を支持しており、電子商取引システムがIGによって承認されている場合、紙の船荷証券の場合と同様のカバーが提供されます。本日現在、IGが承認している電子船荷証券のプラットフォームは10ありますが、この数は、特に電子取引の普及を反映する法制度が採用されるにつれて増加するものと予想されます。英国では、2023年9月20日から電子取引文書法が施行される予定です。英国法において、一定の基準を満たすことを条件に、電子船荷証券が紙の船荷証券と法的に同等であると認められるというのは非常に大きな進展です。これにより、法律施行以前に存在した法的空白を克服するために現在のプラットフォームが利用せざるを得なかった多くの複雑な契約上の取り決めが不要になり、多くの大手運送事業者や荷主が同意している電子船荷証券の利用が飛躍的に増加する見込みが高まっています。

 

しかしながら、それまでの間は引き続きLOIが必要とされるでしょう。IGはこの改訂文言により、紛争が起こる余地が一層狭まるものと確信しています。

 

国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。