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2002/05/31

第02-002号 アメリカ合衆国におけるMARPOL規則の違反に対する刑事責任 とPort State Securityの現状について

| by:sysadmin
第02-002号
2002年05月31日
外航組合員各位

アメリカ合衆国における
MARPOL規則の違反に対する刑事責任 と
Port State Securityの現状について



2002年5月10日、東京にて当組合の後援による当組合米国法務代理人Keesal Young & Loganの海事セミナーが開催され、組合員各位より大勢のご参加を頂き、成功裏に幕を閉じました。セミナーの内容はタイムリーなもので、特に米国に配船されている組合員各位にとりましては、非常に有益なものであったことと存じます。ご出席できなかった組合員各位にもご高覧に供したいと考え、特に参考になりそうな、アメリカ合衆国におけるMARPOL規則の違反に対する刑事責任の訴追の動きとU.S. Port State Securityの現状に関する講演のまとめを、添付のとおりご案内申し上げます。

米国では昨年の9月11日に発生した同時多発テロ以降、Port State Controlが強化されております。その影響もあり、最近USCGのMARPOL違反の取締りも強化されています。ご既承のとおり、大手客船運航会社Carnival Cruise Linesは米国内での海洋汚染嫌疑に対し、有罪を認め、罰金等US$18mを支払うこととなり、Royal Caribbian Cruise Linesも同様の嫌疑に対し、$27mの罰金を科されました。本年に入り、弊組合加入船におきましても、USCGの検査官による臨検の結果、油水分離器を通さずに油混じりのビルジを排出した嫌疑や、油記録簿の不実記載の嫌疑をかけられ、将来の罰金の担保のため、高額の保証状の要求がなされたケースが発生しました。組合員は保証状の手配の他、弁護士費用、サーベイ費用等多大な出費を余儀なくされ、潜在的な罰金やペナルティに直面しております。講演内容をご参考に、USCGからあらぬ嫌疑を受けぬよう、今一度、乗組員へMARPOL規則、Port State Control規則の遵守を徹底されるようお勧め致します。


なお、MARPOL規則の違反に対する刑事責任に関するセミナーで使用されたPower Point用資料(無料)をご希望の方は、電話、ファックス又はメールでお申し込み下さい。申込み先は次のとおりです。


  

東京本部損害調査部損調総括室
Tel: 03-3662-7219,Fax: 03-3662-7440,E-mail:claims-dpt@piclub.or.jp
神戸支部Tel: 078-321-6886,Fax: 078-332-6519,E-mail:kobe@piclub.or.jp
福岡出張所Tel: 092-272-1215,Fax: 092-281-3317,E-mail:fukuoka@piclub.or.jp
今治出張所Tel: 0898-33-1117,Fax: 0898-33-1251,E-mail:imabari@piclub.or.jp


以上


アメリカ合衆国におけるMARPOL規則の違反に対する刑事責任

Keesal, Young & Logan法律事務所
弁護士Mr. Herbert H. Ray, Jr.


アメリカ合衆国は船舶の油水分離器の使用や油記録簿の正確な記録に関するMARPOL規則の違反の取締りを強化し始めました。大手船主の何社かは虚偽の油記録簿をU.S. Coast Guard(USCG; 米国沿岸警備隊)に提出したことによる刑事罰クレームを解決するために$10,000,000以上の罰金を支払っています。この他に重い刑事罰の告訴に対し、裁判所で有罪を認めて、$1,000,000を超える罰金を支払って解決する司法取引をした船主もあります。罰金に加え、これらの船主は、自社や乗組員の責任防衛のために高額な弁護士費用や他の諸費用の支出を強いられ、また、船舶の運航スケジュールにも影響が出ました。重要なことは、船主の陸上管理部門が船員によるMARPOL違反に気付かぬ内に、潜在的な刑事責任に直面していることです。


USCGはport state control検査の際、外国船がMARPOL規則を遵守しているかどうかを調査します。USCGの調査員は油水分離器や配管に改造の跡がないかどうかを捜す訓練を受けています。彼らは油水分離器にバイパスを施こすようなホースやパイプ(注1)がないかを調査します。もしも、彼らがそのようなホースや油水分離器を改造したような証拠物を見つけた場合、油水分離器の排出パイプ側を開放し、油の付着がないかどうかを調査します。排出パイプやバルブから油が検出された場合、USCGは徹底的な強制調査を開始することでしょう。油記録簿・ログブックの検閲や船長・機関部員のインタビューなどを行ないます。


USCGの調査権は広く、調査が開始されると本船の長期遅延など船主に不都合を生じさせます。例えば、合衆国は乗組員を大陪審(注2)に召喚したり、重要参考人として拘留したり、調査期間中の米国からの出国を差し止めることができます。また、1回の違反行為に対し、最高$500,000の保証状を要求することができ、保証状提出まで本船の出港を差し止めることができます。更に、本船、船主に召喚状を送達し、船主に対し本船や本社の書類の提出を求めることができます。


合衆国は船主に罰金を課すために、船舶が合衆国領海内で油水分離器にバイパスを施して使用していたことを立証する必要はありません。乗組員が改竄された油記録簿をUSCGに提出しただけで、合衆国は高額な罰金や罰則を課すことができます。従って、もしも乗組員が油水分離器にバイパスを施して、油記録簿にバイパスの事実を記録せず、改竄した油記録簿をUSCGに提出した場合、合衆国は船主や乗組員を起訴することができます。


また、USCGは、調査中に虚偽の証言を行なった乗組員や他の乗組員や証人に虚偽の証言をさせた乗組員を起訴することができます。このような場合、合衆国は正義妨害罪や証拠偽造罪など重い罪を課します。


このような事態を避けるために、予め準備しておくべきことを船主に助言します。即ち船主が取るべき措置は、所有船・管理船の油水分離装置が改造されていないかしっかり調査すること、油水分離器のバイパスの禁止・油記録簿の正確な記録を会社方針として文書で配ること、そしてこの方針を会社が守らせることです。


万が一、貴社の船舶に合衆国がMARPOL規則違反の嫌疑をかけているとの通知を受けた場合、至急貴社と乗組員の利益を守るために弁護士を起用することが重要です。上記の通り、合衆国の調査中に乗組員や会社の取った行動が、多くの潜在的刑事告訴の対象となっています。合衆国の調査開始から弁護士を起用して貴社や乗組員をアシストさせることが、こうした合衆国の調査中の出来事に対する貴社の刑事責任を大幅に軽減することでしょう。

以 上


(注1)バイパスホースと配管の改造:両端にフランジの付いたflexible hose、油水分離器の配管や排出バルブに施されためくらフランジの存在がred flag(バイパスの有力な証拠品)とされる。そのフランジに油が付着していた場合はより疑いが強くなる。また、フランジのナット・ボルトが頻繁に回されていた痕跡もred flagとされている。
(注2)大陪審:刑事事件において、起訴を相当とするに足りるだけの証拠があるかどうかを審査する陪審で、felonyと呼ばれる重い罪で訴追するには大陪審の起訴によらなければならない。最近のMARPOL規則違反では、証人乗組員が大陪審に召喚されている。


U.S. Port State Securityについて

Keesal, Young & Logan法律事務所
弁護士Mr. John D. Giffin


2001年9月11日よりUS Coast GuardはPort State Controlと保安対策の実施方法を見直しました。以下は現在のUS Port State Controlの方針を要約したものです。しかしながら、各港長はその港の状況に則した適当な手段を取ることができる広い裁量権を持っていますので、Port State Controlと保安対策は港ごとに異なることがあるということに注意を払う必要があります。


A. 米国は保安問題につき細心の注意を払っている。Coast Guardはタンカー、ガス運搬船、旅客船のような危険度の高い船舶に特に注意を払っている。
B. 確立されたルールはなく、全てが流動的である。手順も個々のケースで変わり得る。
C. Coast Guardが危険度が高いと認識した船舶は入港前に立入り検査を受ける。それにより船舶は30−60分遅れることとなるが、場合によってはそれ以上遅れることもある。
D. 入港前通知は検査のためにNational Vessel Movement Centerに通報されることとなった。他国から米国に寄港する300トンを超えるあらゆる船舶は96時間(以前は24時間だったが)前に入港を通知することを義務付けられた。入港前通知が適切に行われない場合は船舶の入港が遅れることもある。
E. Coast Guardが従来行っていた四半期ごとの検査のような任意の検査を行うことはなくなった。
F. 1年ごとの検査は今後も行われる。Coast Guardは些細な欠陥と思われるものについてはあまり興味を示さないが、とりわけ事件や事故が報告された場合は船舶の書類や記録を今後も調査する。また、ある港ではCoast Guardの検査官は油水分離器とその関連器具について詳しい調査を行っている。
G. 船舶の機関士はバンカーやあらゆる種類の油の移動(船舶内のタンク間の移動を含む)や排出を正確にOil Record Bookに記録しなければならない。
H. 船舶の機関士は油水分離器、それに接続されているバルブやパイプが正しく機能していること、そして油や油水が法律に則って処理されることを確実にする必要がある。
I. 安全検査は引き続き実施される。
J. 危険度の高い船舶(クルーズ船、オイルタンカー、LPG船、LNG船のような)の回りにMoving SecurityZones(移動安全区域)が設けられた。ある港では全ての大型船舶、更には陸上施設にまでSecurityZones(安全区域)が設けられた。多くの船舶にはCoast Guardの小型監視船のエスコートがつく。
安全区域にはどんな種類の船舶であっても入ることは許されない。
K. 米国海軍の軍艦とCoast Guardの船舶の回りにMoving Naval Vessel Protection Zonesが設置された。全ての船舶は軍艦やCoast Guardの船舶の500ヤード内に近付いてはならない。軍艦は100ヤード内に近付くあらゆる船舶を攻撃するよう命令を下されているのである。


以上


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