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2005/06/14

第05-002号 1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書MARPOL − Oily Water Separators(油水分離装置)

| by:sysadmin
第05-002号
2005年06月14日
外航組合員各位

1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書MARPOL − Oily Water Separators(油水分離装置)


MARPOL − Oily Water Separators(油水分離装置)MARPOL規則は、本船が合法的に海上に排出できるビルジの油分濃度の限度を規定しています。ビルジタンクからのビルジ排出が許可されるためには、排出されるビルジの油分濃度がMARPOL規則に定められた上限(15ppm)を超過しないように、オイルフィルター装置(油水分離装置)付きの油排出監視制御装置が備えられていなければなりません。油水分離により発生する油分濃度が15ppmを超過するビルジあるいはスラッジは、本船の焼却炉で焼却するか港の貯蔵タンクに陸揚げしなければなりません。船主は、本船の航海日誌、油記録簿、焼却記録簿及びスラッジの陸揚げ記録を調査することにより、本船がMARPOL規則を遵守していることを常に確認しておかなければなりません。監督者は、本船上で処分しきれない最少限の廃油あるいはスラッジが残っているものと考えるのが当然です。

世界中の港湾当局は、MARPOL規則違反を犯し、不法に油を排出した若しくは排出した疑いがある船舶に対し、ますます厳しい姿勢を取っています。現在最も厳しいのはドイツ、アメリカ合衆国及びフランスの港湾当局であり、規則の違反に対し重い罰金が課されます。

国際グループクラブはMARPOL規則違反を見過ごすわけには参りません。偶発的油流出事故以外によるMARPOL規則違反によって課された罰金は、組合が特例として容認する場合以外にはてん補されません。特例が認められるためには、組合員は規則違反を回避するために合理的な手段が尽くされていたことを示し、それが組合を十分納得させるものでなければなりません。いずれにせよ、船主が知っていたもしくは当然知っているべき違反で、かつそのような違反を防止するために合理的手段を講じることを怠っていた場合には、組合はいかなる罰金や罰則もてん補致しません。

上記の通り、特例として容認された場合を除き、前述の油水分離装置の不適切な使用、あるいは機関室やその他の場所の廃物の処分・管理に関する記録保持を怠ったことによるMARPOL規則違反の罰金や罰則について、組合のてん補はありません。一般的に、特例によるてん補の可否の検討は、法的手続の終了後になります。

従って、関係当局による法的手続進行中に、組合が船主に代わって関係当局に保証状を発行する場合、保証金額と同額の現金又は銀行保証状による組合員からのfull counter securityが必要になります。更に、このような違反嫌疑の責任防衛のために組合が支出した費用に対しても組合へのsecurityが必要になります。組合は、法的手続において組合員の責任防衛のために助言、援助できる適当な法律事務所や専門家を組合員に紹介することができます。

アメリカ合衆国の沿岸警備隊(USCG)や司法省(DoJ)は、MARPOL違反の取調べと船主の犯罪訴追に躍起になっています。多くの犯罪訴追ケースでは、USCGやDoJは広範な法的権限を駆使しますが、ある分野においては、彼等は自己の権限を非常に拡大解釈しているように思われます。

アメリカ合衆国での犯罪捜査の根拠は、以下の事由のどれかである場合が多いようです。

  • アメリカ合衆国の油濁法違反
  • 不実記載(公用航海日誌、油記録簿など)
  • USCGへの偽証
  • 司法妨害(証拠隠滅)
  • 謀議

また、捜査のために、以下の手続が取られます。

  • 書類の召喚令状
  • 乗組員の事情聴取
  • 大陪審への召喚、出廷
  • 本船調査
  • 書類、機器の押収
  • 重要証人としての乗組員留置

これらの捜査の結果、刑事又は民事上の告発を受けたり、罰金に処されることがあります。

これらの捜査は、乗組員にとって極めて脅威であり、時としてうっかり見過ごしていた違反や些細な違反を隠そうとする過ちを犯すことにより、司法妨害といったもっと深刻な告発を引き起こすことがあります。DoJの犯罪訴追に、アメリカ合衆国の油濁法違反が関係することはほとんどなく、不実の記録を提出したことに基づく訴追が一般的です。USCGとDoJが最も頻繁に適用する法令は以下のとおりです。

  • The False Statement Act 18 USC 1001
  • Conspiracy 18 USC 371
  • Witness Tampering 18 USC 1505
  • Obstruction of Justice 18 USC 1512
  • Destruction of Evidence 18 USC 1519


これらの法令は高額罰金を課せると規定していますが、保証状提出に関し何ら規定しておりません。そのため、最近になってアメリカ合衆国当局は、MARPOL規則を国内法化したAct to Prevention Pollutionfrom Ships 33 USC 1901 (APPS)に基づく犯罪訴追を行なうようになりました。

APPSはアメリカ合衆国の領海内(沿岸から12マイル)での行為に適用され、当局は事件の捜査を旗国に任せることも、自身で取り扱うこともできると規定しています。もしも、APPSに基づいてアメリカ合衆国当局が自身で事件を取り扱う場合、1件の告発事由につき罰金額は最大US$500,000又は違反者の利得の2倍(あるいは与えた損害の2倍)のいずれか大きい金額となります。APPSは、保証状要求の根拠となる他、アメリカ合衆国当局に、違反を告発した者に高額な懸賞金を与える権限を与えています。これは、所謂"whistleblower(内部告発者)"法令であり、この法令は乗組員に内部告発を行なう強い動機付けとなっています。保証状の要求はClean Water Act, 33 USC 1321に基づいても行なえますが、同法はアメリカ合衆国の領海内で起こった漏油に対してのみ適用されます。また、アメリカ合衆国当局はAlternative Fines Actに訴えることもできます。

注意すべきことは、違反行為は通常アメリカ合衆国の領海外で行われているのでAPPSが適用されることがあまりないことと、APPS以外の法令には保証状に関する規定がないことです。なお、APPSの下では、保証内容に乗組員に関する保証、第三者による船主、乗組員、本船に対する書類送達の受取や書類の認証などを盛り込む必要はありません。

換言しますと、APPSの下でUSCGが要求できるのは金銭的な保証のみで、彼等が船舶拘留を解除する前にしばしば要求する他の多くの条件には法的根拠はありません。しかしながら、組合員側には一刻も早く本船を出港させたい差し迫った商業上の理由のために、ある程度譲歩せざるを得ない場合があるでしょう。

改めてMARPOL規則違反に関連した組合のてん補上の立場を確認します。法的手続進行中には、組合は組合員から現金又は銀行保証状によるcounter securityの受領なしでは、その違反に関する保証状を発行できません。もしも組合が組合員より、刑事又は民事訴追の責任防衛のために発生した費用の支払要請を受けた場合には、前記counter securityとは別に、組合員に同費用のsecurityをお願いすることになります。偶発的な事故による漏油を除き、一般的には本回報でご案内するMARPOL違反行為に関する組合のてん補はありません。例外は、法的手続が終了し、全ての事実が明らかにされた上で、組合が特例としててん補を容認した場合に限られます。

以上


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