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2012/09/24

第12-013号 PLRの発効について

| by:sysadmin
第12-013号
2012年09月24日
外航組合員宛

PLRの発効について


事故の際の海上旅客輸送者の責任に関する2009年4月23日付欧州理事会及び欧州議会の規則(EC) No.392/2009 (PLR)

2012年12月31日より、PLRが欧州連合(European Union, 以下EUという)及び欧州経済地域(European Economic Area, 以下EEAという)の全加盟国(註1)で適用されます。
基本的に、PLRは1974年の船客とその手荷物の海上運送に関するアテネ条約の2002年改定議定書(以下、条約という)及び条約実施のための戦争リスクに関する2006年IMO留保及びガイドライン(以下、ガイドラインという)の主要条項を実施するものです。但し、EUあるいはEEA加盟各国が国内の海上運送に従事する客船をPLRの適用対象としない旨決定しない限り、PLRは内航客船にも適用され、条約の適用対象を拡大している点が重要な特徴となっています(註2)。また、PLRは身体障害者の移動器具に対する損害の補償について特別な義務を課すとともに、乗客の死亡もしくは負傷が条約で定義される海難(註3)によって生じたものである場合、運送人に当座必要となる金銭の前払いを義務付けています。

2012年8月28日時点の批准国は8か国で、条約は10か国が批准してから12か月後に発効します。従って、条約はPLRが施行された後に発効することになります。条約は2013/14保険年度中に発効することが見込まれ、その場合、二つの異なる体制(PLRとアテネ条約)が効力を有し適用されることになります。EEA協定に基づき、EEA加盟各国は2012年12月31日までにPLRを実施しなければなりません。

組合員へは、条約発効が近づいた時点で進展情報をご案内する予定です。

運送人の責任

PLRは、乗客の死亡と負傷並びに手荷物と乗物の損失に対する責任、補償、強制保険システムを規定しています。PLRは運送人に以下を義務付けています。

  1. 海難による乗客の死亡及び負傷により発生した損害について、乗客一名当たりSDR250,000(註 )(約US$387,500)を上限とした補償の支払いに対し厳格責任を負う。損害がSDR250,000を超過した場合、運送人は過失がないことを証明できない限り乗客一名当たりSDR400,000(約US$620,000)までの責任を負う。
  2. 海難以外の事故で、被害者が運送人の過失を立証できた場合には、運送人は乗客一名当たりSDR400,000(約US$620,000)までの責任を負う。

保険及び証書の要求

乗客定員が12名以上で、EU/EEA加盟各国籍で、EU/EEA加盟各国の領海内へ入港し、あるいは領海内から出港する船舶は、PLRの要求を充たす保険を付保し、当該保険が有効であることを証するEU/EEA加盟各国により発行される証書を保持しなければなりません。当該証書は常に本船上に備え置く必要があります。

条約は、運送人に乗客一名当たりSDR250,000を上限とする責任をカバーする保険もしくはその他の形式の金銭的補償を手配することを義務付けています。

証書及び証書上の責任の取り扱い(プール)

全クラブの理事会による検討の結果、国際P&Iグループ(以下、IGという)加盟クラブは、2012年12月31日までに船主がPLRの証書発行をEU/EEA加盟各国へ申請するのに必要な「ブルーカード」(戦争リスクを含まない)を発行すること、及び当該戦争リスクを除くブルーカードの下発生したクレームは船客損害に対するIGカバーの上限であるUS$20億ドルを限度としてIGプール及び再保険プログラムの対象とすることを合意しました。

戦争リスクを含まないブルーカードにはPLRに関する記述はなく、条約に関する記載がなされているだけです。これは、ブルーカードに基づき各国により発行される証書の書式はPLRの中で規定されているのですが、同書式では条約の記述のみでPLRについての記載はないためです。PLR自体は別個のブルーカードや各国により発行される証書を規定していません。

また、船主は戦争及びテロリスクから生じる乗客の死傷に対する船主責任を有効に保証する保険者もしくはその他の金銭的補償の提供者によりサインされた戦争リスクをカバーするブルーカードも取得する必要があります。戦争リスクをカバーするブルーカードの書式及び手続は2006年IMOガイドラインに含まれています。戦争及びテロリスクに対するカバーをIGプール及び再保険プログラムの対象とするかどうかについて、IGに加盟する全13クラブの理事会は数か月にわたり詳細な検討を行ってきました。現在の規定では、戦争及びテロリスクはカバーの一般除外規定の対象となり、変更するにはIG加盟クラブの3/4以上の賛成が必要になります。IGクラブが主要戦争保険者となるための変更に対しては必要な賛成が得られなかったものの、IGクラブは組合員がPLRの要求を遵守できるよう引き続き代替手段を探しています。進展について近日中にご案内する予定です。

PLRのブルーカードは次の客船には必要ありません。(i)EU/EEA籍船ではなくEU/EEAに寄港しない場合、(ii)乗客定員が12名以下の場合、(iii)EU内陸水路のみを航行する場合。

EU/EEA各国は戦争リスクをカバーするブルーカードと戦争リスクを除いたブルーカードを受領後に1通の証書を発行します。IGはPLRが採択された2009年5月以来スムーズな実施のためにEU/EEA加盟各国と密接な協議を続けており、2012年12月31日のPLR施行まで継続していきます。

ブルーカードの発行

PLRの要求を充たすためには、船名、船籍港、IMO番号、運航者名、運航者の主たる事業所の所在地住所がブルーカードに記載されている必要があります。バンカー条約ブルーカードと同様に、組合員から別途住所のご連絡がない限り、クラブは登録事業所の住所をブルーカードに記載します。

PLRは2013/14保険年度開始の約7週間前に施行されます。そのため、2012年12月31日から2013年2月20日正午(GMT)までのブルーカードと、その後の2013年2月20日正午(GMT)から2014年2月20日正午(GMT)までの新保険年度をカバーするブルーカードが必要になりますのでご注意下さい。

証書の発行

EU/EEA加盟国籍船の運航者は船籍国から発行される証書を入手する必要があります。当該証書は、EU/EEA加盟各国に寄港する際に保険が付保されている証拠として扱われます。EU/EEA加盟各国籍船を所有する組合員は、当該国の当局に照会し、PLR証書の申請手続きを確認して下さい。

非EU/EEA加盟国籍船について、2012年12月31日のPLR施行後に最初に寄港したEU/EEA加盟国から証書を取得できるよう合意されることが期待されています。当該証書はEU/EEA加盟各国に寄港した際に保険が付保されている証拠として扱われます。IGは当該手続が可能となるよう各国と協議を続けています。

各国は、IG各クラブが電子形式(PDF)でブルーカード発行し、組合員はブルーカードを電子形式で証書を発行する国の関係当局へ送付する場合があることを認識しています。同手続きは、バンカー条約及びCLC条約の証書発行手続きで各国により幅広く受け入れられています。

内航運送への適用

PLRは、EU/EEA加盟各国が以下の通り適用延期を決定しない限り、2012年12月31日から国内海上運送に従事するクラスA及びクラスBの船舶にも適用されます。

クラスA船舶については、PLR施行後4年、すなわち2016年12月31日まで
クラスB船舶については、PLR施行後6年、すなわち2018年12月31日まで

さらに、各国は国内海上交通に従事する全船舶を含めるようPLRの適用対象を拡大することができます。その場合、クラスCやクラスDの船舶も含まれることになります。

EU Directive 98/18/ECのArticle 4に規定されるクラスA,B,C,D船舶の定義については添付1をご参照下さい。

全てのEU/EEA加盟国が、国内海上運送に従事する上記クラスの船舶へのPLR適用を決定しているわけではありません。既に決定している各国の現在の方針は以下の通りです。

2012年12月31日からクラスA,B,C,Dの内航船にPLRを適用する国

  • オランダ
  • フィンランド
  • デンマーク

2012年12月31日からクラスA及びBにPLRを適用する国

  • クロアチア(2013年7月1日の正式加盟に先立ち、EU法の総体系の一部として2012年12月31日からPLRを適用する旨通知あり)
  • ポーランド
  • フランス

クラスAに対しては2016年12月31日まで、クラスBに対しては2018年12月31日までPLRを適用しない国

  • 英国
  • イタリア
  • ベルギー
  • ラトビア

EU/EEA各国の内航運送に従事する組合員は、PLRの適用に関して各国の関係当局に確認して下さい。

乗客への情報提供に関するPLRの要求

PLRのArticle 7は、乗客に対してPLRに基づく彼らの権利を説明することを運送人に義務付けています。当該情報提供を進めるべく、欧州委員会は運送人が公表すべき情報の概要を含むPLRの公開概要を作成し発表する予定です。IGは欧州委員会と連絡を取り合っており、本件に関する追加情報について追ってご案内致します。

国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。

以上


1EU加盟国は27か国:オーストリア、ベルギー、ブルガリア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スェーデン、イギリス。EEA加盟国:アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン。クロアチアは2013年7月1日にEUに加盟するが、2012年12月31日からPLRを適用する。
  
2アテネ条約は「国際運送」にのみ適用される。国際運送についてはArticle 1.9で「運送契約に基づき、出発地と目的地が2か国にまたがっている、あるいは、運送契約もしくは旅程に基づき、出発地と目的地が同一国であっても途中で別の国に寄港する運送」と規定されている。
  
3「海難」とは、難破、転覆、衝突、座礁、爆発、火災、船舶の故障を意味する。
  
4SDR(Special Drawing Right、特別引き出し権)は、主要4通貨の国際通貨バスケットに基づいて決められ、現在の1SDRの価値は約USD1.53、EUR1.2。換算レートはIMFのウェブサイト(www.imf.org)で確認できる。
  


添付:客船の安全規則と基準に関する1998年3月17日付欧州理事会指令98/18/EC Article 4




添付ファイル: No.12-013(J) attachment.doc
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