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2010/06/17

第10-005号 フィリピン海外労働者法−共和国法第10022による改正

| by:sysadmin
第10-005号
2010年06月17日
外航組合員宛

フィリピン海外労働者法−共和国法第10022による改正



背景

2010年3月8日、フィリピン海外労働者法(共和国法第8042号)(The FilipinoMigrant Workers Act of 1995 - 以下MWA)の改正案が成立しました。この改正に関して少なくとも2つの新聞により一般に公布がなされ、その15日後の4月中に発効しました。しかし、この改正後のMWA の効果的な施行のため、関連政府機関は公布より60日以内に法律の実施に関して必要な規則、規定を策定するよう求められています。国際P&Iグループ(International Group - 以下IG)では、現政権の任期が2010年6月30日付で終了する前には、必要な規則や規定の実行が最終決定すると考えています。

IGはMWAの改定に関しては関係者とされず、協議に直接参加することができないため、改定法案の進展状況を綿密に監視し、交渉に直接関与する機関に対して懸念事項を強調してきました。マンニング業界団体より構成されているThe Joint Manning Group(JMG)は、MWAの改定に関して、フィリピン政府との協議の際に船員部門の代表を務めましたが、交渉期間中IGにより懸念事項について随時連絡がなされていました。

法律の改定に関するIGの懸念事項は主に、船員に特定の病院での乗船前健康診断を受けさせることや、特定の機関、団体や個人による訓練、セミナー、指導や教育を強制することは不法となること、そして最も懸念すべき事項として、POEA(Philippine Overseas Employment Administration)制定の標準雇用契約(standard employment contract - SEC)及び労働協約(collective bargaining agreements -CBAs)に加えて、船員に対する最低限の補償を確保する保険の手配が求められることです。


組合員への影響

MWA改定の最終案では、IGの強調した船員の健康診断と訓練に関する問題が考慮され、船員の雇用者がこれらに費用を支払う場合においてはこの法律の規定より除外されることとなっています。

しかしながら、保険に関するIGの懸念はMWAの最終案に反映されておらず、これは特にPOEA SECと一般的CBAの補償内容の不一致によるものであり、またIGクラブが船員に直接保険カバーを提供しているといった誤解が原因です。改定後のMWAでは、補償を各海外就労者に確保する義務や、補償の手配を証明する義務がマンニング会社や人材派遣会社に課されます。

改定後のMWAでは、事故による死亡、自然死、障害など関して、船員や船員の遺産相続人に対して論争なしに、無過失責任を負う、つまり船員やその遺産相続人によりなんら賠償責任や過失が証明されることなく、保険金が支払われることが義務付けられています。よって、死因や病気/怪我の原因が業務上のものであるかどうかに関わらず、船員やその遺産相続人はUS$15,000、US$10,000、US$7,500をそれぞれ事故死、自然死、後遺障害に対して受け取ることが出来るのです。

改定MWAではマンニング/人材派遣会社による船員への直接的な補償の必要な手配、或いは補償の証明を義務付けています。これは、フィリピン保険委員会に登録された民営保険会社による保険や、船員が外国の保険会社に入っている場合ではマンニング/人材派遣会社による補償の証明書などにより、MWA Sec.23のサブパラグラフ(a)から(i)の最低要件を満たすものとされています。

改定MWAでは組合の補償範囲を超える様々な要件が含まれるため、POEAやCBAに加え、マンニング/人材派遣会社によりさらなる保険を手配する必要が生じます。組合の補償範囲はマンニング/人材派遣会社に課される付保義務を満たすことができず、従って組合はMWAが要求する保険の最低要件を満たす補償の付保証明などを発行する事は出来ません。

組合の被保険者は組合員自身であり、改定MWAの求めるような、各船員に対して直接保険を提供するものではなく、被保険者である船主が契約上負う責任(組合が承認した契約内容/付保条件による)や本船上又は本船に関係し船主の不注意や怠慢により生じる、船員に対する法律上の責任をてん補するものです。マンニング/人材派遣会社による必要な補償の手配のための費用は船主の負担とされる可能性が高く、POEA SECやCBAsに既に無過失責任に関する契約上の義務が含まれているにも関わらず、雇用者/船主にさらなる金銭的負担がかかることが考えられます。

MWA改定の交渉の際には、IGによってこのような懸念事項がJMGに表明されました。しかし、フィリピン政府は陸勤の海外就労の雇用に注目し、MWA改定の際には陸勤者と船員(船員の比率が少ないゆえ)を区別しなかったため、残念なことにこの保険手配問題が対処されることはありませんでした。

IGにより引き続き規則・規定の策定が監視され、さらなる詳細が随時提供される予定です。

なお、国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。


以上

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