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2007/02/13

第06-012号 Double Retention/Designated Vessel制度導入の件

| by:sysadmin
第06-012号
2007年02月13日
外航組合員各位


Double Retention/Designated Vessel制度導入の件



2007年2月6日開催の第558回理事会(特別回報第06-009号ご参照)におきまして、国際P&Iグループ(IG)がサブスタンダード船対策の一環として取りまとめた「Double Retention/Designated Vessel制度」の導入が承認されましたのでご報告申し上げます。本制度は、IGでの決議要件を満たし、2007保険年度よりプール協定の補則として新たに規定のうえ実施されることとなります。各クラブの規律ある保険引受活動を促すことを目的とした本制度が導入されるに至った経緯、本制度の内容、及び本制度運用に必要な保険契約規定の改定について、以下にご案内申し上げます。


1.背景

2004年5月、経済協力開発機構(OECD)の海上輸送委員会が発表した「保険とサブスタンダード船」に関する報告書には、P&Iクラブがサブスタンダード船問題に貢献し得る幾つかの提案が盛り込まれており、IGでは小委員会を中心にそれら提案の推進・具体化に取り組んできました。

この取り組みは、92CLC/FC条約改正問題が討議されていた2005年2月開催のIOPC Fund作業部会にIGの正式見解として発表されました。その中で注目すべきは、「低質船と認められる船舶の保険契約では、引受クラブがプール協定上通常の2倍の保有額を負担すること」を条件とする新たな規定導入の可能性につき言及していることです。保有額とは、ある発生クレームに関して、プール協定に従ってIG全クラブで分担する前に、引受クラブがまず負担しなければならない金額を意味します。具体的に、2007保険年度のクラブ保有額は7百万ドルで、本制度適用の場合には14百万ドルとなります。

これが、今回導入することが決定されたDouble Retention/Designated Vessel制度です。本制度の特徴と運用方法の詳細は、以下2.のとおりです。


2.Double Retention/Designated Vessel制度の概要

本制度の目的は、あるクラブが保険の引受対象として相応しくないと認めた船舶から生じるプール協定上のクレームについて、引受クラブ以外のクラブが分担に応じなければならないリスクを軽減することにあります。手続きとしては、1)IG外の専門家によって構成される委員会において低質船を特定船舶として裁定し、2)特定船舶から生じたクレームについて2倍のクラブ保有額を適用する、の2段階で構成されています。

Designated Vessel(特定船舶)

本制度では、ある船舶の保険契約を本船の状態を理由として拒否または解約したクラブは、当該船舶を引き受けたクラブが通常の2倍の保有額を負担すべきDesignated Vessel(特定船舶)に本船が該当するか否か委員会に裁定すべく審査するよう求め、IG事務局(及び当該船舶の船主殿)に対してその旨通知することが認められています。「状態」が意味するものは船舶の物理的構造だけではなく、運航及び管理といった事項も含み、広く定義されています。また、クラブには船主殿に対し本制度の内容と手続きにつき十分に説明する義務が課せられております。

委員会は、2人の独立したサーベイヤーと1人の弁護士で構成され、船舶の状態を検査し、適切と判断される場合は、その船舶をDesignated Vesselと認定することとなります。委員会のメンバーは、サーベイヤー・弁護士ともそれぞれの候補者名簿から選ばれるものとし、船主殿は候補者名簿から選出される2名のサーベイヤーのうち1名を指名する権利を有します。当該候補者名簿は、小委員会を構成する全クラブからの情報をもとに作成されたものです。

委員会選任後45日以内に船舶を検査可能とするよう船主殿に求め、その要求が満たされなかった場合、その船舶はDesignated Vesselと裁定されることとなります。

委員会がある船舶をDesignated Vesselと裁定した場合、その効力は委員会が裁定を下した時点から生じることとなります。すなわち、Designated Vesselと裁定された船舶を引き受けたクラブは、委員会の裁定が下りるまでは通常のクラブ保有額を負担すれば足ることとなります。

Designated Vesselと裁定された船舶は、その状態に重大な影響を与える改善が加えられ、再審査の結果「Designated Vesselには該当しない」との判定がない限り、その立場・身分は変わりません。これは、船舶の状態を改善することでDesignated Vesselという立場から脱却する途が常に船主殿に開かれていることを意味します。

なお、次に述べるProscribed Vesselの制度を含め、Double Retention制度はクラブに対して適用されるものであり、一旦クラブにP&I保険を付保したDesignated Vessel船主の約定済みの保険金請求権に対してなんらかの制約を加えるものではありません。

Proscribed Vessel(追放船)

Designated Vesselと裁定されそのまま1年以上経過した場合、その船舶はProscribed Vessel(追放船)と看做され、当該船舶のP&I保険を引受けているクラブは当該船舶のクレームに関しては一切プール協定上回収できなくなります。勿論、この場合であっても、船主殿には「Proscribed VesselかつDesignated Vessel」という立場から脱却する目的で本船の再審査を請求する余地は残されています。このメカニズムは、被保険船主殿にProscribed Vessel(かつDesignated Vessel)という状態から脱却するため速やかに改善手続きを取るようインセンティブを与えようとするものです。

競争法上の問題

本手続きを準備するに当たり、IG小委員会では競争法上の問題に関する助言につき考慮しました。こうした法的洗い直しを経て取りまとめられた本制度に関する新たなプール協定の補則は、IG起用弁護士から競争法上の観点から十分対応されているとの確認を得ています。


3.要約

本制度が導入された場合、どれぐらいの頻度で実際に手続きが取られるのか、現時点では推測の域を出ないものの、船舶の質的水準問題に確実に取り組むという観点から見れば、本制度の存在そのものが、潜在的に実際に手続きを発動するに等しい効果をもたらすものと考えています。本制度では、クラブに本船の状態を根拠とした裁定手続きの申請を強制化せず、その権利を与えているに止めています。これは、近々本船の不良箇所に何らかの処置が加えられたり、本船が解撤されたりすることをクラブが承知している場合など、申請行為自体が不適当または不要であるとの認識によるものです。

IGは、「保険者であるP&Iクラブが、船舶の質や水準問題で第一線の警察官の役割を果たすことはできない」とこれまで繰り返し指摘してきています。それにも拘わらず、各国政府、政府間組織、非政府間組織、及び民間組織は、IGが「海上油輸送に於ける良質船推進のための非技術的取り組み」に関するIOPC Fund作業部会の会合で最近発表した「サブスタンダード船への保険提供抑制に関するメカニズムの確立」について引き続き強い関心を示しております。そうした状況の中で、IGとしてDouble Retention/Designated Vessel制度を導入することは、サブスタンダード船対策への取り組みの進展を確保するうえで大いに有益であろうと考えるところです。


4.保険契約規定第17条第5項の新設

本制度導入に伴い、当組合が本船の状態を理由として保険契約の解約、または引受を拒否し、上記2.記載の手続きによりIG事務局に対して本船をDesignated Vesselとしての裁定のための審査を申請する際、その事実と当組合が実施した本船の検査結果等を当該目的のためにIG等へ通知し、情報共有化を可能とするよう、2007保険年度保険契約規定第17条に新たに第5項を追加いたしました(添付資料ご参照)。詳しくは、特別回報第06-011号「保険契約規定、特約、特別条項の改定の件」をご参照願います。

以上



別紙:保険契約規定第17条第5項(新設)

下線部分が今回新設される条項です。
なお、本件は国際P&Iグループで引続き検討されておりますので、後日保険契約規定に更なる変更が必要となった場合には別途お知らせ致します。


第17条(堪航性等の確保)
1.組合は、組合のてん補対象となる損害及び費用を防止する目的で、加入船舶の管理及び堪航性に関する検査を、組合が指定する期間内に組合が指定する検査機関により実施することを組合員に要求することができる。組合員がこの検査を実施しない場合には、組合は、その期間経過後に当該加入船舶に関し生じた損害及び費用のてん補を拒否し、又はてん補額を減額することができる。

2.組合員は、検査の結果、検査機関による勧告がなされた場合には、勧告された修理等を実施しなければならない。組合員が勧告された修理等を実施しないときは、組合は、当該加入船舶の保険契約を解約し、又はこの勧告後に当該勧告による修理等を怠ったことに起因する損害及び費用のてん補を拒否し、若しくはてん補額を減額することができる。

3.前項の解約は、解約すべき事由が発生した日以降将来に向かって効力を生じる。

4.保険契約を締結しようとする船舶について、第1項及び第2項前段に規定する要件が満たされない場合には、組合は、当該船舶の保険契約の引受けを拒否することができる。

5.組合は、第2項の規定により加入船舶の保険契約を解約するとき、及び第4項の規定により保険契約の引受けを拒否するときは、その事実及び検査結果等について、組合が加盟する国際PIグループのプール協定Appendix XIIの規定に従って国際PIグループ等へ通知することができるものとし、これらの組合員及び保険契約を締結しようとする者は、組合による本項規定の情報開示に同意するものとする。


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