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2001/12/21

第01-011号 遺棄船員に対する金銭的保証の提供及び船員の死傷病に対する船主の契約責任に関するIMO/ILOの規制方針について

| by:sysadmin
第01-011号
2001年12月21日
外航組合員各位

遺棄船員に対する金銭的保証の提供及び船員の死傷病に対する船主の契約責任に関するIMO/ILOの規制方針について


IMO(International Maritime Organization:国際海事機関)の第83会期法律委員会において、以下の問題に関する2つの決議とガイドラインについて、IMO総会に採択を勧告すること、及びILO(International Labour Organization:国際労働機関)理事会に承認を勧告することが合意されました。
船員が遺棄された場合の金銭的保証の提供
船員の死傷病に対する船主の契約責任

これを受けて本年11月に開催された両機関の会議でこれら2つの決議とガイドラインが採択・承認されました。

これらを国家間の問題として取り上げ、決議とガイドラインの形を取るように主導したのはITF(International Transport Workers’ Federation:国際運輸労連) です。

この決議とガイドラインは、以下を目的として設置されたIMO/ILOの合同専門家作業部会により起草されました。

船員の死傷病・遺棄に係わる責任と補償に関する問題を評価すること
適切な勧告を作成すること

二つのガイドラインの骨子は以下のとおりです。

(1)船員が遺棄された場合の金銭的保証提供に関する決議及びガイドライン

船主は、遺棄された船員に対する金銭的保証を手配し、その保証の存在を証明する証書を本船上に備置すること
船員は保証に対して直接請求権を有すこと
保証は以下を包含すること
-送還費用
-遺棄期間中の船員の生計費その他船員が負担した費用
-未払い給与等の支払い
証書には最低限の情報が記載さるべきこと

この問題に関する討議の中で、グループクラブは、倒産による船員の生計費・送還費・その他の危険についてはカバーを提供していないことを明確にしました。しかしクラブは、最終的に必要となった場合には、船主がガイドラインを遵守できるためにはどのような金銭的保証代替供給源が利用できるかについて調査しています。

(2)船員死傷病に対する契約上の請求に係わる船主責任に関する決議及びガイドライン
船主は、船員の死傷病に対する契約上の補償の支払義務に関し、有効な保険その他金銭的保証を手配し、かつその存在を証明する証書を本船上に備置すること
有効な請求に対しては速やかに全額を支払うこと
保険は、下記の規定を有すること
-保険を解約する場合の船員に対する事前通知と更新しない場合の即時通知
-証書の有効期間内の全請求の支払い
証書には最低限の情報が記載さるべきこと

過去2年間の各種作業部会の会合において、グループクラブとISF(International Shipping Federation:国際海運連盟)の各代表は以下の論点を主張してきました。
グループクラブが提供した統計に基づき、船員の死傷病に対する請求を公平に審査した結果、それらは何ら深刻な問題を引き起していないことが明瞭に示された
グループクラブは、船員クレームを公正、能率的、かつ迅速に処理している
最近IMOが採択した、IMO決議A.898(21)及びそれに付随するガイドライン(船舶の賠償責任保険証明の保持義務を規定)は、船員の請求にまで拡張されている
それゆえこの問題に関しては、追加決議やガイドラインは不要である

しかし、これらの主張は受入れられませんでした。


グループクラブの代表は、これらの会合の席上、また法律委員会に提出した書面で、クラブはこの保険には以下の各項が規定されている旨を明記した証書を認証することはできないと陳述しました。

保険の解約又は更改拒否の船員への通知
(クラブは船員名簿やメンバー船社の個々の被用者の詳細情報を持っておらず、また、これらは日毎に変動する性質のものであるので、クラブが個々の船員に対して通知することは、現実問題として可能でないことが指摘された。そのような義務を遵守することは、いかなる保険者でも事実上不可能と指摘された。)
証書の有効期間中に発生した全請求の支払い
(クレームの支払いは、常にクラブルールとメンバーの加入条件によるので、クラブはこの要求に応えられないと指摘された。)

これらの条件が維持される以上、グループクラブは適切な証書を発行する立場にないことが明確にされました。

2つの決議とガイドラインは、2002年1月1日から有効となります。しかしながら、IMOの決議とガイドラインには強制力はなく、したがってそれらが国内法規として施行されるまでは法的効力を有さないことにご留意下さい。各国政府は決議とガイドラインを実行する前には、通常関係当事者に諮ります。その段階でクラブに接触があれば、ガイドラインの条件を遵守することは不可能であると説明いたします。


したがって、この決議とガイドラインがいずれかの国で国内法化されるか、意見聴取手続きに入るかしない限り、組合員各位として必要な対応はありません。この決議とガイドラインに関していずれかの国に何らかの動きがありましたら、当組合にお知らせ下さい。

以 上

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