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1999/07/16

第99-008号 LOF改定− SCOPIC条項の件

| by:sysadmin
第99-008号
1999年07月16日
外航組合員各位

LOF改定− SCOPIC条項の件
Amendment to Lloyd's Open Form
- Special Compensation P & I Clause (SCOPIC)



このたび国際PIグループ加盟各クラブでは、題記に関し次の通り共通回章を発行し、1999年8月1日以降締結されるLOF救助契約に、SCOPIC条項を摂り入れるようお勧めすることになりましたのでお知らせ致します。

International Group of P&I Clubs have prepared following circular to their members recommending the incorporation of SCOPIC into all LOFs signed from 1st August 1999onwards.


共通回章

1989年の国際会議において新しい救助条約が合意され、救助の性格が根本的に変更された。以前の1910年救助条約は、伝統的な"不成功無報酬(No cure no pay)"原則に基づいていた。救助報酬に関する責任は、船舶保険者と積荷保険者とが各々の被救助財物の価格に応じて按分の上で保険填補し、クラブは無関係だった。旧条約のもとでの救助者の懸念は、船舶救助にあたっての失敗の危険性と、発生費用見込み具合の両面の検討が必要とされることにあった。

1989年救助条約の意図は、環境損害を引き起こす恐れのある全ての事案において、救助者を奨励し、勇気づけることにあった。1989年条約でも救助報酬の中心は引続き"不成功無報酬"に基づくものだが、その報酬には、従来からの要素である被救助財物の価格、危険度、当面の出費、成功度、所要時間、及び技術に加えて、「環境損害の防止軽減における救助者の技術と努力」が考慮されることとなった。基本的な"不成功無報酬"による報酬は、引続き第13条で扱われている。

1989年救助条約はまた、救助者が環境に損害を与える恐れのある船舶又は積荷の救助作業に従事したにもかかわらず、所要費用を補填するに足りる第13条の報酬を受取れなかったときのため、Safety Netの考え方を導入した。このような場合救助者は、第13条の報酬を超える範囲の人件費、資材費及び当面の出費に基づき、第14条の特別報酬を受け取ることができる。これに加え環境損害を防止軽減した場合、第14条の報酬には30−100%が上乗せされる。船舶保険者及び貨物保険者は、環境損害の要素によって増額された場合でも、引続き第13条の報酬を支払い、一方クラブは第14条の報酬を支払っている。

1989年条約は1996年に発効したが、すでにLOF1990、LOF1995に摂取されており、従ってこのところのほとんどの契約救助は、このような仕組みのもとに行なわれている。その後第13条、第14条の解釈について、船主及びクラブ側と、救助者側とにそれぞれ問題が生じている。

クラブの懸念は、クラブも船主も作業のコントロールがほとんどできない状態のなかで、Safety Netが救助者の作業を極力長引かせるよう奨励することであり、また船舶保険者による推定全損の判断を遅らせていることである。救助者の不満は、第14条が環境損害の恐れがある場合にしか適用されず、その証明まで必要とされることであり、また第14条の適用に地域制限があり、沿岸水域、内水及びその隣接区域を除いては適用されないことである。

救助者はまた英国裁判所がNagasaki Spirit事件で、資機材及び人員の料率には利益要素は含まないとした判決に不満を持っている。利益はuplift(上乗せ)分に限定され、環境損害が防止軽減された場合にしか適用されない。これら第14条の争点は、長い期間と多額の費用をかけて争われてきており、それらは主に船主とクラブの負担となっていた。

このため先ず救助者とクラブの間で、その後損害保険者も加わって、事故への対応をすばやく行なわせ、しかも法律上の争いを少なくするような特別補償の仕組みの簡略化について合意するため、話合いが始められた。その話合いがようやく合意に至り、 第14条のもとで算定される特別補償の仕組みを、Scopic規定として改めることとなった(Scopic条項第1条参照)。

アイデアとしては2年間を試行期間として、ISUメンバーである救助者と国際グループクラブ加入船主との間で署名されるLOFの中にScopic条項を摂取することとし、クラブはそのような条件の契約を組合員に勧めることとした。試行期間の結果がよければ、改めてLOF書式を正式に改正することとした。主な改正点は次のとおり。

(i)請負業者は状況にかかわらずいつでも、自らの選択によりScopic条項を援用することができる。
請負業者が環境損害の恐れの存在を証明する必要はなく、地理的制限の適用もない(第2条)。
Scopic報酬の算定は、援用の通知がなされた時から開始する。援用以前の救助作業は、Safety Netなしの"不成功無報酬"条件となる。現行第14条の規定のもとでは、特別補償の計開始は、救助作業開始時からである。
(ii)

船主は、請負業者がScopic報酬規定を援用してから2業務日以内に、$3,000,000の保証状を提供しなければならない。その後、船主がその金額を高すぎると判断した場合、もしくは請負業者がそれを少なすぎると判断した場合にはいつでも、それぞれ相手側に対して保証額の減額または増額を要求することができる。船主がこの2業務日以内に保証状を提供しない場合は、請負業者はScopic 条項の援用を放棄し、第14条に基づく権利を復活することができる(第3条)。

(iii)料率。 Scopic報酬は所用時間と資機材を基準として計算され、全て25%の上乗せが加算される。
クラブはISUと、タグ・人件費・資機材の料率を合意した(付則A)。これらの料率は請負業者の利益を含んでいる。運搬可能な資機材は移動費用を配慮して、1.875倍(上乗せ分の25%を含む)した料金で計算する。請負業者が基準料率より高い額で資機材の手配を契約しなければならない場合には、請負業者は契約代金に基準料率の10%を加えたもの、又は基準料率の25%増しのいずれか大きい金額を受取ることができる。Scopic条項に定められた料率が第14条の料率より高いか低いかを言うことは難しい。それは第14条の料率が、Nagasaki Spiritの判決以後、当該年度の当該タグの使用頻度に基づいていたためである。
(iv)救助報酬の算定は、請負業者がScopic条項の援用を宣言した場合でも、引続き第13条の規定に従う。Scopic報酬はそれが第13条の報酬を超えた場合、その超えた部分に限り支払われる(第6条)。もし請負業者がScopic条項の援用を宣言し、第13条の報酬がScopic報酬よりも高額だった場合には、第13条の報酬は、Scopic条項の援用が作業開始日に宣言されていたとして計算したScopic報酬との差額の25%相当額を減額される(第7条)。もし第13条の報酬がゼロの場合、Scopic報酬のうちの争いのない金額については、船主は請求書を受取ってから1ヶ月以内に支払わなければならない。もし第13条のクレームが存在する場合には、船主は第13条の保証額を超えるScopic報酬の75%を、1ヶ月以内に支払わなければならない(第8条)。
(v)請負業者は、経過分に未経過分を加えた作業の総コストが、被救助財物の価格とScopic報酬との合算額を当然超過すると推察される場合には、作業を中止することができる。一方船主は、5日前の通知によりScopicの合意を取り止めることができる(第9条)。
(vi)船主は現場代理人(SCR)を本船に派遣することができる(第11条)。
船舶保険者及び貨物保険者は、その特別代理人を1名派遣することができる(第12条)。
SCRは、国際グループ、ISU、IUMI及びICSの各3名ずつの代表で構成される委員会によって指名されたパネルから選ばれる。サルベージマスターは、SCRが現場に到着するまでの間は、作業日報をロイズと船主に送付し、到着後はSCRにだけ送付する。SCRは救助日報を無視して、異議をとなえる報告書を用意することができる。もしSCRが異議報告書を用意した場合には、船主による当初の支払は、争いが解決されるまでは、SCRが適切な資機材又は手順とみなした範囲に基づいたものに限定される(付則 B)。
(vii)

ISUと国際グループ間で、任意の実務要領(Code of Practice)を合意する。クラブはScopic保証状の発行を想定するが、自動的には発行しない。ただしクラブは、請負業者が他の方法では保証状を得ることができない場合でも、それだけの理由で保証状の発行を拒否することはない。クラブは、船舶が避難港入港の許可を得るために必要な、港湾当局への保証状の発行を検討することを了解し、請負業者が他の方法では保証状を得ることができない場合でも、それだけの理由で保証状の発行を拒否することはない。


新しいScopic規定における、船主及びクラブに有利な点は次のとおり。
  1. 特別補償に関する仲裁が将来は減少する。これまで問題となってきた環境損害の恐れ、地理的制限、タグの料率及び上乗せ報酬などの問題点は、全て解決した。
  2. 船主及びクラブは、より多くのコントロールが可能になり、少なくとも救助作業中に何が起きているかについて知ることができる。
  3. Scopic条項第9条のもとでの船主から取り下げる権利は、LOF第4条に規定する権利より明確である。
  4. 上乗せは25%頭打ちとなった。
船主及びクラブに不利な点は次のとおり。
  1. 救助者は、合意されたタグの料率に関しては、Nagasaki Spirit判決で期待されるより多くのものを受取ることができるかも知れないが、これは関連要素が異なるため、一概には言いきれない。
  2. 船主及びクラブは、環境損害の恐れ及び地理的制限に関する抗弁を失った。
救助者に有利な点は次のとおり。
  1. 救助者にとって、環境損害の恐れを証明する必要がなくなり、また地理的制限の抗弁に対抗する必要がなくなった。
  2. 救助者は利益を含んだタグの料率の支払いを受けることができる。
  3. Cash Flowの問題がより簡単になった。
  4. 保証状の入手がより確実になった。
不利な点は、
  1. 救助者は25%以上の上乗せを受けとることができない。
  2. 船主が取り下げる危険がある。
この改定案の2年間の試行期間については、国際グループの全クラブの理事会の承認を得ており、同様にISU及び英国の損害保険者の承認も得ている。その他の国の損害保険者にも通知されており、反対はない。

添付書類
  1. 1999年2月24日付、SCOPIC条項最終文言
  2. 付則A − 料率
  3. 付則B − 船主現場代理人(SCR)規定
  4. 付則C − 特別代理人
1999年8月1日以降締結する全てのLOF契約に、次のような文言でSCOPIC条項を摂りいれることをお勧めする。

「It is agreed that the SCOPIC clause is incorporated into this contract.
(本契約書へのSCOPIC条項の摂取に同意する。)」


SCRパネル(船主現場代理人候補者氏名リスト)の検討に向けて、挙げるべき候補者の氏名を知らせられたい。

以上
添付ファイル:99-008.pdf
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