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2002/07/22

No.442 提示が早すぎたNORの有効性と碇泊期間の開始

| by:sysadmin
No.442
2002年07月22日

海事判例紹介

 
提示が早すぎたNORの有効性と碇泊期間の開始
- 船主は滞船料を請求できるか -
(2001年2月15日付Lloyd’s Maritime Law Newsletter及び
弁護士事務所Holman, Fenwick & Willanからの控訴審判決の速報より)


” HAPPY DAY ”
Glencore Grain Ltd. VS Flacker Shipping Ltd.
(英国 Court of Appeal 2002年7月15日付判決)

要件を満たす前に提示されたNOR(準備整頓通知)の有効性について、英国控訴審で争われていた裁判の判決が7月15日に出されましたので、取り急ぎ概要をご紹介致します。なお、控訴審判決の情報提供はロンドンに本拠を置く弁護士事務所Holman, Fenwick & WillanのHong Kong OfficeのPaul Hatzer弁護士です。

(概要)
本船”Happy Day”はSynacomex改定フォームで航海傭船に出されていた。航海傭船契約はberthcharter(指定されたバースに向うことを要求する傭船契約)で、第30条に「最初の荷揚港にて通常の営業時間に受荷主又は代理店にNORを提示する。碇泊期間は、バースに着くと否とを問わず、入港したかどうかを問わず、検疫済かどうかを問わず、通関済みかどうかを問わず、NOR提示の翌営業日午前8時に開始する。但し、金曜日午後5時から月曜日午前8時まではたとえ荷役を行なっても碇泊期間に算入しない。」と規定されていた。

本船は1998年9月6日ウクライナのOdessaにて小麦23,000トンを積載して揚地インドのCochinに向け出港した。本船は同月25日(金)16:30にCochin港外に到着したが、潮汐の都合ですぐには入港できなかった。しかし、船長は電信により同日16:30にNORを提示した。傭船契約はberth charterであり、バースの船混みはなかったため、着岸前のNORの提示は時期尚早であり、従ってNORは有効なものではなかった。本船は  翌朝26日(土)の潮で入港し、同日13:15に着岸し、荷役が開始された。訂正NORの提示はなかった。その後遅れが重なって荷役が完了したのは約3ヶ月後の12月25日であった。

(仲裁・第一審判断)
船主の滞船料クレームと傭船者の早出料クレームが論争となり仲裁へと進んだ。仲裁人は、船長が提示したNORは無効と判断しつつも、碇泊期間は9月29日(火)08:00に開始したと判断し、船主の滞船料クレームのほとんどを容認した。傭船者はこれを不服として裁判所に提訴した。判事は、有効なNORの提示がされていなければ碇泊期間は開始しないとして船主の滞船料クレームを否認し、傭船者の早出料クレームを容認する判決を下した。船主は控訴した。

(控訴審判決)
控訴審は、傭船者がNORが無効であると通告しなかった失策と、傭船契約にしたがって行われ且つ、それらは合意されていたと看なされるその他の事実経緯とを勘案すると、傭船者はNORが無効であると主張する権利を放棄したものと解すると判断した。

有効なNORが提示されなかった場合においても

(1)NORは形式的には正しい方法で本船の到着前に傭船契約に基づき指定された傭船者または荷受人に提示され、
(2)その後、傭船者の確認のもと、本船は着船、揚げ荷の受入れも了解され、
(3)さらに、既に提示されたNORについて、いかなる異議やその有効性を巡る権利の留保も通告されず、また、新たなNORが提示されるべきだという異議もなく、傭船者または荷受人の指示に基づいて揚げ荷は開始された
という状況から、NORの提示されるべき航海傭船契約に基づき碇泊期間は開始されたと解すると判断した。
かかる状況において、傭船者は、揚荷開始時点からであるとして当初のNORが無効である旨主張することを放棄したとみなされ、碇泊期間は、傭船契約の規定に従って、あたかも有効なNORが揚荷開始時点で提出されたかのように開始する。
本件において、傭船者は、当初のNORの有効性について彼らの立場を留保することなく本船に対して揚荷の指示を与えた。この事実と揚荷役開始について傭船者が同意  したことを考え合わせれば、道理をわきまえた船主であれば、傭船者は当初のNORが無効であったと主張するいかなる権利をも放棄したと結論づけるであろう。

以上


<日本船主責任相互保険組合>


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