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2017/01/16

P&I特別回報 第16-019号 2004年の船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約と米国バラスト水管理規則

| by:業務部編集用
印刷用:No.16-019(J)
第16-019号
2017年1月16日

外航組合員各位


2004年の船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための
国際条約と米国バラスト水管理規則


背景

国際海事機関(IMO)の「2004年の船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」(以下、「条約」という)が2017年9月8日に発効します。条約は有害水生生物の他水域への拡散を防止するため、船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理の基準と手続を定めています。

2017年1月11日現在、全世界の船舶トン数の53.30%を占める54カ国が条約を批准しています1

米国は条約を批准していませんが、同国独自の規制を実施しています。特に、米国コーストガード規則は、米国水域を航行してバラスト水を排出するほとんどの船舶に対し、2016年1月1日以降の最初のドライドック時点で、米国コーストガードのテスト基準を満たす同コーストガードが承認したバラスト水管理システムを設置するよう要求しています。米国コーストガードのテスト基準は、「バラスト水管理システム承認のための2016年のIMOガイドライン(G8)」が昨年採択されるまで、バラスト水管理システム承認のためのIMOガイドラインよりも厳格であると捉えられてきました。後述するように、カリフォルニア州には同州独自のバラスト水管理基準があり、この基準はコーストガード基準よりもなお厳格です。

様々な規則が首尾一貫していないことから、業界内でいささか混乱が生じています。


IMOの船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約

条約では、国際航海に従事するすべての船舶に対して、船籍国当局が承認したバラスト水管理計画に従って、バラスト水及び沈殿物の管理をするよう要求しています。また、すべての船舶はバラスト水記録簿と国際バラスト水管理証書を保持していなければなりません。バラスト水管理基準は段階的に導入されますが、最終的にほぼすべての船舶は、2017年9月8日の条約発効日以降で、船舶のInternational Oil Pollution Prevention certificate (IOPP証書, 国際油汚染防止証書)の最初の更新までに、IMO基準を満たすバラスト水処理システムの設置を義務付けられます(IMO総会決議A.1088(28)による)。一例を挙げると、国際油汚染防止更新検査を2017年9月7日に受けた船舶は、2022年9月7日までに、条約の第D-2規則に従い型式承認を受けたバラスト水処理システムを設置しなければなりません。

締約国は、条約及びIMOガイドラインに定められた基準に従うことを条件に、追加措置を講じることが認められています。したがって、組合員は、旗国が条約の締約国である場合、同国が追加措置を講じるのかどうかについて確認すべきです。

条約発効後は、船舶がバラスト水を取水し、バラスト水管理目的で循環させ処理したり、バラスト水を排出した場合には、その日時をバラスト水記録簿に記載しなければなりません。また、バラスト水が受入施設に排出されたり、偶発的あるいは例外的に排出されたりした場合にもその日時をバラスト水記録簿に記載しなければなりません。


IMOが承認したバラスト水管理システム

条約制定過程において適切なバラスト水管理基準の設定についていろいろと検討されました。すなわち、バラスト水交換基準(D-1基準)とバラスト水排出基準(D-2基準)です。バラスト水交換を行う船舶は、バラスト水量の95%以上の容量交換率をもって実施しなければなりません。そして、バラスト水管理システムを使用する船舶は、バラスト水排出時に排出容量単位ごとにサイズ別に定められた生存可能な生物の最大許容数を規定する排出基準D-2を満たしていなければなりません。

条約の第D-3規則では、条約に基づく活性物質を用いたバラスト水管理システムは、IMOの「活性物質を用いたバラスト水管理システム承認手続(G9)」に従ってIMOにより承認されなければならないことを規定しています。同手続は、基本承認と最終承認の2段階からなり、バラスト水管理システムにより環境、人間の健康、財物や資源に悪影響を生じることがないよう、規定しています。

IMOが基本承認あるいは型式承認した(活性物質を用いたバラスト水管理システムについては最終承認した)60を超えるバラスト水管理システムのリストは次のリンクで参照できます。

http://www.imo.org/en/OurWork/Environment/BallastWaterManagement/Documents/
Table%20of%20BA%20FA%20TA%20updated%20May%202015.pdf


IMOは「よくある質問」についても次のリンクで公開しています。

http://www.imo.org/en/OurWork/Environment/BallastWaterManagement/Pages/BWMFAQ.aspx

バラスト水管理システムについての具体的な要求は、条約の第B-3規則(船舶のバラスト水管理)に記載されています。条約は、条約に従ったバラスト水管理システムが「バラスト水管理システム承認のためのガイドライン(G8)」を考慮して船籍国当局により承認されなければならないと規定しています。当該要求の詳細については次のリンクをご参照下さい。

http://www.imo.org/en/About/Conventions/ListOfConventions/Pages/International-Convention-for-the-Control-and-Management-of-Ships'-Ballast-Water-and-Sediments-(BWM).aspx

IMOは2016年10月のMEPC 70会議で、決議MEPC.279(70)によって「バラスト水管理システム承認のための2016年ガイドライン(G8)」(2016 年G8ガイドライン)を採択し、上記のG8ガイドラインを包括的に修正しました。MEPC 70会議では最新のガイドラインは義務規定でなければならないことも決議されたため、IMOは現在、2016年G8ガイドラインの名称を「バラスト水管理システム承認のためのコード」に変更するよう、作業を進めています。

当時のG8ガイドラインに沿って承認されたバラスト水管理システムを2016年10月28日までに既に設置した船主あるいは以前のG8ガイドライン(すなわち、決議MEPC.174(58)に沿って承認されたガイドライン)に沿って承認されたバラスト水管理システムを2020年10月28日までに設置する船主は、2016年G8ガイドラインに沿って承認されるシステムに取り替える必要はありません。

2017年9月8日から2020年10月28日までの間にバラスト水管理システムを設置する船主は、以前のG8ガイドライン、すなわち、決議MEPC.174(58)により採択されたG8ガイドライン、または最新の2016年G8ガイドラインのいずれかに沿ってシステムを設置することが可能です。

しかし、2020年10月28日より後にバラスト水管理システムを設置する船主は、2016年G8ガイドラインに沿って承認されたシステムを設置しなければなりません。

IMOは、2016年ガイドラインの適用より以前に採択されていたG8ガイドラインに沿って承認されたシステムを設置した、早期に対応を行なった船主を擁護するために、決議MEPC.253(67)によって上記の方策を採っています。

上記の2つのガイドラインの詳細は、船籍国当局から入手可能です。


米国コーストガードのバラスト水管理規則

米国コーストガードは2012年3月にバラスト水管理に関する規則を修正し、米国水域で船舶から排出されるバラスト水の中に含まれる生物に関する容認基準を設定しました。現状では、陸地から12海里以内の米国水域を航行する商船には、次のいずれかの方法でバラスト水を管理することが要求されています。

  • 米国基準を満たす米国コーストガードが型式承認したバラスト水管理システムを設置していること。
  • 33 CFR Part 151に従って設置された場合、5年を限度とする代替的管理システムとして、外国が型式承認し米国コーストガードが認めたバラスト水管理システムを暫定的に使用すること。
  • 米国の公共用水施設から取水したバラスト水を使用し、そしてそれを排出すること。
  • バラスト水を受入施設に排出すること。
  • 管理されていないバラスト水を12海里以内で排出しないこと。

規則は2012年に発効していますが、米国基準を満たす米国コーストガードが型式承認したバラスト水管理システムは最近まで存在しませんでした。しかし、2016年12月2日に米国コーストガードは米国基準を満たすバラスト水管理システムの第1号として、Optimarinのバラスト水管理システムが型式承認されたことを発表しました。さらに、米国コーストガードは2016年12月23日、米国基準を満たすバラスト水管理システムとして、Alfa Laval Tumba AS社のPureBallast 3とOceanSaver AS社のBWTS MKIIを型式承認したことを発表しました。これら3つのシステムはIMOの型式承認も受けています。したがって、船主やオペレーターは現在米国コーストガードとIMOのバラスト水管理基準の両方を満たせるバラスト水管理システムを得たことになります。

型式承認に関連し米国コーストガードは、Marine Safety Information Bulletin 14-16で以下の項目に関する「よくある質問と回答」を扱っています。

  • バラスト水管理規則の遵守延長申請
  • 本船の遵守日
  • 代替的管理システムの利用

同Bulletinでは、船長、船主、オペレーター、代理人あるいは担当者(以下、「船主/オペレーター」と総称する)が書面にて、最大限努力したにもかかわらず、米国コーストガード型式承認のバラスト水管理システムを設置できないことを含め認められたバラスト水管理方法を遵守できないことを申請した場合、米国規則上、米国コーストガードは、遵守の延長を許可できることが説明されています。

重要なのは、米国コーストガードが、同コーストガードが型式承認したバラスト水管理システムが入手可能になったことから、米国コーストガードに遵守の延長を申請しようとする船主/オペレーターは、承認されたバラスト水管理システムの製造業者と設置できるかどうかについてよく打ち合わせて、遵守しようと努力しているが(たとえば、製造業者の納入の遅れで)遵守できないことを証拠を付して書面で明確に述べ、また、型式承認されたバラスト水管理システムの設置が規則実施スケジュールに間に合わない理由を明確にする必要があると勧告していることです。遵守延長を申請しようと考えている船主はこのリンクにある申請用紙を使用しなけらばなりません2。この申請用紙は最近修正され、米国コーストガードが各申請を個別に審査できるようになりました。したがって、纏めての申請は受け付けられず、個別の船ごとに申請用紙を提出しなければなりません。

当該Bulletinの中で米国コーストガードは、船主やオペレーターは型式承認されたバラスト水管理システムの使用によってバラスト水排出基準を満たすことができると案内する一方で、代替的手段によってもコーストガードのバラスト水管理規則を遵守することができると再確認しています。


カリフォルニア州のバラスト水管理要求

カリフォルニア州には米国コーストガードよりも厳格な独自のバラスト水管理基準があります。カリフォルニア州のバラスト水管理システムのための「暫定排出基準」は2020年1月1日に発効します。さらに、2030年1月1日に同州の「最終排出基準」が発効すればバラスト水管理基準はより厳しくなります。現在のところ、同州の「暫定排出基準」を満たすバラスト水管理システムは存在しません。

2016年12月30日に、カリフォルニア州は、同州に寄港する船舶に対してバラスト水管理に関する現行の報告要求について確認する通知を発行しました。同通知は次のリンクで参照できます。

http://www.slc.ca.gov/Forms/MISP/2017_LtrAgents.pdf


P&I保険のカバー

クラブの現行の保険契約規定について条約や米国コーストガード規則による変更はありません。承認を受けたにもかかわらず欠陥のあったシステムを通じての、処理されなかったバラスト流出や排出から生じた責任(処理されなかったバラストを過失により流出/排出したことについての過怠金を含む)やバラストに関するその他の環境責任は、保険契約規定及びカバーの条件に従っている限り、保険カバーの対象となります。バラスト水管理要求についての違反に関連するその他の過怠金の保険カバーについては個別事情によります。


国際P&Iグループのすべてのクラブが同様の内容の回報を発行しています。

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[1]http://www.imo.org/en/About/Conventions/StatusOfConventions/Documents/Status%20of%20Treaties.pdf
[2]出典:INTERTANKO
以上

14:00