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2013/09/03

第13-009号 Marpol Annex Vにおける貨物残渣の海洋投棄について

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第13-009号
2013年9月3日
外航組合員各位

Marpol Annex Vにおける貨物残渣の海洋投棄について


本回報は本年1月1日に改正されたMarpol Annex Vについてご案内するものです。改正Annex Vは別段の定めのある場合を除き廃棄物の海洋投棄を禁止していますが、海洋投棄の可否について判然としない場合があります。本回報では規則の概要とともに、いかに規則遵守を確保するかについてご案内します。

1.MARPOL –規制手段

1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書(Marpol 73/78)は、投棄、油濁、大気汚染を含む海洋汚染を防止することを主目的としています。

改正Annex Vは締約国を拘束します。改正Annex V(添付1)は以下のリンクからダウンロードできます。

改正Annex Vには以下の2つのガイドラインが含まれます。

・Marpol Annex V実施のためのガイドライン(添付2)。当該ガイドラインは以下のリンクからダウンロードできます。

・廃棄物管理計画策定のためのガイドライン(添付3)。当該ガイドラインは以下のリンクからダウンロードできます。

本回報をご一読頂くことでMarpol Annex Vの概要についてご理解頂けると存じますが、詳細に関してあわせて添付物もご一読されることをお勧め致します。

2.MARPOL Annex Vの概要

Marpol Annex Vは原則として海洋投棄を禁止しています。特にプラスチック及び料理油は海洋投棄できません(添付1のRegulation 3)。

 廃棄物の種類 特別エリア外船舶特別エリア内船舶  洋上プラットフォーム及び当該プラットフォームから500メートル以内の船舶
 あらゆる廃棄物及び特にプラスチック(合繊ロープ、合繊漁網、プラスチックごみ袋、プラスチック製品の焼却灰を含む-Regulation 3.2)並びに料理油(Regulation 3.3) 
 海洋投棄禁止 海洋投棄禁止海洋投棄禁止 

有害性が低いと考えられる特定の廃棄物については特別の例外が規定されています。例外が適用されるかどうかは地理的エリアによります。あるエリアはより環境にセンシティブとみなされています。特別エリアの詳細な地理的特定(緯度/経度)については添付1をご参照下さい。

 Annex Vにおける特別エリア外 Annex Vにおける特別エリア
 右記以外のエリア
地中海 エリア(Regulation 1, 14.1)

バルト海エリア(Regulation 1, 14.2)

黒海エリア(Regulation 1, 14.3)

紅海エリア(Regulation 1, 14.4)

ガルフエリア(Regulation 1, 14.5)

北海エリア(Regulation 1, 14.6)

カリブエリア (メキシコ湾及びカリブ海を含む) (Regulation 1, 14.8)

南極エリア (南緯60°以南。Regulation 1, 14.7)については別途追加規定あり。 


※南極エリアに関する追加要求:当該エリアに寄港、通航、出航する船舶がいる港の締約国は当該船舶に対して適切な廃棄物受入れ設備を提供しなければならない。当該エリアに入域する前に船舶が全ての廃棄物を十分に保管できることを旗国は確認しなければならない。

以下の廃棄物については地理的エリアによっては海洋投棄可能な場合があります。

 廃棄物の種類 Regulation 4:
特別エリア外船舶

(特別エリアの定義については上記ご参照)

 Regulation 6:
廃棄物の種類による特別規則及び南極エリアに関する特別規則が適用される特別エリア内船舶

(特別エリアの定義については上記ご参照)
洋上プラットフォーム及び当該プラットフォームから500メートル以内の全船舶

(Regulation 5) 
 食物廃棄物
(粉砕装置で粉砕され25mmより小さい穴のふるいを通過できるもの)
 海洋投棄可能
(航海中、領海の基線から3海里以遠)

(Regulation 4, 1.1)
 海洋投棄可能
(航海中、領海の基線から12海里以遠)

南極エリア
(殺菌処理されていない限り、鳥製品(鶏肉を含む)の海洋投棄は禁止)

(Regulation 6, 1.1)
 海洋投棄可能
(プラットフォーム(もしくはそこから500メートル以内にいる船舶)が領海の基線から12海里以遠にある場合)

(Regulation 5, 2) 
 食物廃棄物
(粉砕されていないもの)
 海洋投棄可能
(航海中、領海の基線から12海里以遠)

(Regulation 4, 1.2)
 海洋投棄禁止

(Regulation 6, 1.1)
 海洋投棄禁止

(Regulation 5, 1)
 貨物残渣

(通常利用可能な揚荷手段を使って回収できないもので海洋環境に無害なもの)

(貨物残渣の定義については下記3をご参照)
 海洋投棄可能
(航海中、領海の基線から12海里以遠)

(Regulation 4, 1.3)

(有害貨物かどうかの分類については下記3をご参照) 
 特定の状況でのみ※※、(貨物残渣を含む)貨物倉洗浄水だけ海洋投棄可能 

(Regulation 6, 1.2)

(有害貨物かどうかの分類については下記3をご参照)
 海洋投棄禁止

(Regulation 5, 1)
 洗剤及び添加物
(貨物倉、甲板、船体の洗浄水に含まれるもので、海洋環境に無害なもの)
 海洋投棄可能

(Regulation 4, 2)
 海洋投棄可能

(Regulation 6, 2)
 海洋投棄禁止

(Regulation 5, 1)
 動物の死体
(貨物として輸送され航海中に死亡したもの)
 海洋投棄可能
(可能な限り領海の基線から離れた場所で)

(Regulation 4, 1.4)
 海洋投棄禁止 海洋投棄禁止

(Regulation 5, 1)
 混合廃棄物
(複数廃棄物が混在、混入しているもの) 
 複数の混合物質のなかで、より厳しい方の要件が適用

(Regulation 4, 3)
 複数の混合物質のなかで、より厳しい方の要件が適用

(Regulation 6, 4)
 

※※特別エリアにおける貨物倉洗浄水の海洋投棄のための特定の状況
以下の全ての条件が満たされる場合、陸上/氷棚から12海里以遠で洗浄水を排出することができる。

・貨物倉洗浄水に含まれる貨物残渣、洗剤、添加物が海洋環境に有害な物質を含まないこと。
・出航から目的地までの航海に特別エリア外の航行が含まれないこと。
・寄港地に適当な処理施設が存在しないこと。

なお、改正Annex V(添付1)のRegulation 7では一般除外規定が設けられています。同除外規定は船舶の地理的位置に関わらず適用されます。一般除外規定は緊急事態の際の対応を目的としており、以下の場合に認められます。

・船舶の安全確保もしくは海上での人命救助のために必要な排出である場合
・あらゆる妥当な事前注意を尽くしたにも関わらず船舶の損傷による廃棄物の偶発的な排出の場合
・あらゆる妥当な事前注意を尽くしたにも関わらず漁具の偶発的な排出の場合
・海洋環境の保護もしくは船舶や船員の安全のための船舶からの漁具の排出の場合

3.貨物残渣の海洋投棄:いかに改正Annex Vを遵守するか

貨物残渣:定義
「貨物残渣とは、貨物の積み降ろしのあとに甲板上又は貨物倉に残った貨物の残存物であって、条約の他のAnnexで規制されないものをいう。貨物残渣には、積み降ろし時の余剰や漏出を含み、それが乾いているか湿っているかあるいは洗浄水に混入しているかを問わない。ただし、洗浄後に甲板上に残った貨物の塵または船体外表面の塵を除く。」(Regulation 1, Definitions ,2、添付1ご参照)

上記より、単なる貨物の塵は貨物残渣に該当しませんが、それ以外の貨物に関係する物質は全て該当すると考えられます。

(a)特別エリア外での貨物残渣の扱い:排出の制限

排出可能なのは以下の場合に限られます。

「通常利用可能な揚荷手段を使って回収できない貨物残渣」(Regulation 4, 1.3、添付1)

ガイドライン(添付2)では、港湾、ターミナル、船舶オペレーターは本船上の残留貨物を軽減するためにIMSBC Codeに規定されるBest Cargo-Handling Practicesを遵守すべきとされています(3.5)。

貨物残渣が改正Annex V Regulation 4及び6に規定される除外物質とみなされるためには、IMSBC Codeの義務が満たされなければなりません。

さらに、残渣は海洋環境に無害なものでなければなりません(Regulation 4, 1.3)。ガイドラインの3.2では、UN Globally Harmonised System 2011(UN GHS)の要件に従い分類される固体ばら積み物質の残渣である場合は有害とみなされるとしています。UN GHSによると、以下の7要件のいずれかに該当する場合、貨物は有害(HME)とみなされます。

(1)急性水生毒性 カテゴリー1
(2)慢性水生毒性カテゴリー1もしくは2
(3)発がん性カテゴリー1Aまたは1Bで急速に分解せず高い生物蓄積性を伴うもの
(4)変異原性カテゴリー1Aまたは1Bで急速に分解せず高い生物蓄積性を伴うもの
(5)生殖毒性カテゴリー1Aまたは1Bで急速に分解せずに高い生物蓄積性を伴うもの
(6)反復暴露標的臓器毒性カテゴリー1で急速に分解せず高い生物蓄積性を伴うもの
(7)合成ポリマー、ゴム、プラスチック、プラスチック原料ペレットを含む固体ばら積み貨物
   (粉砕、細断、浸軟されたもの、同種物質を含む)

同要件についての更なる詳細は右記のサイトにアクセスして下さい。http://www.unece.org/

IMSBC CodeのSection 4.2では、固体ばら積み貨物の荷送人は積載される貨物の詳細な科学的性質を提示しなければならないと規定しています(穀物を除く)。

貨物残渣の排出に関する検討

もともとAnnex Vに関する固体ばら積み貨物のリストがなく、貨物の分類が難しい場合がありました。IMOもサーキュラー(Amendment、添付4)でこれを認めています。

サーキュラーは以下のリンクからダウンロードできます。

 
サーキュラーでは、有害固体ばら積み貨物を含む貨物倉洗浄水について以下を条件に特別エリア外で排出することを認めています。
  • ・関係港湾当局からの情報に基づき、船長が当該港もしくは次港に適当な処理施設がないと判断した場合。
  • ・航海中で領海の基線から少なくとも12海里以遠で可能な限り離れること。
  • ・洗浄前に固体ばら積み貨物の残渣を可能な限り取り除き(取り除いたものは陸上での廃棄のため袋詰めすること)、貨物倉が清掃されていること。
  • ・Bilge Wellsに残った固体残渣を回収するためにフィルターを使用し、固体残渣の排出を出来るだけ削減すること。
  • ・排出は記録しておくこと。

IMSBC Codeでは積載する貨物の詳細を提供する義務を荷送人に課しています。しかしながら、現実的には常に当該データを入手できるとは限りません。この点、GESAMP(The Group of Experts on Scientific Aspects of Marine Pollution)が、海洋環境に有害とみなされる可能性のある物質のリスト(添付5)を作成しています。なお、リストは以下のリンクからダウンロードできます。

但し、GESAMPのガイダンスを確定的証拠として用いることはできません。貨物残渣について不十分なデータしか入手できないことから分析実施が必要になる場合、UN GHS要件に沿った分析所を起用する必要があるでしょう。

(b)特別エリア内での貨物残渣の扱い:排出の制限

特別エリア内での排出は以下の場合に限られます。

「通常利用可能な揚荷手段を使って回収できない貨物残渣で以下の条件を全て満たすもの:

貨物倉洗浄水に含まれる貨物残渣、洗剤、添加物にIMOのガイドラインに従い海洋環境に有害と分類される物質が含まれないこと。

本項2.1、2.2及び2.3の条件を満たした場合、貨物残渣を含む貨物倉洗浄水を領海の基線から出来るだけ以遠で排出可能。」(Regulation 6, 1.2)

上記より、貨物残渣を含む貨物倉洗浄水のみ特別エリア内で排出することが可能です。

なお、サーキュラー(添付4)は特別エリア外での貨物残渣の排出にのみ適用されます。従いまして、有害性が疑われる場合には特別エリア内での海洋投棄はできません。

(c)事例検討:揚荷後に甲板に残った丸太の残渣である樹皮の場合

樹皮は上記貨物残渣の定義に該当する貨物残渣と考えられます。

特別エリア内での海洋投棄:

改正Annex Vの目的に則り、貨物残渣は海洋投棄でなく陸上で処理されるべきであり、海洋投棄は最終手段でなければなりません。

先ず、樹皮が通常利用可能な揚荷手段を使って回収できるかどうかの検討が必要です(添付1、Regulation 4, 1.3)。

IMSBC Codeでは揚荷について特段の要求を規定していません。従って、全体の揚荷役を実施する際にどの港でも樹皮を陸揚げすることが可能なはずです。

次に、貨物が海洋環境に有害と分類されるかどうか検討する必要があります。一見したところ樹皮は環境に有害とは思われません。しかしながら、現地もしくは国際的な植物検疫規則(例えばISPM No 15)で船積み前に木材貨物の燻蒸が必要とされている場合があります。有毒な燻蒸剤が樹皮に残っている可能性があり、貨物残渣を有害にする可能性があります。

その場合には、樹皮は特別エリア外で海洋投棄することはできません(特別エリア内でも同様です)。

上記より、各貨物残渣は各々の状況により検討される必要があります。樹皮の場合、燻蒸剤により海洋環境に有害な貨物になる可能性があります。疑わしい場合には、排出前に船員は陸上の技術スタッフに相談すべきです。

(d)組合員が取るべき対応

船員が改正Annex Vの義務を十分に認識するよう、組合員各位におかれましては廃棄物管理マニュアルを作成されることをお勧め致します。その際には廃棄物管理計画策定のためのガイドライン(添付3)をご参照下さい。当該廃棄物管理計画を遵守することで、改正Annex Vを遵守するための相当な注意義務を尽くしていることを示すことにつながると考えられます。また、トレーニングを行いその記録を残しておくことも有益と思われます。疑わしい場合には、船員は陸上スタッフに相談すべきです。陸上スタッフは場合によっては寄港地の当局に照会することも必要になるかもしれません。

4.Marpol Annex V違反の罰則

規則の実施についてはガイドライン(添付2)に規定されています。

「政府はAnnex Vに規定する目的達成のため責任を持ってコンプライアンスを実施、促進し、法的権限、適切なトレーニング、資金及び設備を提供するための適当な機関を任命する」(Regulation 6.2.3)

従いまして、実施は個々の締約国の法律で規定されます。各国のPort State Controlを実施する部署が各国の当局となります。その当局が罰則を決定します。

5.過怠金のてん補について

保険契約規定の第31条が関係する条項になります。なお、過怠金防止のための適切な手段を講じることを怠った場合、てん補に支障が生じる可能性があります。


最後に、上記「組合員が取るべき対応」に記載した改正Annex Vを遵守するためのあらゆる必要な予防措置を取ることを推奨致します。また、改正Annex Vを遵守した指示を出すことを用船者に義務付ける用船契約条項について法的助言を得ることを検討されることもあわせてお勧め致します。


以上

 No.13-009 attachment1.pdf  改正Annex V
 No.13-009 attachment2.pdf  Marpol Annex V実施のためのガイドライン
 No.13-009 attachment3.pdf  廃棄物管理計画策定のためのガイドライン
 No.13-009 attachment4.pdf  改正Annex Vにおける固体ばら積み貨物の分類に関するIMOサーキュラー
 No.13-009 attachment5.pdf  GESAMP作成有害物質リスト

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